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    04notflワンドロワンライ参加作品
    お題『真実』

    #降志
    would-be

    True face暑い日は、できるだけ外には出たくない。
    なのに、こんな夏の暑い日のさ中。外に出たのが運のつきだったと思う。


    志保ははあっ、とわざとらしくため息をついた。
    隣ではニコニコ胡散臭いほどの笑顔を浮かべた男が、ひっきりなしに喋っている。

    「暑い中、どこへ行くんですか? 一緒にお茶でもしませんか」
    「おあいにく様。そんな暇じゃないの」
    「う~ん、デートの待ち合わせに向かっている、というわけでもなさそうですし。じゃあ、一緒に目的地までお供しますよ」
    「嫌よ。しかも失礼ね、デートかもしれないじゃない」

    言葉に棘を含ませて返すが、まあ確かに、とてもデートには見えないだろう。
    実際志保は、ほぼ部屋着のような装いに、幅は広めだが飾り気のないバケットハットを被ってきただけの、格好だ。本当は夏の昼日中にこんな姿で外には出たくなかったのだが、研究で大詰めの博士が、足りない部品がある、と焦っていたので、お使いをかって出たのだ。いらぬ親切心を出すんじゃなかった。

    顔を顰めながら、志保は隣の男を見る。そういう彼の方が、よっぽど普段と違う格好をしていた。


    とてもラフな服装。身軽で、夏の休日の装いにピッタリという感じだ。推定年齢二十歳前後に見えるけど。
    明るい金色の髪はキャップに隠していて、淡い色のサングラスを掛けている。一言で言えば、チャラい。今端から見たら、通りすがりにナンパしている光景にしか、見えないだろう。

    ……というか。そう見せているのだ。



    さりげなく周囲に目をやりながら、志保は探りを入れる。いや、本気で探っているわけではないのだけど。ただ素直にいいように使われるのも、癪に障るだけだ。
    「あなたは暇じゃないんじゃないの?」
    「いえいえ、こんな素敵な出会いを見過ごすほど、愚か者ではありませんので。どこでも、お供します」
    「じゃあ、今から涼を感じられるリゾート地にでも行こうかしら。とりあえず羽田に行くわ」
    「…素晴らしい行動力だ」
    「あなたはここから一歩も動けないでしょうけど。何に扮しているのかしら」

    志保が目を細めて言った言葉にも。優秀な潜入捜査官である彼は表情を崩すことは、ないのだ。
    「何のことでしょう。ただ、一緒に有意義な休日を過ごせる相手に会えたと、思っているだけなのに」
    ただ、彼、降谷のサングラスの奥の瞳が、一瞬鋭い眼光を見せた。一定の方向を見つめ、そしてまた志保に向き合ってニコリと、笑う。今の視線だけ、降谷と呼べる、彼本来の姿が垣間見れた。


    志保ははあっ、と、今度は呆れたように小さく息をつく。
    「もう用無しになったなら、早く行きなさいよ。ターゲット見失ったら、どうするの」
    「何のことですか? 僕には君しかターゲットはいないのに」

    まだうそぶく彼を、ギロッ、と睨み付ける。ヘラッ、と笑って、男は一歩下がってわざとらしく頭を下げた。
    「せっかくの出会いでしたが。残念です」
    「いいからもう、さっさと行きなさいよ」
    「会えて嬉しかったから。本当は離れたく、ないのですが」


    いつまでも歯の浮くようなことばかり言って…! と、苛つきも含んで再度睨み付けると。彼の優しい瞳と、ぶつかった。
    サングラス越しでも分かる、柔らかな表情。あまり向けられたことのない、顔だ。
    志保の胸にかあっ、と熱が籠る。こんな装った偽りの姿相手に。悔しくて、目を反らしながら言い放った。

    「、どこまでも。流れるように嘘ばかりつける人ね」
    「僕の言葉は殆ど嘘でしたが。隠せない真実がひとつ、ありましたよ」


    ドクン、と胸が鳴る。その言葉が真実とも限らないのに。いいように、踊らされてしまう。
    仕事中でも、緊迫した任務中でも。姿を見れて嬉しいと思ってしまっていた志保の心も、眩い太陽の下に晒されてしまう。

    結局本当の彼とは似ても似つかない笑顔を残して、去っていった男に。
    悔しいながらも、素直に親切心を発揮した今日の自分を、褒めたくなった。

    このままだと博士にアイスまで、買っていってしまいそう。
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    あんちゅ

    MAIKINGそしかい後、元の姿・宮野志保へと戻った灰原と、そんな彼女の隣りにいる降谷の話
    「君は、虹の素が何か知っているか?」


    タイトルは某アイドルのカップリング曲からお借りしてます。デビュー時から見守ってきたアイドルのユニット曲が宮野志保にしか聞こえなかったもので…。
    灰原哀には大切なものができたけれど、宮野志保は明美さんとの時間以外は空っぽの状態だろうなと。降志になる前の冒頭を少しだけ😌
    虹の素知らされた時にはすべてが終わっていた。

    「…そう。」

    小さく呟いたその一言が私が唯一抱いた感想だった。


    気づいてはいた。
    あの強大な組織を相手に、最終局面を迎えんとしていること。
    ずっと試作を続けてきた解毒剤の効果が3、4日は維持出来るようになったことに1人の少年が勘づいていること。
    そして、それを私に黙って持ち出していたこと。


    わかってはいた。
    彼らは例えその最後であろうと、私には何もしらせないこと。
    知らせないことで私を危険から遠ざけようとしていること。
    そうすることで私を守ろうとしていること。

    そして、
    それが彼らのやり方であること。





    組織との大規模な抗争が終わったことを告げたのは工藤だった。
    いつものように博士の家に我が物顔でやってきた彼はなんてことの無いようにさらりと告げたのだった。
    1529

    lin_co10ri

    DOODLE12/10降志webオンリーイベント「Not First Love,2ND」展示作品です。ほぼポエム。
    来年の映画のタイトル穴あきヒントが出た時に、一番に思い浮かんだのがこのタイトルでした。
    これは降志…!と思っていて、今回のティザー、特報に情緒揺さぶられているうちに、つい書いてしまったものです。
    いずれひとつの話にしたい、とは思っています。
    そうなると、きっと黒塗りにされる部分ですね、これ。
    黒塗りのラブレター拝啓


    君があんな風に泣くなんて、知らなかった。

    いや、僕は君のことなんて、何も知らないんだ。
    どんな風に笑うのかも。何を思っているのかも。どうやって生きてきたのかさえ。
    ずっと僕の心の中に君という存在が、何かしらの形で居たということは。紛れもない事実だと言い切りたいが、これまで君のために何もできなかったことを思えば、近づくことさえできない。

    何故そんな風に泣いているのか、胸が引きちぎられるほど苦しくて、気になって目に焼き付いて離れないけれど。
    泣いている姿に、生きているという鼓動と躍動を感じて、崩れ落ちそうなほど安堵している自分もいる。
    君がそんなに素顔を晒せているのが。誰がいるからなのか、誰の前なのか、誰のためなのか。そんなことさえ気になってしまうけれど。
    555