ワンドロお題「弱肉強食」(ヒュンケル視点)
勇者を探す旅の合間であっても、困っている人の頼みをついつい聞いてしまうことは、多い。
今回は山賊まがいを退治することだった。
「世の中は弱肉強食だ!何もやましい事じゃねえ!」
縄で縛られててもそういい放つのは大した度胸と言えなくもない。が。
「今はお前が弱くて肉になったのだ。肉は肉らしく黙ってろ」
ラーハルトの蹴り付きのツッコミが、棘というより槍か鈍器になっているのは気のせいか。
「弱肉強食、か」
弱い者は強い者に食われる、まあそんな意味である。
「当たり前すぎて四字熟語にする意味がわからんな」
まったく同感ながら、四字熟語という単語にふと閃いたというか。
「ひょっとして、諺の類を使われたから機嫌が悪いのか?」
「なんでそうなるんだ!!!」
ラーハルトは心外とばかりに叫んでいる。うむ、本人的には違ったらしい。残念。
「いや…しかし四字熟語ならたいてい反対の意味の言葉もあるよな。弱肉強食の反対、となると何だろう」
「弱い者が強いものを食い物にするとかそういう意味か?」
「それはそれで弱肉強食なんじゃないか」
「……そう言われたらそうかもだが…」
うーん、と二人して考え込んでしまう。
「例えばお前の代名詞みたいな窮鼠猫を噛むだと」
「ちょっと待て何が誰の代名詞だ」
「ポップがお前の印象それなんだと」
「今度締めさせろ」
「断る。大事な弟弟子だ」
一瞬睨み合う。このままだと真面目にポップが槍でどつかれるくらいはありそうだ。
「…『窮鼠猫を嚙む』だと『蛇に睨まれた蛙』あたりだな」
何事もなかったようにしれっと言うと、非常に剣呑な目をされたが、とりあえず飲み込んでくれたらしい。
「となると…強くても弱くても関係なく平和に存在する…という感じになるか?」
その瞬間頭に浮かんだ言葉は奇しくも同時に発せられた。
「「共存共栄」」
見事にハモったその言葉に俺達は硬直して吹きだしてしばらく次の行動ができなくなってしまったのだが。
そして思う。
この言葉こそ、ダイに伝えるべきものではないかと。
きっとラーハルトもそう思ったのではないかと、何故だか確信するのだった。