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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    ディテール固めその2。ヴィランの生い立ち。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    ある滅び その人は、コノラノス公国の灯花(クエリ)州の、神殿もない小さな村で生まれ育ちました。
     神殿のない村には霊菫もありません。そんな村は、花龍ペスタリスノの力が弱まり霊菫(たますみれ)が枯れて光を失う冬、神殿のある町に身を寄せて冬を越すのです。

     そんな村の人は立場が弱いものですが、ええ、幸い、その人が冬を過ごす神殿の人々は、優しく親切な方々でした。
     村人も色々と町の仕事を手伝いましたが、給金はきちんと支払われ、幼いその人も冬の間勉強をさせてもらえました。

     町の神殿長は、年老いたお爺さんでした。初代公主アデラ様にお会いしたこともあるそうですよ。
     お爺さんはその人に、よくアデラ様の話を聞かせました。その豪胆さ、御力の凄まじさ、何よりもその御心の慈しみ深さ、気高さ、聡明さについて。
     その人は尋ねました。「どうして王様はいなくなっちゃったの?」
     お爺さんは答えました。「精霊さまに預かった御力を返されたんだよ」
     それは真実の一端でしかありませんでしたが、その人は思いました。じゃあその力があれば、王様は帰ってくるのかな、と。

     筋が良いと褒められて、春に来る巡礼に連れられて、その人は白央(オラノス)州の神殿で勉強させてもらえることになりました。真面目にコツコツ修行を積んで、精霊の声に耳を澄ませて、神官になったのです。
     神官になったその人は、故郷に赴任することになりました。小さな村に小さな祠を建てて、冬はいっしょに町の神殿へ。
     故郷は変わっていませんでした。町も変わっていませんでした。いませんでした。変わった、なかったんです。みんな変わらず穏やかで優しい人たちでした。

     ある年の冬でした……町に魔物が現れました。神殿長が重傷を……ええ、あのお爺さんです。
     魔物は祓えたけれど、食糧庫は腐ってしまいました。魔物に蝕まれ、冬を越すための食糧がダメになってしまったんです。
     仕方のないことです。まだ菫橋が限られて、大神殿からの救援も望めなかった頃。町の人たちは不安と恐れに駆られました。当たり前のことです。
     ですから、町の人たちは他所の村人を追い出しました。ええ、自分たちが飢えないために。仕方のないことですね。ええ。

     え? いえいえ。その人の故郷は例外です。神官さまのご家族をそんな。町の人たちだって好きで追い出すわけじゃないですしね。
     故郷のみんなもその人に感謝しましたよ。お前のおかげで追い出されずに済んだ。ありがとう。ありがとう。ありがとう。
     みんな、穏やかで優しい人たちだったのに。それは本当だったのに。町も、故郷も、変わってなかったのに。たった一冬で。

     神殿長はその冬を越せませんでした。最期まで王のことを懐かしく慕わしく語りながら、王さえいれば、こんなことにはと嘆いて、追放された人々に詫びていました。
     町も故郷も、今はありません。追放された人々が、魔物になって帰ってきましたから。人の住めない土地になりました。穏やかで優しい町だったんですよ。本当に。

     その人は? いえいえ、神官を辞めてなんかいません。今も人々を救うため、より多くの人を救うため、尽力しておられます。
     その耳には今も、亡き神殿長の言葉がこだましています。

     王さえいれば。王さえいれば。王さえいれば。
     王が、蘇れば。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
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    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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