12/26忘年会のつもりが耐久戦 無事に大貴族会も終えたので忘年会しよう! ということでアルコール度数低めのワインを用意した結果、俺のかわいい子がベロンベロンに酔っ払って甘え倒しているわけです。
「えへへ、おいしいですねえ」
「うん、そろそろ水飲もうか」
「やだやだ、まだワインのむの」
「……おしまいにしよう。顔真っ赤だよ」
やだやだと彼女は俺の膝の上でニコニコしながらゴネている。そう、膝の上にいる。
最初は普通に斜向かいで座っていたのだけど、2杯目くらいで目が据わり(早い!)、クスクスと笑い出し、
「めふぃすとさま、だっこ、だっこしてください」
とか言い出してよじ登ってきた。それを俺が断るわけもなく、いいよいいよで抱き上げて、そのまま居座っている。
いやほんと、絶対に外で飲ませらんない。頼むから俺のいるところで、家の中だけにしてほしい。酒の味が苦手と言うから飲みやすいものを用意したことが全力で仇になった。
「ゆっくりでいいから、水飲んで」
「んー」
不満そうな顔をしつつも、唇にグラスを付けるとやっと水を飲んでくれた。チラッと視線をこちらに寄越す。目が合うとまたニコニコする。そのまま顔ごとこちらに向けるから水が溢れるけど、彼女は気にもせず俺の名を呼んで抱きついてくる。
どうにかなりそうなくらいかわいいけど、このぐでぐでの酔っぱらいは手を出して大丈夫だろうか。吐いたり目を回したりしないだろうか。まあ俺がこの娘にどうにかされているのは手遅れなので、一日くらい我慢しますけども。
でも、そうか。少しずつ酒に慣らそうと思ったけど(会食や貴族会で困るから)、飲ませる度に俺は我慢をする必要があるのか。じゃあ飲めなくてもいいのでは? たまに酔っ払ているところを見たいときだけでいいじゃないか。俺はどうにもこの娘に甘くて、手のひらをころっころ返している。
「めふぃすとさま、だっこ」
「抱っこしてるよ」
「ちゅーもする」
「はいはい」
「おふろ、おふろはいろ」
「……」
この酔っ払い、風呂に入れて大丈夫だろうか。もちろん一緒に入りたい。めちゃくちゃ入りたい。風呂は余程のときでないと一緒に入ってくれないから。
けど、そもそも風呂に入れたら倒れたり沈んだりしかねないし、一緒に風呂に入ってそこから一晩我慢するのもしんどい。
「……風呂は明日の朝にしようか」
「やだあ」
「そろそろ片付けて寝よう?」
「……だっこ」
「はいはい」
甘える彼女を抱きかかえて立ち上がる。魔術でテーブルの上のものを全てワゴンに移動して厨房へ運ぶ。……洗ったり片付けたりは明日でいいかな。
「おろすよ」
「……」
寝室について彼女をベッドに降ろすと既に寝ていた。下手に甘えられるよりそっちの方がいい。忍耐力を試されずに済む。
「明日の朝、風呂に一緒に入る約束、忘れないでね」
「……ん」
たぶん覚えてないだろうけど、何がなんでも一緒に入ろう。布団をかけてやると、彼女は幸せそうにくっついてきた。忍耐力は一晩中試されそうだ。