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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    【warm me up.】抱き締めなくても、温められる。
    CT☕️ハイドとバリスタの話。(not CP)※ガラハイ脳の人間が書いているのでほんのりガラハイ要素あり

    #コーヒートーク
    coffeeTalk
    #Coffeetalk

    【warm me up.】 ドアベルの軽快な音が響く。それとは裏腹なじっとりと重たい靴音も。日が沈む頃にひっそりと開く喫茶店、コーヒートーク。一人の吸血鬼がそのドアを開く。先客はおらず、店内には店の主であるバリスタの姿だけがあった。

    「いらっしゃい、ハイドさん」

     店に足を踏み入れるなり、ハイドはカウンターの向こう側、カップやソーサー、シュガーポットの並ぶ棚から何かを探すように視線を泳がせた。

    「バリスタ、この店にアルコールは……」
    「すまない、置いていなくてね。そのご様子だと飲みたい気分ということかな?」
    「まあ、そんなところだ。だが、今からバーに行く気にもなれない。何故なら……」
    「何故なら?」
    「この雨だ」

     カウンターチェアに腰掛けるとうんざりとした顔で窓の外を指さすハイド。雨の街シアトル。この街にとって雨はあまりにも身近なものだ。しかし今この瞬間の雨風はとかく乱暴で、見ればハイドの脱いだコートには大粒の滴が光っていた。

    「気が付かなかったな、いつの間に……」
    「しばらくはここで過ごす他ないだろうさ。それに存外、私はこの場所を気に入っている。酔っ払いに絡まれる心配がないからな」

     この店の常連客の狼男ならきっとこう通訳しただろう。「今のはハイド流に褒めている」と。店の奥から新品のタオルを引っ張り出しながら、バリスタはひとり顔を綻ばせる。
     忙しない日常。多すぎる情報量。この現代社会でほっと息をつく時、人は癒しを求め何処へ辿り着くだろうか。コーヒートークという場所は、シアトルに生きる者にとってひとつの止まり木であった。少なくともこの吸血鬼にとってはそうたり得た。

    「そんな風に言っていただけるお得意様にひとつ、秘密のご提案を」

     タオルを手渡すと声をひそめ、にやりと悪い顔をつくったバリスタ。秘密、という言葉にハイドは分かり易く身を乗り出した。

    「おい、そいつは大っぴらに出来るような話か?」
    「しっ、誰かに聞かれるとまずい」

     バリスタは二人だけの店内を大仰に見渡し、やはりそこに自身とハイドしかいないことを確認すると店の外、ドアプレートをひっくり返しコーヒートークを【CLOSED】にしてしまった。
     素知らぬ顔で店内へと戻ってきたバリスタはとある戸棚を静かに開く。取り出されたのは一本のウイスキーボトル。そのままカウンターに置かれた瓶は照明を反射して怪しく光った。ハイドがほう、と楽しそうに口角を上げる。

    「うちはアルコールは提供していない。だが、コーヒーに関してのあらゆるリクエストには応えて然るべきだ……」

     未開封のアイリッシュウイスキーの瓶。その蓋がバリスタの手によって躊躇いなく開かれると、間も無く芳醇なアルコールの香りが二人の鼻腔をついた。

    「つまり、コーヒーという範疇でなら……ハイドさんのご所望のものを提供できるかもしれないというわけさ」

     バリスタが視線を手元に落とす。ハイドはその手元を静かに見つめている。ひっそりと企みを実行に移していく二人はシアトルの一角、小さな喫茶店で共犯者になる。
     コーヒーの一滴を抽出するマシンの音、真白なホイップを泡立てる音。この夜限り、特別な一杯のために様々な音が夜のしじまに響いていく。耐熱グラスにウイスキーが注がれる時には、そうだ、もっと入れてくれとそそのかす吸血鬼がいたが、善良なるバリスタが聞き入れることはなかった。
     そして待ち望まれた一杯がカウンターへと提供される。

    「お待ち遠さま。寒くて暗い夜とクリームの雨雲、アイリッシュコーヒーの出来上がりだ。こんなに冷える夜にお酒を口にしたくなるのは道理だろうね」
    「……バリスタ」

     ハイドは差し出されたカップにこわごわと触れる。そこにはただ、グラス越しに伝わるほの温かさだけがあった。アルコールを求めた理由についぞバリスタが触れることはなかったのだ。そのもどかしいほど優しい温度がハイドの心を充たしていく。甘くて苦い、秘密のレシピ。

    「冷めないうちにどうぞ。あたたまりますよ」

     促されるままグラスに口を付けた彼はその甘やかで柔らかな舌触りに心底驚く。ほっと体があたたまり、それは即ち救いとなった。

    「こいつは笑えるぐらい甘いな、バリスタ!」

     ハイドは口元にクリームの髭を作り、笑う。
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    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

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    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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