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    nappa_fake

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    #mirmプラス
    fnrrとバレンタインの話。数日前にめちゃくちゃエモいフェンちゃんのイラストを見てしまい、描かれた方に許可をいただいて書きました。
    フェンちゃんは強引であってほしいじゃないですか。

    #mirm夢
    #mirmプラス
    #フェンリル(魔入間)

    狼は獲物を逃さない はい、バレンタインですね。
     魔関署にバレンタインなどない。嘘つきました。バレンタイン自体は存在する。
     世間一般的な意味とは違って、魔関署的には仕事がひたすら増えるだけ……甘い雰囲気も彼ピとのキャッキャウフフもなんにもなく、ただただ殺伐とした事案が増えるだけの、鬼のような期間である。
     ――つまり男女のあれこれによるトラブルの頻発で生活安全課が炎上していた。
     生活安全課の少佐から人手不足で泣きつかれた、私の上官であるアザミ大佐が、
    「次の昇進試験のために他の課で働いてこい」
     と言い、牙隊所属の私もお目付け役の先輩と共に応援に入っている。
     まあ要するに火消しに研修の名目でぶち込まれたわけです。その分、先輩ともども考課へ加点してもらうことをアザミ様に約束させたからいいんですけど。
     ――と、思っていたのは最初だけだった。
     現在時刻はバレンタイン当日――の夜中の二時。
     浮気相手へのチョコが本命だったとかなんとかで刺されていた女悪魔を救急搬送し、刺した男悪魔を連行して魔関署に帰還。その後報告書を書き終えて今に至る。
    「あー疲れた」
     フラフラと魔関署内の廊下を歩く。
     いや、本当に! この時期の生活安全課は、わけがわからないほど忙しい。一日何時間働いているのか、もはや見当もつかない。
     今は深夜の二時。そもそも勤務の開始は何時だったっけ? 遅番で十時? 何日の……?
     通勤用の私服に着替えて更衣室を出る。明日というか今日は遅出で良いはずで、つまり帰ってから六時間は寝られる……やったね……とか思っていたら声をかけられた。
    「おつかれッス。ずいぶんやつれちゃって、まあ」
     振り向いた先にいたのはフェンリル様で、曲がっていた背筋を伸ばして敬礼をする。
    「お疲れ様でございます」
    「いいッスよ、そんなかしこまんなくて。もう、上がってるんでしょ」
    「そうなのですが」
    「で? 今日は何時から何時まで?」
     フェンリル様が大きな背中を丸めてわたしの顔を覗き込む。近い近い。
    「十時から二十時です」
    「ふうん。終わったら俺の部屋に来れる? 残業になっちゃうッスけど」
    「何かございましたか?」
     そう聞くとフェンリル様はコテっと首を傾げた。
    「バレンタインなんすよ? チョコ、ちょうだい」
    「んえ」
    「まさか、俺以外には渡さないッスよね?」
    「え、あの。や、誰にも渡す予定もなくて、全然なんにも用意とかしてなくて」
     あわあわしながら言うとフェンリル様が「ふうん」と頷いた。
    「あのさ、君は今は生活安全課に貸してるッスけど牙隊所属でしょ」
    「はい」
    「牙隊は俺の直属。つまり君も俺のモノ」
    「んんん?」
     めちゃくちゃ偉い上官相手に対して言うべき返事ではなかったけど、疲れ過ぎていて忖度出来なかった。
     なんて?
    「俺のモノである君が、俺にチョコレートを用意するのは当然ッスよね」
    「……?」
    「だから、明日の業後に渡しにおいで」
    「あのですね、六十六歩譲って、フェンリル様にチョコレートをお渡しするのは全然構わないんです。欲しいとおっしゃるのなら、喜んで差し上げます。けど、ですよ。生活安全課はご存知のとおりハチャメチャに忙しくてチョコレートを用意する暇なんかないですよ」
     フェンリル様の手が伸びてきて鼻を摘まれた。
    「ふぎゃっ」
    「違うでしょ」
    「んえ」
    「俺にチョコレートちょうだいって言われたら、返事は一つッスよ」
    「い、いえっさ」
    「よろしい」
     手が離された。痛いんだけど!?
     恨みがましく上官を見上げたら、今度は片手でほっぺたを掴まれた。
    「別に手作りしろとか、高級チョコを用意しろとは言わないッス。そのへんのコンビニで六十六ビルで売ってる板チョコ一枚とかでいいんスよ」
     痛いし、何を言ってるのか、わからない。
     フェンリル様ならいくらでも良さそうなチョコがもらえるだろうに。
     他の部署の女悪魔たちが、キャッキャウフフしながら誰に渡そうか盛り上がっている中で名前が上がるのを何度も聞いた。
     別に、自分の配下だからってそこまでして私からもらいたがる必要なんてないだろうに。
     ……しかし、それを言うと私のほっぺたが引き千切られる可能性がある。
    「わ、わかりました! わかりましたから、離してくださいよ」
    「何がわかったんスか?」
    「今日のうちにどうにかチョコを用意して、業後にお持ちします!」
    「よろしい」
     やっっっと離された。顔だけじゃなくて首まで痛い。なんなの、もう。
    「じゃ、また後で。板チョコ一枚でいいッスから、ちゃんと愛の告白も添えるんスよ」
     そう言い残してフェンリル様は去って行った。私は首を擦りながら一人でボヤく。
    「痛えな……。え、待って、今なんて!? 告白!? セクハラ!! セクハラです!!」
     しかしフェンリル様の姿は既になく。
     告白!? 愛の??
     ……別に、好きじゃな――くも、ないけども!!
    「帰るか……」
     私はトボトボと暗い魔関署の廊下を進んだ。ともかく、帰って寝よう。チョコのこともフェンリル様のことも、寝て起きてから考えればいいや。


     結論から言えばギリギリ14日の内にチョコレートを渡すことができた。
     朝十時に生活安全課に顔を出したら繁華街で男女が揉めてるというので、私と同じく牙隊から応援に来ている先輩と向かう。
     男女を宥め終えて無線で報告したら次に行けと言うので途中のコンビニで昼を選ぶ。
    「……もー」
     仕方ないので、やむを得ず、バレンタインデーのコーナーを眺める。あんなのほとんど恫喝だから!
     今時コンビニにすらバレンタインのチョコレートが置いてある。
     当日だからもうほとんど残っていないのに、ぽつんと残された中にあの横暴な上官にぴったりな品を見つけてしまった。
    「……もー!!」
     昼ごはんと一緒にそれを手に取ってレジに出す。店員のお姉さんがめちゃくちゃかわいくラッピングしてくれて、なんか私があの方のことすごい好きみたいでヤダなあ。
     ――別に嫌いじゃないけどさ。

     午後も午後であちこちのトラブルに駆りだされた。やれ好きな子が他の男に告白していただの、アイツばかりモテるだの、そういう理由による喧嘩や殺傷事件ばかりだ。
     なんとか魔関署に帰ったのは日付が変わる直前で、チョコレートの入ったコンビニ袋片手にフラフラと生活安全課に向かう。
     途中で先輩にお手洗いに寄ると言って別れてから、特別警備長室へと向かう。
    「失礼しまーす。フェンリル様いらっしゃいますかー」
     疲れているので扉を雑にガンガン叩いたら、フェンリル様がぬるっと出てきた。
    「ちゃんと今日のうちに来たッスね」
    「来ましたよ」
     ガサガサと袋からラッピングされたチョコレートを取り出す。
     黒い犬の絵が描かれたマグカップで、中にはホットチョコレート用のタブレットが入っている。
    「どうぞ」
    「ありがと。他のヒトに渡した?」
    「そんな暇ないです。そんな暇ないのに、フェンリル様だけに用意しましたよ」
    「恩着せがましいッスねえ」
     フェンリル様はクスクス笑いながらマグカップを手の中で回している。気に入ったっぽくて何よりです。
    「では、まだ報告書の作成が残っておりますので」
    「まだ半分しかもらってないッスよ?」
     たぶん、私はめちゃくちゃ嫌そうな顔をしたと思う。それっぽいものを渡して逃げようと思ったのに!
    「愛の告白も添えてねって言ったッス。まさか、上官の指示を忘れたんスか?」
    「……それは」
    「好きでしょ、俺のこと。俺、勝算のない戦いは挑まないッスから」
    「……」
    「気づいてないと思った? ずっと見てたでしょうが」
    「だ、別に私じゃなくたって。フェンリル様ならチョコレートくらいいくらでも、もらっていらっしゃるでしょう」
    「もらってないッス」
     フェンリル様は腰を屈めて私の顔を覗き込む。近い! なんの表情も浮かんでいない綺麗な顔が、真っ黒な目が真っ直ぐに私を貫く。
    「誰からも、もらってないッス。君が俺以外に渡していないように。だから、ちょうだい」
    「――す、好きです。牙隊に配属される前から、お慕いしておりました」
    「うん。知ってる。よく言えました」
     大きな手で頭を撫でられた。――と思ったら引き寄せられて、かじられた。
    「知ってる? 狼って一生一人だけの番を大事に大事に囲うんスよ」
    「……あの、報告書出しに戻っていいですか」
    「この流れでそれ言っちゃうんスか」
    「この流れを遮りたくて言ってますね。そもそも生活安全課に私を貸し出したのフェンリル様じゃないですか!」
    「そりゃ最終的な決定は俺ッスけどね。ま、仕事しておいで。戻ってきたら、覚悟するんスよ」
    「い、いえっさ……」
     手を伸ばして、離れかけた顔を捕まえる。唇をちょっとだけくっつけてから、部屋を飛び出す。
     廊下を駆け抜け、生活安全課のドアを勢い良く開ける。
    「遅い!」
     生活安全課の偉い悪魔に怒鳴られ、思わず肩を竦めたけどすぐに言い返した。
    「すみません。フェンリル様に呼びだされてまして」
     そう言えば、手を借りている側である相手は黙る。
     この一週間ほどで書き慣れた報告書をさっさと書いて上がらせてもらう。早く帰って寝たい。
     そして考えなくては。
     どんな顔して牙隊に戻ればいいのかを。
     着替えて更衣室を出たら、私服のフェンリル様がいた。
    (デジャヴ!!)
    「お、お疲れ様です」
    「はい、おつかれ。明日は休みッスよね」
    「なぜそれを。いや、当たり前か……」
    「言ったでしょ。応援に貸してても君はうちの子ッスよ。勤怠くらい把握してる。じゃあ行きましょう」
    「えっ」
     腕を掴まれた。本命チョコレートを渡した直後とは思えないほど、殺伐とした雰囲気だ。
    「戻ってきたら、覚悟してねってさっき言ったでしょうが。覚悟はできましたか? できましたね。さあ、行くッスよ」
     覚悟とは!?
     行くってどこに!?
    「狼が番を連れ込むのはどこだと思うんスか?」
     低く囁かれる声に、背筋がぞくりとする。
    「す、巣穴……?」
     口にした瞬間、フェンリル様が満足気に頷いた。
    「正解」
     薄暗い夜中の魔関署の廊下。
     振り向いたフェンリル様の黒い目が、細く弧を描いていて、逃れられないと悟った。
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