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    serisawa

    ふるやさんとしほちゃんがSUKIです

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    serisawa

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    シェリキスワンライ、「口づけ」テーマで。
    テーマ消化できたかどうかかなり怪しいのですが、賑やかしで!
    開催おめでとうございます&ありがとうございました!

    #降志
    would-be

    sweet medicine ふ、と。
     意識が浮上した。
     まだ眠っていたいという怠惰な欲に逆らって、寝ぼけ眼をこじ開けたのは、近くで聞こえた囁き声のせいだ。

    「……こら、静かに。まだ早いだろう」

     ぶんぶんと尻尾を振る音。ハッハッと期待の息遣い。
    「散歩はこの雨が止んでから。予報では午後だよ」
     諭すような声音。
     ついさっきまで息を弾ませていた鳴き声が、途端にきゅん、と寂しげなものに変わる。
     ようやく焦点が合った眼前の光景。
     自分と同じようにまだ寝台上の人でありながらも、腹に乗った愛犬の首を撫でる男の姿。
     彼の愛犬は彼の腹の上でしゅんとしょげて耳を垂らしている。その顔があまりにも可愛らしくてクスリと笑みを零すと、隣の彼と目が合った。

    「ごめん、起こしたな」
    「ううん。……雨?」
    「ああ。結構降ってる」

     言われて耳を澄ませば、何故今の今まで気付かなかったのかというほど、ざあざあと強い雨音が響いていた。
     時刻は早朝。太陽は休日を決め込んでいるらしい朝の空は薄暗く、カーテンの隙間から零れ落ちる日差しは姿を潜めたままだ。
    「いつ、帰ってきたの?」
    「一時過ぎだったかな」
     どんな時間に帰宅しようと、熟睡している彼女のベッドに潜り込もうと、彼の自由だ。
     けれども―――
    「声、かけてくれてもよかったのに」
    「そう? 起こす方が悪いかと思った。なら今度からは一声かけるよ」
    「うん……」
     そっと、手を伸ばす。
     雨の朝、常夜灯の橙の色を受ける蜂蜜色の髪に指を通し、さらさらと掬い零して。

    「おかえりなさい、零さん」


     それはそれは、幸せそうに微笑んだ妻――志保の姿に、降谷はただいまの言葉さえ発さず、その唇を己のそれで塞いでしまう。
    「や、今、あさ…」
    「ん、ほら、疲れて、帰ってきたんだし、ね?」
     薬がほしい、と囁いて再度、問答無用の口づけ。
    「もう……ん…」
     ぎしり、と手をついて、彼女をベッドに縫い留めるように覆いかぶされば、志保は恥じらいながらも抵抗せず、少しばかり期待を込めた上目遣いが降谷を捉えた。
     縫い留めたのはこちらなのに、縫い留められたような感覚。
     衝動のままに再度、口づけようとした、その時。

     わんっ!と、元気な鳴き声と衝動が、乱入した。

    「きゃっ」
    「っと、こら、ハロ!」
    「やっ、もう、くすぐったいわ。こーらっ」

     二人の間に割り込んで、僕も仲間に入れてよと言わんばかりにペロペロと唇を舐めてくるハロに、志保はケラケラと笑出した。
     尻尾をぶんぶんと振る無邪気さに充てられて、先ほどまでのしっとりとした空気があっという間に霧散してしまう。

    「……まったく、もう」

     ソレは本当は俺のものだぞ、なんて毒を零すのは、流石に子どもじみている。
     頭をぽりぽりと搔きながら起き上がった主人など目にも見えていないかのような愛犬に、思わずジト目を向けてしまうことくらいは許してほしい。
    「ほら、もう。わかった、起きるわ。雨が止んだら散歩に行きましょ」
     降谷のぼやきなど聞こえないというように愛犬と戯れる彼女の、輝かしいまでの笑顔。

    「ね?」

     くるりと自分へと注がれた瞳に、悪戯げに弧を描く唇。
     ああ、こんなのも悪くないな、なんて。

     ―――君の笑顔は、何よりの特効薬。
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    serisawa

    DOODLE2023.12.17にダズンローズフェス内で開催された降志オンリー、
    「零時の闇に星や降る」の参加レポートです。
    というか、参加までの道のりです。
    まあまあ内輪向けなので、ご興味がある方のみどうぞ~。
    2023.12.17れいやみに参加して■発足〜参加確定までの話

     全ては昨年12月、僭越ながら主催させていただいた降志WEBオンリーイベントの翌日、突発アフタースペースを開いたことから始まった。
    「新刊カード50枚集め、募ってみませんか?」と、スペースをご一緒していた某amrさんが提案してくれたのである。
     赤ブー主催で新刊カード50枚集めるとカプオンリーを開いてもらえることは知っていたが、50枚なんて夢のまた夢…と思っていた(でも「もしも」のために新刊カードはきっちり保管していた。えらいぞわたし)

     次の投票っていつなの?今ここにいる人は何枚カード持ってるの?と、スペースそっちのけで調べ始め、なんと翌月1月のインテが投票日だということが判明。しかもそのスペース参加者の内2名はインテ参加組!やれるだけやってみよう!と正式に募集を募り…するとどうでしょう。みるみるうちに挙手の手が上がる。他ジャンルの友人に声をかけてくれた方もいらっしゃいました。ありがたや…。
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    DOODLE第4回目降志ワンドロワンライ参加作品です。
    お題:「桃の節句」「寿司」「顔だけはいいのよね」
    (気持ち、↓の続きですが単話で読めます)
    https://poipiku.com/3237265/8260579.html
    「桃の節句」「寿司」「顔だけはいいのよね」 春の訪れを感じる季節。ポアロのバイトを終えた降谷が米花町を歩いていると、目の前に小さな背中が見えた。
     背中の正体は、大きなビニール袋を手に提げた茶髪の少女、一人だ。
     今日は桃の節句。雛祭りという呼び名の方が一般的だろう。幼い女子のいる家庭では、健やかな成長を祈り雛人形を飾る日。

    「哀ちゃん」
     背後から声を掛ける。夕飯の買い物だろうか、大きな荷物のせいでいつも以上に彼女の身体が小さく見える気がした。
    「今日は、博士の家でパーティはしないのかな」
    「しないわ。うち、雛人形ないし」
    「……そっか」

     彼女の買い物袋を引き、奪い取るように持った。彼女は「いいのに」と言いつつ、降谷の横を大人しく歩く。
     先月の節分では博士の家で探偵団らと豆まきを楽しんでいたが、今日は一人なのだろうか。幼少期からアメリカに留学していた彼女は、雛人形を見たことがあるのだろうか。遠く離れた国で一人過ごす彼女に思いを馳せ、勝手に寂しい気持ちになる。
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