5/30mfst5月30日夜の話 私は、デビールのジョッキを煽る。アルコールにはそこそこだけど、すぐ赤くなる。
「よくやるわねえ」
隣の女の先輩が、とっくりを傾けて言う。視線の先には、後輩の女の子と、その肩に腕を回す男悪魔。
……私の彼氏だと思っていた相手だ。
見ていても、どうしようもない。目を逸らして、大皿の焼き鳥に手を伸ばす。所詮会社の飲み会。ぼんじりがないし、皮も焼き加減がイマイチ。
そんなふうに現実逃避してた。
「あら、なくなっちゃった」
先輩が呟いてとっくりを逆さに振る。
「お代わり頼みましょうか」
「熱燗ってまだあるかしら?」
「えっと……、あ、ダメです。熱燗の提供は三月までだそうです」
「じゃあ冷でいいわ。あと白湯」
「了解です。私は魔牛ステーキ串にしようかな」
上座では、後輩と元カレ(たぶん)が相変わらず課長や同僚たちに持てはやされている。「若い娘捕まえたね」「式は呼んでよ」「その指輪、高かったんじゃない?」
どう思えばいいのか、わからなかった。怒ればいいのかな、って。だって、あの指輪、前に私が欲しいっていったやつじゃん。
やっぱ、デビール追加しよう。
先輩は届いたとっくりにお湯をなみなみ注いで、そのまま直飲みしてた。私は魔牛串に胡椒をこれでもかってくらい振って、食べる。途中で来たデビールで胡椒を流し込んむ。
「二次会、行く?」
「いえ、止めておきます」
「ウザそうよね。私も行きたくないけど……今帰るとタイミング悪いのよ。子どもたちの寝かしつけと被っちゃって」
先輩には双子のお子さんがいて、今日は旦那さんに任せてきたって言ってた。
「じゃあ、どっか行きます?」
「んー……やっぱ行くわ、二次会に行くわ。せっかくだし、野次馬してくる」
……その発想がすでに野次馬で、思わず笑ってしまった。私はそんな元気はないけど。
しばらくして飲み会はお開き。早足で店を出て、少し離れたバーに逃げ込んだ。
そこで私は、運命のヒトに出会う。