KKは甘いのが好き「こんなん貰ってさ」暁人が何やら紙袋を取り出した。聞くと1月遅れの誕生日プレゼントだとか。
するすると包を解き中のものを取り出す。ひとつ、ふたつと机の上に並べると何やら甘い匂いが広がる。
「なんだ、菓子か?」体に悪そうな色だな。とつぶやくと暁人が腹を抱えて笑う。
「違うよ、入浴剤」
…なんだよ、入浴剤って言ったら柚子とかひのきとか和の香りが定番だろうが。何だこの青くて赤くてキラキラしたものは。これじゃ却って疲れが取れないだろ。
オレが苦い顔をしているのを感じ取った暁人が目尻に溜まった涙を拭いながらこちらを見る。
おい、そこまで笑うことかよ。
「KKはどれがいい?」
色とりどりの…入浴剤?正直どれでも良かったがオレが適当にカラフルなのを選ぶと、暁人は「りょーかい」といって風呂に湯を溜めに行く。
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「こりゃすごいな…」
入浴剤が弾けると中から紙吹雪が溶け出し湯の中をユラユラと漂う。
風呂場に広がる甘い匂いに少々胸焼けを起こしながら湯船に浸かる。やはり疲れを取るのには向いてねぇな。
暁人はオレの胸に背中を預けたまま溶け残った入浴剤の欠片をつついている。紙吹雪の貼り付いた首筋がいつも以上に艶めかしい。思わず顔を埋めて紙吹雪を舐め取る。小さく漏れる声が愛おしい。
「…意外と甘くないんだな」
「そんなもの試食しないでよ」お腹壊すよ、といいながらオレの腕のなかで暁人がくるりと向きを変える。
「…そうだな、そんじゃメインディッシュを頂くとするか」
暁人の身体に指を這わせながらキスをすると暁人が溶けるように体を委ねてくる。
やはり、こっちのほうが甘くていい。
紙吹雪が2人を祝福するように湯の中をふわふわふわふわと漂っていた。