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    ガスウィル小話 お花見のつもりで書いたけど迷走したのでここに供養…

    ―デートしないか?

     断られるかな、とあまり期待せずに口から出た誘いの言葉は、彼の「いいけど、」という小さな声によって受け止められた。その意味がすぐには理解できなくて、ガストはぽかんとウィルを見つめる。

    「なんだよその顔」
    「えっ、いや…まさかOKしてくれるとは思わなくて」
    「…断ってほしかったならそうするけど」
    「いやいやまさか!嬉しいに決まってるだろ」

     目をそらして呟くウィルに慌てて弁解して、「どこに行きたい?」と前のめりに問いかけた。彼の気が変わらないうちに予定を立ててしまいたい。
     紆余曲折あり、ガストとウィルが恋人同士になったのはいくらか前のことだ。が、未だ恋人らしいことはしたことがない。お互いまともな恋愛経験がない同士、少しずつ進んでいければ良いと思ってはいるが、最初の一歩を踏み出したかった。
     ちらりとこちらに目をやったウィルは、ひとつ咳ばらいをしてから、覗き込むように首をかしげてガストを見つめた。その蜂蜜色の瞳は、いつも自分に向ける鋭さとも他の同期に向けるような柔和さとも違い、どこか試すような光を宿している。


    「夜桜」
    「…ん?」
    「夜桜が見に行きたい」

    ***

    「わあ…、綺麗…!」
    「おお、すげえな」

     数日後、夜分。
     ウィルと共にやってきたのは、グリーンイーストにある日本式の庭園だった。この時期は夜間も園内を開放しているとのことで、目の前に広がる桜並木は月の光と園内のライトアップに照らされて美しく咲き誇っている。遅めの時間だからかあまり人気はなかった。

    「ちょうど満開でよかったな」
    「蕾が多いときもかわいいよ。でもやっぱり満開の桜はお上品だけど迫力あるな。それに、夜に見る桜は昼間と雰囲気が全然変わるんだな…」

     感じ入ったように桜を見つめるウィルはガストのことなど見向きもせず、返事も独り言のようだったが、楽し気な彼を隣で独占できるのは悪い気分ではなかった。

    「ウィルは夜桜見たことなかったのか?」
    「ああ、写真やテレビでしか。子供のころは夜はとても外出できなかったし…今も、この生活をしてると夜に出かけようって気にはならなくて…」
     真面目なウィルらしいな、などと思っていると、ウィルは桜から目を離しガストに向き直る。

    「でも、アドラーがいるならって…」
    「…俺?」
    「お前となら観に行けるかなって思ったんだ」

     そう言いながら、気恥ずかしくなってきたのか頬を染めて目をそらしてしまう。そんなウィルの上から桜の花びらがひらひらと舞い落ちてきて、彼の髪にふわりと乗った。途端、ガストの胸に愛おしいようなくすぐったい様な感情がこみ上げる。ウィルが初めて踏み出すことに自分を選んでくれたのが、初めての体験を自分と共有しようとしてくれたことがたまらなく嬉しかった。

     ガストは沸き立つ高揚感をどうにか落ち着かせてウィルに手を伸ばす。きょとんと開かれた目の隣をすり抜けて頭にたどり着いたガストの指は、髪に乗った花びらをつまんだ。ふと思い立ってそのまま花びらに口づけると、ウィルは素っ頓狂な声をあげる。

    「なっ…にしているんだ!」
    「だって、デートだろ」
    「デ、」
    「それともウィルは…桜が見たいから俺を利用しただけ?」
    「うっ」

     ウィルは狼狽えたように言葉を詰まらせたが、少しの間の後、心を決めたようにガストの手を取った。キッ、とガストをねめつける瞳は鋭く、しかし目じりは仄かな赤みを残していた。

    「デートだよ。言っておくけど、この庭園ってすごく広いんだ。俺が花を見る時間は長いからな。当分帰れないと思えよ」

     ガストはパチパチを目を瞬かせ、そして笑った。
     控え目に繋がれていた指をしっかりと絡め直して桜の下を歩きだす。

    「そりゃ熱烈でいいな。ウィルの気が済むまで付き合うぜ」
    「言ってろ」



    ***
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    ガストを女性下着売場に放り込みたかったなどと供じゅ(ry
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    「なあ、アドラー。その、ちょっと行きたいところがあって……」
    もじもじと指をいじり、恥ずかしげに問いかける恋人に、一も二もなく頷いた。ウィルの頼み事だから、てっきりカップル限定スイーツのあるカフェだとか、購入制限のあるケーキ屋だとかそういうものだと思ったのだ。
    「……えっと、ここ?」
    「うん……」
    ウィルに連れられてやって来たのは、いかにも女の子のための店、といった外観の店だった。それもそのはず、ディスプレイに飾られているのは表に出していいのかと心配になるほど小さな布を身にまとったマネキンたち。そう、女性下着店だ。
    ガストは目を疑ったし、耳も疑った。今、「うん」って聞こえたけど実は「違う」の間違いだったんじゃないか? うん、きっとそうだ。
    「行こ」
    「お、おう」
    そうだよな、そんな訳ないよな。
    動かない俺の袖口を軽く掴んで、ウィルは店内へと足を進め 1106

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    DONEガスウィル
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