12/31貴方の横で年を越す「……こちら異常なし、どうぞ」
「異常なし了解。貴様そろそろ休憩だったな。交代要員が来次第休憩へ」
「休憩了解。……アミィ様も休憩一緒ですよね。蕎麦食べましょ、蕎麦」
「内線でいらんことを言うな!」
怒られて内線が切られた。交代の方はすぐに来て、お前怒られるぞ〜とか言われるから、笑っておく。
牙隊新人の私が今、何をしているのかと言えば年越しイベントの警備である。年末年始はどうしてもその手のイベントが多くてナルニア様直下の牙隊ですら警備に駆りだされる。
年が明けたらお偉い様方の年始の挨拶の警備が割り当てられているので、1月は休めない。ぎゃふん。
そんなことを考えながら詰所に用意された簡易食堂に行くと、既にアミィ様が座っていた。
「お疲れ様です。ちゃんと蕎麦にしてくれたんですね」
「内線であのような事を言う馬鹿がいるか!」
「すみません、つい。年越しと言えば蕎麦です」
「そういう問題ではない!」
怒られながら自分の分の蕎麦を貰いに行く。ネギ大盛りにしよ。トレーを持ってアミィ様の向かいに座ると、アミィ様はめちゃくちゃ嫌そうな顔をしながらも一緒に手を合わせてくれた。待っててくれたんだなあ。
「美味しいですねえ」
「こんなところの食事に美味いもなにもない」
「アミィ様と食べれば、割となんでも美味しいです」
「……貴様はすぐそういうことを」
イラッとした顔がこちらを向くからニコーっとして見せたら、アミィ様は口籠って目を逸らす。そういうとこだと思う。
「アミィ様、この後どちらですか」
「センターフロア」
「一緒です。よろしくお願いします」
「知っている。一番騒がしい場所だ。気を抜くな」
「かしこまりました」
知ってたのか。まあそりゃそうだ。今回の総責任者は警備部隊だけど、牙隊の配置はアミィ様が決めている。つまり私の休憩とか持ち場もアミィ様が決めている。
「……アミィ様、私と蕎麦食べたかったんですか?」
「は?」
「失礼しました。なんでもないです」
めちゃくちゃ低い声で威嚇されてめっちゃウケる。アミィ様は蕎麦をすすり終えるとサッと立ち上がった。
「行くぞ」
「イエッサ」
「上がりまで貴様は私と同じ箇所の警備を担当する。くれぐれも腑抜けた態度を取らないように」
「イエッサ。……アミィ様の顔見るとニヤけちゃうから気をつけますねえ」
「……は?」
先程とは違って、拍子抜けしたような声だった。
「参りましょう、アミィ様! わたくしの勇姿に見惚れてもいいですよ?」
「調子に乗るな、馬鹿者!」
思いっきり叩かれたけど、下から見えた耳が赤かったから、思わずニヤけてまた小突かれた。