二匹の蟻 その6 春の陽射しに将監は目を細めた。雪国の春は遅いが、冷たい風が吹いても受ける陽射しは暖かい。雪解けの水も凍らずに、畦道にぬかるみを作っていた。
将監は西豊科庄を前に立つ。数年が経っていても変わっていなかった。田畑の位置も同じで、そこで野良仕事をしている領民も知った顔だった。自然と胸を満たすのは、帰ってきたという思いだった。
将監は領民に向かって笑みを浮かべて会釈する。すると領民は青褪めて悲鳴を上げた。将監は驚いて思わず自分の周りを見た。しかしそこには将監しかいない。
悲鳴を聞きつけて領民が集まってきた。すると集まった領民たちも将監を見るなり同じように悲鳴を上げ、逃げていく者さえいた。
まさかそれほど嫌われていたのかと将監は衝撃を受けたが、領民が念仏を唱えたり、成仏してくだせえと言い始めて、化けて出たと思われていると気付いた。
「地頭様?」
その声に見ればあの子がいた。将監に度々瓜漬けをくれた少女だ。将監を見て目を丸くさせ、恐る恐るこちらへと歩いてくる。
「本当に地頭様なの?」
将監は頷く。すると少女は勢いよく駆けてくると将監に抱きついた。呆気に取られて立ち尽くす将監を少女が見上げる。その顔立ちからは幼さが抜けていた。子供の成長はなんと早いものかと将監は目を見張る。涙腺が緩みそうになるのを堪えて笑みを浮かべた。
「すっかり大きくなったね」
すると少女は目に涙を溜めていた。それが溢れる前に手で拭ってしまう。将監は驚いてどうしたのかと尋ねた。
「だって、地頭様は遠い所へ行ってしまったって、目玉様が言ってたから」
「目玉様……」
それはきっと貞宗のことだろう。貞宗は将監の死後、自ら西豊科へ赴いて将監の死を伝えたのか。
「いつ帰ってくるのって聞いても、帰っては来ないって言うし、父さまも母さまも、村の大人たちはみんな地頭様は死んでしまったって言うから……帰ってくるって約束したのに」
「悲しませてしまってすまなかったね」
「でも帰ってきてくれたんだよね、死んじゃったなんて嘘だったんだよね」
「そうだよ。帰ってこられたんだ」
必ず生きて帰って、と戦の前にした約束を、これでようやく守ることができた。将監は小笠原館に戻ってからも、西豊科庄やこの少女のことが気がかりでいた。
これで心残りは消えた。そう思った途端、将監は胸が騒つくのを感じた。何か大きな後悔のようなものを思い出した気がする。ざぁざぁと水の流れ落ちる音が聞こえて、少年の後ろ姿が見える。それは遠い記憶のように将監の脳裏を過ぎっていった。
「地頭様?」
手を掴まれて将監ははっとする。すると少女が言った。
「ねえ、また地頭様になってくれるんでしょう」
「それは……わからないんだ」
将監は振り返る。少し離れた場所に馬を連れた瘴奸が立っていた。一応は頭巾で頭と顔半分を隠している。領民たちを驚かせないようにと、館を出るときに常興が頭巾を被らせたのだ。しかし体格や全体の印象などは隠しようがない。
「あれ……地頭様が二人?」
少女は不思議そうに将監と瘴奸を交互に見た。小笠原の郎党たちは将監が二人いることにすっかり慣れているが、やはり同じ人間が二人もいることは混乱を招く。将監は心苦しく思いながらも嘘をついた。
「あれはおじさんの弟だよ」
「でも鼻の傷まで一緒だよ」
瘴奸は窮屈そうに頭巾を緩めていた。将監はちゃんと隠せと合図を送る。瘴奸が西豊科を見たいと言うから連れてきたのに、なぜ杜撰なことをするのか。
「じゃあ、おじさんはそろそろ行くよ」
このまま他の領民にまで姿を見られてはまずい。将監は瘴奸に帰るぞと手を振った。すると少女が将監の直垂を掴んだ。
「行かないでよ、また地頭様になるって言って」
将監は今すぐにでも地頭になると言いたかった。ようやく与えられたこの土地を手放したくない。慕ってくれる領民たちとの暮らしが恋しかった。
「地頭になるかはわからないが、またすぐにここへ来るよ」
「絶対だよ、絶対に帰ってきてね」
少女に手を振って別れた。瘴奸が二頭の馬の手綱を持って待っている。将監はすぐに馬に乗って駆け出した。
しばらく並んで馬を走らせたが、西豊科から離れた頃になって瘴奸は頭巾を取った。常興からは館に帰るまでつけておけと言われている。それを指摘すると、瘴奸は頭巾を将監に投げつけてきた。言っても聞かないことはわかっているので、仕方なく将監が頭巾をつける。
「地頭を引き受ける気になったか?」
瘴奸は地頭の職を受ける返事をまだしていない。瘴奸なりに考えがあってのことだろうが、将監は気を揉んでいた。だから瘴奸が西豊科を見たいと言ったときもすぐに引き受けた。
領地を得ること、そして武士として生きることは将監の宿願であった。瘴奸も同じだろう。だから瘴奸が地頭の職を受けることを先延ばしにしていることの理由がわからなかった。
すると瘴奸が馬を止めた。将監も手綱を引いて馬を止める。瘴奸は批判のこもった目を将監に向けていた。
「よくその手でガキに触れられたな」
瘴奸の言葉の意味を理解して将監は口を引き結んだ。瘴奸は将監のしてきたことを全て正しく理解している。その罪の重さを一番知っているのは瘴奸だった。
「いったい何人殺して何人のガキを売り払ったと思っている。あのガキはお前がやってきたことを知っているのか」
「伝えていない」
西豊科の領民は将監が賊であったことを知らない。もし知っていたら、あれほど慕ってはくれなかっただろう。
瘴奸は顔を歪めると唾を吐いた。それが将監の足元に落ちる。
「お前の……俺たちのしてきたことが許されるわけがない」
将監はその怒りを知っている。己に向ける怒りと苦しみは将監も抱えていた。将監は己の手を見る。この手から罪が洗い流されることはない。
「だが、こんな手でも助けられる相手がいる」
罪深い手だが、この手で太刀を握れば戦える。領民の手助けができる。罪に囚われて何もしないでいるよりかは、よほどいい。そう思って地頭として、貞宗の刃として戦ってきた。
しかし瘴奸は納得できないとばかりに食ってかかった。
「俺やお前が幸せになっていいと思っているのか」
将監は見つめていた手をきつく握った。それは答えるまでもない問いだった。良いわけがない。将監は同じ問いを何度も繰り返して同じ結論に辿り着いてきた。瘴奸も同じ迷いを持っているのだろう。己の価値と存在に、どうにか納得できる答えが必要なのだ。
「お前はどう思うんだ」
「質問で返すな。生きることで償える方法があるとでも思っているのか」
「それを探している途中だ」
いっそ死んで償いたいと思ったこともあった。しかし貞宗はそれを許さなかった。生きることを与えられたのは、生きて償う道を探すためだと理解している。将監の罪は死んで償えるほど軽いものではない。何も救えない死よりも、生きてできることを見つけるしかなかった。将監はその果てしない道を歩んでいる。
「苦しいか?」
瘴奸の問いに心臓を掴まれる思いがした。無数の童の手が今も将監に向けられている。臓物を握り潰されるような苦しみは、いつも将監に罪を思い出させた。
「苦しいなんてものではない」
将監の苦しなど、売った童たちのものとは比べ物にならない。この苦しみが罰だとすれば、罰は一生続く。それに絶望することすら、許されない気がした。
「だがな」
将監は貞宗を思い浮かべた。そのときだけは、苦しい胸に陽だまりができる。
「幸せになれと言ってくれる人がいるなら、その人の気持ちまで受け取らないのは、違うと思っている」
すると瘴奸が遠い目をした。おそらく瘴奸も貞宗のことを思い出しているのだろう。瘴奸もまた貞宗に生きることを与えられた。その意味を考えているに違いない。
「そろそろ地頭になる気になったか?」
今の瘴奸であれば西豊科を任せられると将監は思っていた。自分の居場所というものが瘴奸にも必要だ。すると瘴奸は眉を顰めて将監を見た。
「あの土地はお前のだろ」
瘴奸は言うと馬を進めた。将監は追い越されて瘴奸の背を見る。一瞬見えた横顔に寂寥を感じた。
「俺はお前の領地を奪ってまで地頭にならなくていい」
瘴奸ははっきりとした口調で告げた。将監も馬を歩かせて後を追う。
「地頭を断るというのか」
将監の問いに瘴奸は答えずに馬を走らせた。
瘴奸が地頭を断れば、地頭になるのは将監である。瘴奸は将監を地頭にさせたいがために地頭を断ったのだろうか。西豊科を見たいと言ったのも、領民と将監の様子を見て判断したかったからか。
将監は瘴奸の変化を感じた。瘴奸であればいずれ自分で自分の居場所を見つけるに違いない。そう思うと将監は誇らしいような気がした。
やがて小笠原館についた。見れば赤沢兄弟が揃って門の前にいる。何やら話し合っている様子だった。
「何かあったのですか」
瘴奸が馬から降りてたずねると、常興はちょうど良かったと言った。
「急だが明日に騎馬訓練をすることになった。場所と配列の確認をしておいてくれ、将監」
常興はそれを瘴奸に向かって言った。単なる名前の言い間違いかと思ったが、兵卒の訓練については将監が受け持っている仕事だった。
そこで将監は自分が頭巾を被っていることに気付いた。館を出るときに瘴奸に頭巾を被せたのは常興である。そのために頭巾を被っていない方を将監だと思ったのだろう。
訂正しなくてはと将監が口を開きかけると、そこへ貞宗がやってきた。常興が話を中断させる。すると瘴奸がすっと貞宗の方へと寄った。
「大殿、少しお話が」
瘴奸は少し身を屈めると貞宗の耳に口元を寄せた。手は緩く貞宗の腕へと添えられている。瘴奸は普段から貞宗のことは「貞宗様」と呼んでいた。呼び方が被ることを嫌ったのか、将監が呼んでいるように「大殿」とは呼んでいない。なぜいきなり大殿と呼び出したのか。
「なんぞ?」
「ここでは……二人きりで聞いて頂きたく」
瘴奸の唇は今にも貞宗の耳に触れそうなほど近い。こいつはいきなり何をしているのかと将監の額に青筋が浮かんだ。すると同じように青筋を浮かべた常興が怒りのこもった声を上げた。
「こら、将監。貞宗様にべたべたするな!」
私じゃない、と将監は言いたかった。瘴奸は将監だと勘違いされていることを利用して貞宗に触れているのだろう。
「違うのです、そいつは」
将監が全てを言う前に、貞宗が瘴奸の額を指で弾いた。
「いたずら者だな、瘴奸」
瘴奸は見破られたことに驚いたのか目を瞬いていた。どうせ露見する企みであることはわかっていただろうが、一瞬で見破られるとは思っていなかったらしい。
「そっちが瘴奸ですか?」
常興が瘴奸と将監を見比べている。将監は頭巾を取った。
「道中で頭巾を交換しまして」
なぜ貞宗は将監と瘴奸を間違わなかったのだろうかと思ったが、目の良い貞宗のことだから見分け方があるのだろう。瘴奸がなりすましたものを信じなくてよかったと将監は胸を撫で下ろした。
ところが常興は笑って許してはくれなかった。
「謀ったな、貴様ら。揃って厠掃除してこい」
「明日の訓練の準備をするのでは」
「だったら早急に厠掃除を終わらせてこい!」
何故私まで、と将監は口にするが、常興に早くしろと追い立てられてしまった。
将監は夕陽の中で馬を走らせていた。道々では芽吹く緑と花に春の訪れを感じなくもないが、今はそれどろではない。将監は一刻も早くと小笠原館へと向かっていた。
将監が再び西豊科の地頭になって二月が経つ。地頭としての仕事は慣れていたこともあって順調で、領民たちも以前のように親しくしてくれている。ところが冬が終わると同時に領地へ来たものだから、赴任の忙しさに田畑の忙しい時期が重なり、追われるままに二月が経っていた。その間、一度も小笠原館に顔を出しておらず、貞宗にも会っていなかった。
地頭として小笠原館へ出向く理由はほぼない。無理に作ればある。しかし地頭の仕事を放り出してまで貞宗に会いに行くことは、将監の生真面目な性格が許さなかった。
そうしてようやく仕事が落ち着いた今日、間も無く日暮れであったが将監は馬を走らせていた。少しでもいいから貞宗に会いたい。二月前までは毎日顔を合わせて執事としてそばにいたものだから、全く会わないこの二月が将監には相当に堪えていた。
将監は見張りの兵の前に馬で乗りつけた。そのまま馬を任せて庭へと周る。この時刻であれば貞宗が弓稽古をしているとわかっていたからだ。
矢が的を射抜く音が響く。弓を携えた貞宗の姿があった。その姿に将監は顔を綻ばせる。すると貞宗も将監が来たことに気付いて振り返った。
「将監? そんなに急いで、なんぞあったか?」
離れていたのはたった二月であったが、その姿を見て将監は貞宗を抱きしめたい衝動に駆られた。
「大殿ッ」
駆け寄ろうとしたら、影から音もなく瘴奸が現れた。瘴奸は手巾を貞宗に差し出している。将監は思わず足を止めた。
「貞宗様」
「ん」
瘴奸は手巾を渡して弓を受け取っている。貞宗が汗を拭うと、今度は竹筒を手に待っていた。澱みなく動く瘴奸の姿に、将監は目を見張った。
「それで、どうした将監」
貞宗はからりとした笑顔を向けた。そこには将監に会えた感動や会えなかった間の寂しさなどは微塵も見受けられない。
「りょ……領地のほうが落ち着きましたので、ご報告にと」
「そちは真面目よの。忙しいだろうにわざわざ来たのか?」
あなたに会いたくて駆けてきたのです、とは言えなかった。瘴奸がいるからだ。しかし瘴奸は邪魔するわけでもなく、少し距離をあけて佇んでいる。
「まあ茶でも飲んでいけ。瘴奸、たのむ」
瘴奸は短く返事をするとそのまま去っていった。貞宗は庭から屋敷へと上がる。将監はその後を追った。
「瘴奸は執事の仕事を真面目にやっているようですね」
会話の糸口にと将監は口にしたが、それを聞いて貞宗の表情が明るくなった。
「そちもそう思うか。本来の生真面目さにやる気が加わったようでな。教えれば礼儀作法もすぐに覚えたぞ」
「それは……よかったです」
不真面目で手がつけられないより、真面目にやっているほうが良いに決まっている。しかし将監は胸が曇るのを感じた。
「そこへ座れい。それで、西豊科の様子はどうだ」
本来なら地頭として領地の報告をするべきだとわかっていた。しかし、将監はすでに我慢の限界だった。
「大殿」
将監は腰を上げると貞宗に身を寄せた。その手をそっと握る。
「お会いしとうございました」
貞宗とは幾度となく体を重ねた仲である。会いたいと思うのも、この腕で抱きしめたいと思うのも無理のないことだ。将監は熱のこもった眼差しを貞宗に向ける。
すると貞宗は先ほどまでのからりとした表情を消して、何か気掛かりでもあるように目を伏せた。どうしたのかと将監は貞宗の様子をうかがうが、その首筋の、小袖の襟で隠れて見えないほどの位置に、鬱血の跡を見つけた。色事の際に所有の証のようにつけられるそれに、将監は驚愕する。
「大殿……」
「そんな目で見んでくれ。そちには悪いと思っている。しかし瘴奸が……」
やはり瘴奸だったかと将監の頭に血が上った。こうなるような予感がしていたのだ。
「瘴奸が無理矢理に大殿に無態を?」
「いや、そうではないのだが、あやつの寂しそうな目を見てると、つい」
「つい?」
「慰めてやりたくなるというか」
将監はあまりの衝撃に言葉を失った。それは与え過ぎではないのかと言いたくなるが、己もそうやって与えられた身としては非難できない。そこで将監ははっとする。もしかして、将監が貞宗の体に触れることを許されたのは愛されていたからではなく、ただの慰めであったのだろうか。
「将監、どうした」
将監は心痛のあまり口が聞けなくて項垂れる。
すると戸が開いた。茶を盆に乗せた瘴奸が部屋に入ってくる。
「お茶をお持ちしました」
瘴奸は薄笑いを浮かべて将監を見下ろしていた。その顔は正に賊である。まさか地頭の職を蹴ったのは、貞宗のそばにいるためだったのか。
すると瘴奸は茶を乗せた盆を脇へと置いて、貞宗に耳打ちした。
「貞宗様、危ないですので将監からお離れください。激昂のあまり獣にように貞宗様に酷いことをするやも」
「激昂しているとしたらお前にだ」
将監は立ち上がると瘴奸を睨め付ける。すると貞宗も立ち上がって二人の間に割って入った。
「喧嘩はやめぬか」
貞宗は二人を引き離す。すると瘴奸がその貞宗の手を取った。
「貞宗様、将監にはっきりと申してください。貞宗様が選んだのは俺であると」
「いや、それは……」
貞宗は言葉を濁す。葛藤するように視線を彷徨わせていた。
「大殿、それは本当なのですか」
「だからそれは……」
「貞宗様、あれほどまで俺を求めてくださったのに、今さら将監が相手で満足できますか?」
瘴奸の言葉に貞宗は目を逸らした。その頬がうっすらと上気している。
「なにを戯けたことを」
貞宗は怒ったように言うが、全然怖くない。むしろ戯れ合っているようにしか見えない。更に瘴奸は貞宗の腰を抱き寄せた。
「あれほど乱れたお姿は将監には見せられぬと仰っていたではないですか」
貞宗は更に顔を赤くして俯いた。将監は脳天を破られたような衝撃を受ける。貞宗がいったいどんな痴態を瘴奸に見せたというのか。気がついたら将監は瘴奸の胸ぐらを掴んでいた。
「喧嘩はやめろと言われただろう」
瘴奸の余裕の表情に苛立ちが募った。瘴奸は掴んでいた将監の手を外させると、貞宗を見た。
「では、貞宗様に選んでもらいましょう」
「わ、儂が?」
「他に誰が選ぶと言うのです。俺と将監、どちらがいいのです」
言うと瘴奸は貞宗の右手を両手でぎゅっと握った。
「貞宗様。お慕いしております」
瘴奸は貞宗の耳元で囁いた。その湿度に高い囁きに、貞宗の心が揺れるのが見て取れた。
将監も負けじと貞宗の左手を握り込む。
「大殿……私を……私を選んでください」
懇願するように将監は言う。貞宗の大きな目が将監と瘴奸を交互に見た。
「どちらをお望みですか」
瘴奸と将監の声が揃った。貞宗は迷いを振り切るように「ええい」と声を上げる。
「両方よ!まとめてかかってこい!」
まるで戦でもするみたいに貞宗は声を張り上げた。