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    yuno

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    yuno

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    タイトルのまんま、定期的に猫になるようになった江宗主とでれでれしてる藍宗主のほのぼの話です。とってもなかよし曦澄。

    #曦澄

    【曦澄】猫になる江宗主月に一度、江宗主は猫になる。期間は三日ほど。
    なんだかわからないがそういうことになった。
    やれ邪宗の呪いかとはじめの頃はひと騒ぎあったが、都合のいいことに雲夢の危機となればたちどころに元に戻るので、平時ならまあいいかということになった。
    宗主は働きすぎなのでたまには休んでくださいということらしい。

    猫になっている間は記憶も曖昧で、猫の習性が表に出るらしい。気難しそうな江宗主の面影は多分にあるものの、概ね普通に猫だった。
    目つきも爪も鋭く、気位が高くて喧嘩っ早く、そして強いところは、猫になってもさすがは三毒聖手である。

    さて、たとえ月に三日であろうとも宗主が猫になるなど、重大な機密事項である。このことは蓮花塢の中でも機密中の機密、限られた者しか知らない……と本来はなるべきなのだが、あいにくと主管たち幹部だけでなく、門弟や家僕たちも皆知っていた。
    最初の頃は宗主が突然行方不明になったと騒ぎになったが、毎月律儀に猫になっては三日後に元に戻りを繰り返されれば慣れるというものだ。
    今では猫になると四阿の陽当りのいい場所に専用の座布団が置かれるようになった。食料庫の見回りをしてはネズミを狩ってくる姿に、なんで猫になってまで働くんですかと苦笑するのもお決まりである。

    蓮花塢中が知っている江宗主の猫化だが、さらに言えば、姑蘇藍氏の幾人かにも知られてた。元夷陵老祖に解呪の相談に行ったせいだ。芋蔓式に彼の道侶と藍宗主にも知られている。

    その藍宗主は、愛しの情人が猫になっている間はよほどのことがない限り蓮花塢にやってくる。毎月決まった時期に猫になるようだから仕事の調整がしやすいんだよとは本人の談である。

    「あーちょんあーちょん。今日は鞠で遊びましょうか。それとも紐遊びが良いかい?」

    にこにこと相好を崩して猫用の玩具を手にする様はすっかり休暇中のそれである。まあ、藍宗主もお忙しい人だし、月に三日の息抜きは良いことなのではと江氏も藍氏も黙認している。
    なお、藍宗主が己の抹額を解いてじゃらそうとした時には、さすがに主管たちが止めに入った。
    猫になっても天命の方には変わりないから問題ありませんよと藍宗主はのほほんとしていたが、うちの宗主が知ったら確実に気にします、卒倒させる気ですかと必死に説得し、代わりに鈴付きの白と紫の組紐を渡している。この組み合わせはいいですねと藍宗主もお気に召しているようだった。

    チリンチリンと鳴る鈴に、うにゃうにゃと黒い毛玉がじゃれつく。
    墨を流したようなしっとりした毛並みに、紫水晶を思わせる大きな目が美しい。毎月三日しか猫にならないので肉球は柔らかい桃色を保っている。スラリとした体躯にピンと立った耳、長くしなやかな尻尾。よく食べ、よく遊び、よく眠るので毛艶も良い。群を抜いた美貌は猫になっても少しも損なわれていなかった。

    「ああ、あーちょんあーちょん。可愛いねえ」

    藍宗主はデレデレだった。
    ゆらゆら揺らした組紐にじゃれつく姿は実に愛くるしい。しなやかな体をくねらせながら、揺れる組紐を前足で捕らえ、小さな口の中に咥えて噛みつく。後ろ足で蹴りつけながら夢中になって噛みつく最中に桃色の口内が覗き見えて、あーちょんは肉球もお口もきれいな桃色なんだねえと藍宗主はご満悦だった。

    ひとしきり遊んだ後は、藍宗主の膝の上で毛づくろいをする。その間、藍宗主は撫でたいのを必死に我慢する。
    以前、自身の膝の上で毛づくろいする姿があまりに可愛らしく、歓喜のままに抱きしめて撫で回そうとしたら、邪魔をするなど猫拳を食らったためである。
    爪こそ立てられなかったものの、威嚇の声まで出されて藍宗主は反省した。
    その後はしばらく膝の上に来てくれなかったので、ごめんなさい、もうしませんからと平謝り、宥めすかしてご機嫌を取った記憶は新しい。藍宗主は学習するのである。

    毛づくろいが終わり、そのまま膝の上で丸くなった背中を愛おしげに撫でる。背中を撫で、小さな額を撫で、喉元を擽ると、満足気に目を細め、前足がぎゅっぎゅと衣を揉む。

    「可愛い……なんと可愛らしい……」

    藍宗主、至福の刻である。
    そのまま眠ってしまうのも、安眠して少しずつ丸めた後ろ足が伸びてくるのも可愛らしい。時折、態勢を変えるのだが、そのたびに頭を膝に擦り付けるのなんか昇天ものだ。

    「この愛らしいおててを、あんよを、口に含んでしまいたい……」

    だが、藍宗主は堪える。以前衝動に負けて手酷いお仕置きを食らったからである。強烈な猫拳と共に毛を逆立てて嫌がられてしまった。よほど嫌だったのか、人間に戻った時にも覚えていたらしく、あれは絶対にやるな、どうしてもやりたいなら人間のときにしろと叱られた。
    これ幸いとその夜にたっぷり実行したので、もしかしたら、あまりお仕置きにはなっていなかったのかもしれない。

    こうしてふたりの宗主がのんびりと三日間の休暇を満喫して、三日目の夜。子の刻を過ぎると江宗主は人間の姿に戻る。
    その晩は藍宗主も亥の刻には就寝するという家則を破って夜更かしする。猫の名残りがあるのか、いつもより素直に甘えてくれる江宗主に、この睦み合いがいっとう幸せだと囁くのは二人だけの秘密である。
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