おひさしぶりです五条さん「なーなみっ!」
「何の用ですか。」
「冷たいっ!1週間ぶりに恋人の顔を見たときの態度じゃないよ!」
「わたしこれから一件控えているので急いでるんです。用件だけ手短にお願いします。」
「今日はその一件終わったら僕ん家帰ってきてね♡明日僕も休みになったから!夜からイチャイチャしよ♡」
五条と付き合いの長い七海は、なぜ自分のオフを把握しているのか目の前の男に尋ねても無駄だと知っている。
「わかりました。では失礼します。」
「待って。」
立ち去ろうとする七海の腕を五条は咄嗟に掴んで素早く向かい合うとうなじを捕まえて顔を近づけた。……がくちびるに触れたのは五条の期待していた柔らかさではなかった。
「ここ高専ですよ。誰かに見られたらどうするんですか。」
不意打ちのキスを手のひらで阻止した七海は冷静な態度を崩さない。
「見られてもいいじゃん。僕ずっと我慢してたんだよ?ちゅーしてくれないと今からの任務頑張れないよお〜」
「ダメです。1週間我慢できたならあと数時間くらい訳ないでしょう。」
「七海のいじわる!鬼!」
手のひらで口を覆われたままの五条はモゴモゴ文句を言い続けていると今度は七海の方から顔を近づけてきて、自分の手のひらにくちびるを押し当てた。七海が伏せていた目を上げると吸い込まれそうな澄んだ瞳とぶつかった。僅かのあいだ、深いキスの代わりとでもいうように視線を絡めながら至近距離で見つめ合う。ちゅっと可愛らしいリップ音と共に七海の顔が離れていった。
「我慢してるのがあなただけだとでも?」
「……え。」
「では五条さんまたあとで。」
ポカンとしてる五条をよそに七海は踵を返して歩き出す。
廊下を進んでいった七海は角を曲がると伊地知が所在なさげにおろおろしていた。
「あっ七海さん。わたしは何も見ていないので、その、五条さんの迎えに来ただけで。今来たので!」
「伊地知くんおつかれ様です。みっともないところを見せてすみません。あの人が正気に戻る前に引きずって連れて行ってください。」