2/17犬と悪魔と怖い悪魔 メフィスト様とバベルの帰りに、公園を散歩していたら使い魔らしき犬を散歩させている悪魔がたくさんいた。
夜もわりと遅い時間だけど、ちょうど夜の散歩の時間らしくて、思ったりよりもたくさんの悪魔が歩いているし、みんな犬を連れている。
「犬は好き?」
メフィスト様も同じようなことを考えてらしたのか、すれ違う犬を眺めながら言う。
「好きでも嫌いでもないですけど、好かれないです」
「ああ、犬が好きそうな雰囲気じゃないからね」
「犬が好きそうな雰囲気?」
「ちなみに俺は勝手にシンパシーを感じているけれど、やっぱり好かれない」
「……怖いですからね」
そう言うとメフィスト様は目を丸くした。
「俺、怖い?」
「何を考えているのか、犬目線でわかりにくいというか。あと体が大きくて上からくるから怖いと思いますよ」
「怖いかなあ」
自覚なかったんだなあ。この方、気さくでフレンドリーな対応の割に本心が見えにくいから、領地の悪魔とか、貴族とかからはそれなりに怖がられている。
普段関わりがある他の13冠の方々や、イルマくんとかはそりゃ怖がらないだろう。それなりの付き合いがあるし、同じ土俵に立っているのだから。
「あの、犬が好きそうな雰囲気じゃないってなんですか」
話を戻す。メフィスト様の方は自分の何が怖いのか考え込んでいたようで、目を瞬かせる。
「たぶん、君が言ったことを柔らかく言っただけだと思う」
「……犬から見て、私は怖いですか」
「――悪魔から見ても怖いけど、犬から見たらもっと怖いと思うよ」
「メフィスト様も私のこと怖いですか?」
「たまに」
即答された!?
こ、怖くないよ! ……いや、どうかな。
確かに愛想は良くないし、犬にしろ子供なんかにしろ、目線を合わせたり優しく対応しないから、怖いかもしれない。
「いや、でもメフィスト様に怖がられる意味がわからないです」
「俺が仕事をサボったときとか、筋の通らない事をした時の詰め方が怖いんだよね」
「自業自得では?」
「そ、そういうとこ!」
私は溜息をついてメフィスト様を見上げた。
「私がかわゆく甘えられるように、仕事は手早く終えてくださいませね」
そう言うとメフィスト様は「善処します」と苦笑した。