1/30ごはん?おふろ?それとも…? ある寒い夜にバベルから帰ると、いつもどおり彼女が出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
「お食事の用意ができてございます。それとも寒いですしお風呂を先になさいますか?」
それを聞いて、ふと思いついた。
「あのさ、ごはん? お風呂? それとも私? って言ってくれない?」
そう言うと彼女は胡乱な目つきで俺を見上げた。たぶん、また馬鹿言ってると思われているし、その通りなんだけど。
「メフィスト様」
「うん」
「その発言の良さがわたくしには判りかねますので、ちょっと言ってみてもらっていいですか?」
「うん?」
予想とはだいぶ違う返事に困惑する。
言わせようとしたのに、言わされそうになってる?
いや、言われて嬉しいなら、言ってみても悪くないかも? 馬鹿の発想をしつつ、せっかくなのでキメ顔を彼女に向けた。
「おかえり。ごはんにする? 風呂にする? それとも俺が温めようか?」
「冷めちゃうんでごはんにしましょう」
「えっ」
行きますよーと食堂に連れて行かれて、普通にごはん出されたし、普通に一緒に食べて美味しいけど……美味しいけど!?
その後、風呂もいつもどおりに入って、寝室のベッドに座って俺は困惑していた。
おかしいな……。かわいい娘にかわいいことを言って欲しかったはずが……。
なんて思っていたら風呂から出てきた彼女がホカホカしながらやってきて、俺の肩に手を置いた。
「残るのはメフィスト様だけですね。温めてくださるのでしょう?」
「えっ、それまだ続いてたの」
「もしかしてごはんとお風呂とメフィスト様の中から一つしか選べないんですか?」
「いや、そんなことは」
「ですよね」
ニコーっと笑って彼女は俺を押し倒した。
どうにも俺は彼女に敵わないらしい。