「俺、龍司くんの作る料理スゲ〜好きだよ」
そう言って笑う品田に郷田は今まさに飲もうとしていたビールが逆流してしまった。がほがほ、と噎せ返る郷田のことなど気にすることなくこれぞ男飯!というような豪快なご飯を美味しそうに食べていた。
郷田から言わせてみれば、全て適当に切って焼いて味付けしただけ。だから、まるでお高いフレンチのフルコースのように美味そうに、しかし食堂のA定食のようにがっつかれてしまうと中々にむず痒さが郷田の背筋をビリビリと駆け抜けていく。嬉しさ?それとも、愛おしさ?アルコールが回っている郷田の思考は一向にまとまらなかったから、そのふわふわとした気持ちに名前をつけ意味を込めることなど出来やしなかったが。
「別に、切って焼いただけやで」
「それがいいんでしょ。ほら、俺、賭博事件あってから家族とは絶縁状態だし、それ以前にも手作りの料理とか食ったことないし」
「そん時はどないやったん」
「いわゆる鍵っ子だったからね。帰ったらお金が置いてあってそこら辺で食うってのが普通だと思ってた」
だから、家庭的で素朴な味付けな郷田の料理が凄く美味いのだと品田は笑う。その笑みはどことなく悲しそうで、寂しそうで。
「こんなんなんぼでも作ったるわ」
「ほんと?!……本当、龍司ってば優しいね」
「――ふん」
品田は食い、郷田は飲む。なんでもない、ただの日常の会話のひとつだった。