2/19手のひらのあなた「パイセーン、こっち、こっちぃ!」
クララちゃんに手を引かれて、私がやって来たのは魔具研の師団室だった。
中に入るとイルマくんとアスモデウスくんもいる。
「見てこれ、かわいいっしょ!!」
「……これは、イルマくんとアスモデウスくん、かな?」
クララちゃんの手の上にはス魔ホと同じくらいの、人形?みたいなものが二体立っていた。イルマくんとアスモデウスくんにそっくりだ。
「そう! これはマチぬいとアズぬい!」
「ぬい?」
「これです」
イルマくんが出してきてくれたのは顔も服もない、まっさらなぬいぐるみだ。アスモデウスくんが手に取ると、途端にクララちゃんそっくりになる。
「このぬいぐるみに魔力を込めると、その時に思う相手の姿になるのです」
「へー。……アスモデウスくん、クララちゃんのことを思ったの?」
「それは、先輩にわかりやすいかと! ともかく、先輩もお一つどうぞ」
「そんな焦らなくても。ありがと」
受け取ったぬいぐるみに魔力を込めると、するっとメフィスト様の姿に変わる。
「……」
「あはは、メフィぬいだあ」
「先輩……?」
イルマくんが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
「や、かわいいね、これ」
手の中のメフィスト様のぬいぐるみは崩れ落ちそうなくらいかわいい。
メフィぬいは私の手からぴょんと飛び降りるとイルマくんの前で跪いた。
「え、これは」
イルマくんが困った顔で私を見る。
「この、ぬいって本人と同じ動きする?」
「というより、魔力を込めた者が思っているとおりに動くようです」
「あー、なるほど」
私はメフィスト様がイルマくんを王だと認めたことを知っている。メフィスト様ならこうするだろうなって私が考えている動きをしているんだな。
メフィぬいはすちゃっと立ち上がると、私の元に戻ってきた。そして指に口を付けてから頬ずりをする。
「……先輩」
「……なにかな、アスモデウスくん」
「不健全なので他所でやっていただけますか」
「ヒトの主人を不健全とか言わないでくれる!?」
その間にメフィぬいは手から腕に登り、肩まで上がってきた。
「これ、どのくらい保つの?」
「込めた魔力量に寄りますが、一日くらいです。追加で魔力を込めればもっと保ちますよ」
「なるほど」
頬ずりするメフィぬいを撫でる。
ちょっと、癖になりそうな可愛さだ。