12/15勝手にやってくれて構わないから、巻き込んでくれるなと アッチ、バルバトス・バチコがバベルの665階にある集い用の部屋に行くと、いたのはナルニアだけだった。
「よう」
「うん」
挨拶をして……挨拶か? まあ挨拶だ。挨拶をして隣に座る。ナルニアはなんにも言わないので、アッチは勝手に近況とか雑談みたいなことをつらつら喋る。
「あの娘がいるところでメフィストと関わりすぎるのは避けるべきだな」
「は? なんだいきなり。」
いつもは黙ったまま相槌すら打たないナルニアがいきなり言い出した。
「メフィストが連れている娘、アレの前でメフィストとべたべたするなと」
「あのメフィストがバカみたいにかわいがってる秘書? つーかメフィストとべたべたしたことがねえよ」
「お前の感覚だとそうなるのだろうが。……これだからちんちくりんは」
「ちんちくりん!?」
いきなり罵倒された!? なんだコイツ!!
「あ、でも秘書の方と喋ってるとメフィストに威嚇されるんだよな……」
「そうなのか。逆も然り、か」
……あー、なるほど? そういう??? ナルニアの言いたいことがわかった。わかったけど、あいつら面倒くせえな!!
「いや、13冠とその秘書でそんだけべったりなの気持ち悪いな」
「……否定はしない」
「しろよ! いや、でも言いたいことはわかった。アッチはそういうの苦手だけど、気をつける」
「いや? 気をつけなくていいぜ?」
「うわ!?」
いつの間にかアッチらの向かいに英雄バールがニヤニヤしながら座っていた。
「そもそも、アレは俺のだし、返してもらうから邪魔してくれていいぜ?」
アッチは返事に悩みつつナルニアを見る。ナルニアは、ちょっとは取り繕えよ! ってくらい面倒くさそうな顔をしていた。まあ、アッチも面倒なんだけどな!! そういう痴話喧嘩……男女間のアレコレに巻き込まれたくねえ。
「……すんません、めちゃくちゃ面倒くさいです」
「右に同じ」
「なんだお前ら、仲良いな」
バールは口元は笑ってはいるが目は全然笑ってなくて、あーマジなんだなーと他人事のように思う。いや、他人事だけど。
と、そのタイミングで扉が開いた。入ってきたのはアムリリス様とメフィストである。扉の向こうで噂の秘書とアムリリス様のSDが並んで頭を下げているのが見えた。
「あらん、珍しい組み合わせね♡」
「こんにちは、ナルニアくんもバチコちゃんも早いね。バール様もお久しぶりです」
アムリリス様はニコニコしつつ定位置へ向かう。メフィストの野郎はバール様の横に立った。
「おう。アレ返せ」
「返しません。あとそこ俺の席なんでご移動願います」
「退かねえっつったら?」
「俺の席ないんであの娘連れて帰ります」
「はー、ウゼえ野郎だよ」
バール様は舌打ちをしてから立ち上がり、移動する。こえーなんだコイツら。本当にヤダ。怖すぎる。
「なあ、ナルニア。もう嫌だから帰っていいかな」
「今日私とメフィストに振られた事案を全ての貴様が対応するなら帰っていい」
「ぶち抜くぞテメエ」
アッチはぐでっとテーブルに顔を乗せ、向かいではメフィストが面白そうに「君たちそんなに仲良かったっけ?」とか言いながらアッチとナルニアを見比べていた。なんもかんもコイツのせいだ。今日は全部コイツに押し付けよう。
ナルニアにそれを持ちかけると快く共謀してくれた。ざまあみろ、だ。