七月八日 七夕から一日過ぎた蒸し暑い夜のことだった。一番は部屋でひとり、洗濯物を畳んでいる。一足早く家に着いた一番のスマホには、同居人から「帰りに夕飯を買ってくる」と連絡が届いていた。彼の帰りを待つ間、二人分の衣類を仕分けて畳む。どぶ川沿いの窓辺でも洗濯物はからからに乾いていた。繕い跡のある、熱くなっている彼の靴下を丸めてやりながら、一番はそっと笑った。ここでの暮らしにもすっかり慣れてきている。
そうするうち、ただいま、と声がした。ナンバの声だ。一番は少し声を張り、おかえり、と階下に向け返事をする。耳を澄ませてみる。荷物を置く音と水道の音が聞こえてくる。そして待ちわびていた、階段を上がってくる足音が続いた。
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