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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    POIPOI 61

    よーでる

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    色々悩んだけどやっぱこの2人がスタートだよね。というわけで第一話なお話です。キャラビジュは下記。
    レクト→https://poipiku.com/5319537/6826129.html
    カイ→https://poipiku.com/5319537/6818735.html

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    シリィ・カーニバル第1話「迷子の食いしん坊と苛立つ術師と、眠れる……」01 薄暗い森を、小柄な丸っこい少年が小走りに駆けていく。ボサボサで黄土色に近い色合いの金髪を青いバンダナでまとめて、服装は何の変哲もないシャツとズボン、だが背負った荷物は少年の背丈を軽々と越していた。
     荷物はしっかりと梱包されてずり落ちる気配はないが、少年の足取りが苦もなく軽やかなのが奇異だった。中身のない空洞のハリボテ、というわけではない。身の詰まった重たげな気配がするし、地面に残る少年の足跡は踵がくっきりとして荷物の重みを伝えている。
     見た目に反した頑健さを披露しながら、少年は森を駆けていく。頬の輪郭と同じく丸っこい琥珀の目が、行く手への期待にきらきらと輝く。

    「見つけたっ! 見てカイっ。モリーダケ! こう見えてすっごく美味しいんだよっ」

    「そうか」

     言葉少なな同行者の不機嫌を察知して、少年はキョトンと振り返った。
     少年の背後にゆっくりと現れたのは、少年とは正反対に長身の青年だった。後ろで一括りにした髪は艶やかな褐色。焦げたカラメルのようだと少年はひそかに思っていた。美しい光沢に反してピリッとするように苦い。
     彫刻のように整った、それでいて厳めしい面差しが、鷹のように鋭く冷ややかに見下ろしてくる。感動を分かち合おうという意識が微塵もないのを察して、少年はじわりと後ずさった。

    「それで、確認したいんだが、レクト。ここはどこだ?」

     答えようとして、少年――レクトは言葉に詰まった。周囲を見渡す。森。なだらかな傾斜。草むらの獣道。
     自分がどの道から来たのか思い出せず、バンダナにじわりと冷や汗が滲む。

    「えっと、そのー、森、の、どこ、か?」

    「そうだな。森の、どこかだ」

     カイの声は静かだったが、こめかみは愉快に引き攣っていた。霊力を見る感覚は持ち合わせておらずとも、カイの気が剣呑に荒ぶっているのを察して、レクトは慌てて採取したキノコを掲げた。

    「みっ見てっ、カイ! このキノコ、すっごく美味しいお出汁が出るし、バターやクリームにすっごく合うんだよっ。乾燥させないとだから食べるのはもうちょっと先になるけど、でも絶対美味しいからっ」

    「そうか。後ろのやつも気に入ってくれるといいな」

    「ほえ?」

     カイの言葉に、レクトの口から間の抜けた声が漏れる。振り返ると、そこには荷物を背負ったレクトより幅広でカイよりも背の高い、大きな顔があった。
     顔、だった。レクトを一口にできそうなほど大きな口。レクトの顔くらいありそうな目。鼻は斜めに傾いで歪で、頭髪はない。卵型のフォルムに申し訳程度に生えた手足に鉤爪があるのを見つけて、レクトはようやく悲鳴を上げて飛び上がった。

    「なっ、ななななんああなんでここに魔物がぁっ!?」

    「ここが霊菫(たますみれ)の灯る街道から外れた僻地だからだっ」

     ついに声を荒らげたカイの指先に光が奔る。カイの思考が呪文――精霊への請願を詠唱し、魂がインクとなって世界を書き換える。

    「爆ぜろっ!」

     言葉に込められた意志が最後のトリガーとなり、青い稲光がしゃがみ込んだレクトの頭上を焦がして魔物に突き刺さった。よだれを垂らし爪を振りかぶった人面が、燃やされた絵のように消え失せる。

    「あっ、あああああ!! モリーダケがぁっ!!」

    「呑気に珍味採取してる場合か」

     法術の巻き添えで黒焦げになったキノコを嘆くレクトを放って、カイは来た道を戻った。この馬鹿を追ってまた無駄な寄り道をしてしまった。見捨てたいという想いが日増しに強まるが、それをしないほうがいい理由を数えて舌打ちする。

    「おいレクト、とっとと行くぞ。日が暮れるまでには次の街に……」

     踵を返した先に道がなく、カイは絶句した。森が開け、一面の草原が広がっている。ここは山道だったはずなのに。
     レクトの返事がないのに気づいてふり返る。しゃがみ込んだ荷物の塊はそこにあり、レクトは荷を背負ったままへたり込んでいたが、場の景色は一変していた。
     色とりどりの花が咲き乱れる花畑。そのすべてが淡く白い輝きを灯している。馥郁とした香りが鼻腔を吹き抜け、これが幻ではないと知らせた。
     魔を退ける霊菫が、一面に咲いている。街道から遠く離れた僻地で見られるはずもない光景に、レクトが青ざめた顔でふり返った。

    「カイ……ここ、どこ?」

     俺が聞きたい。
     不毛な疑問は無視して周囲を観察したカイは、すぐにソレを見つけた。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
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