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    chunyang_3

    @chunyang_3

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    chunyang_3

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    CQL義城の後、兎の絵柄の灯篭をもらった思追と景儀の話。二人は雲深不知処で同室という勝手な設定です。少しずつ思い出したっぽかったので、そのきっかけになっていたんじゃないかなぁという話です。

    #CQL
    #藍思追
    lamSiChou
    #藍景儀
    blueKingYee

    記憶の灯り 雲深不知処に戻って来た思追は、部屋の扉を閉めると急激に疲れを感じた。義城での事件は、思追達にとっては初めてのことばかりで目が回るようだったから、疲れ切っているのは確かだ。
    「はぁー……疲れた」
    「もう景儀、そのまま寝ないでよ」
     先に部屋に入った景儀がそのまま寝台に倒れ込んでいるのを見ながら、旅の荷物を片付ける。そして、持ち帰った灯篭を枕元に飾ろうとして、置き場所に悩んでいると景儀に後ろから声を掛けられた。
    「飾るのか。律儀だな」
    「だって、含光君からこんな風に何かを頂くのは珍しいし」
    「まぁ、確かにそれもそうだな」
     灯篭に描かれている兎を見ると、含光君が日頃から慈しんでいる兎達を思い出して頬が緩んでしまう。この灯篭を手渡してくれた時の含光君の顔を思い出すと、思追はどこか懐かしい記憶が引き出されるような気がして胸に手を当てた。


     義城から麓の街に降りてきた頃には往来には明かりが灯る時刻になっており、人の活気があることに思追はホッとしていた。そんな思追の様子に気付いているのかいないのか、隣を行く景儀は色とりどりの灯篭に彩られた街の様子に、見るからに浮足立っている。
    「なぁ、せっかくだし夜市を見ていこうぜ!」
     景儀がはしゃいで言うのに含光君もいるのにそんな遊ぶようなことをして良いのだろうかと判断に悩み、思わず含光君を窺うように見てしまった。すると、莫先輩が早速露店の品物を物珍しく手に取っているのが目に入り、ついで含光君もその姿を目を細めて心なしか口元を少し緩めて見ているのが見えて、息を呑んだ。
     そんな思追を振り返った含光君と目が合い、慌てて拱手する。
    「含光君」
     見てはいけないものを見たような気がして顔を上げられずにいると、含光君は急いでいるとばかりに声を掛けてきた。
    「思追」
    「はい」
     顔を上げると、含光君は歩きだした莫先輩について歩を進めるべく既に体を半分後ろへ向けていた。
    「後程、宿で合流にしよう」
    「わかりました」
     思追が答えると、景儀が軽く肩をぶつけてきた。
    「なぁ、俺たちもあっちを見に行こうぜ!」
     人混みに消えていった含光君と莫先輩の後ろ姿をどこかで見たことがある気がしたのは一体どうしてなのだろう。
    「う、うん……そうだね」
     景儀に早くと促されて思追は不思議な既視感に頭を振ってから、景儀の後を追った。
     
     景儀達にそんなものを買うのかと言われながらも夜市で買った蝶の玩具を懐に入れて宿に辿り着くと、まだ含光君と莫先輩はまだ来ていなかった。
    「思追は何か買ったのか?」
    「……うん」
     合流した藍氏の子弟に聞かれて、思追は小さな子どもが欲しがるようなものを買ったことを言うべきか悩んでしまった。
    「あっ、含光君!」
     その時、含光君と莫先輩が現れてその場にいた各家の子弟達は含光君へと拱手する。含光君と莫先輩の二人が並んで帰って来る姿を目にして、思追はどうしてか少しばかり動揺していた。どうしてだろうと思う前に灯篭を手渡されながら見上げた含光君の顔は普段と変わりがないようなのに、いつか似たようなことがあった気がする。靄がかかったままの柔らかくて懐かしい覚えがない記憶に、胸が痛くなった。


    「おっ、おい、思追どうしたんだ? どこか痛むのか?」
     景儀の声に我に返った思追は、驚いて顔を上げた。
    「どうって……?」
     いつの間にか近くに来ていた景儀が見たことないくらい慌てているので、思追は首を傾げた。
    「ほら、えーと……これで拭けよ」
     くしゃくしゃの手拭きを渡されて、自分の頬が濡れていることに気付く。
    「ほんと、どうしたんだ?」
     溢れてしまった涙を袖で拭ったが、自分がどうして泣いているのか良く分からなかった。
    「何でも無いよ」
    「急に泣き出して、何も無いってことはないだろ?」
     確かに景儀の言う通りだけれど、どうしてなのかが思追にも分からなかったから。
    「本当に何でもないから。大丈夫」
     思追が袖で涙を拭いながら答えた。未だに滲む兎の絵を見ながら、景儀にどうしてと聞かれたところで思追に答えられる言葉は無かったから答えられることが無い。
     ただ、どうしてかは分からないけれど、靄がかかったような記憶のどこか、知っているような何かが、思追の失った記憶を揺り動かしているのかもしれなかった。
    「……どこも痛くないし、大丈夫だから。ほら、疲れてるんだし今日は早く寝よう」
     手渡された手拭きをありがたく返しながら、彼の寝台の方へ景儀の背中を押す。
    「まぁ、それならいいけどさ」
     まだ納得はしていなさそうな景儀だったけれど、それ以上は何も聞かずにいてくれそうで助かった。
     はぁと一息ついてから枕元に灯篭を置き、その隣に懐から蝶の形の玩具を取り出した。雲深不知処でこの玩具で遊んだことがあったのか、思追には分からない。
     いつかこの焦がれるような懐かしさの正体を知ることはできるのだろうか。自分も早く身体を休めなければと、兎の灯篭の隣に蝶の玩具を置いた思追は、二つを愛おし気に眺めてから、景儀に見つかれないように溢れた涙をもう一度袖で拭ったのだった。
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    chunyang_3

    MEMO観音廟の後、藍忘機と別れ一人で旅をしている魏無羨が蓮花塢に立ち寄って金凌と出会う話。CQLを見終わった時に全て終わった後の金凌と魏無羨が再会するのを見たいなと思っていたのですが、魏無羨から両親の話を聞く話になりました。※原作の番外編の再会とは異なります。
    話を聞かせて 目の前に広がる蓮の花の咲く景色を瞳に映し、魏無羨は大きく深呼吸をした。早朝の水辺の空気そのものを吸い込んだような清々しさに、自然と顔が綻んでしまう。朝食を売る屋台の呼び声が聞こえ、波止場の街には既に活気がある。
     この世から消えてしまってからの十六年。決して短くない時の流れの間に変わってしまったことも変わっていないこともある。蓮花塢には少しばかり前にも来たけれど、その時はこんな風に優しく吹く風を感じる余裕は無かった。慌ただしく走り抜けるばかりだった景色が、今は目の前に悠然と広がっている。
     今になって思えば、魏無羨が帰る場所というのは元々この世には無かったのかもしれない。ここ蓮花塢は幼い頃から育った場所でとても大事でかけがえのない存在であることは今も昔も変わらないけれど、魏無羨が帰る場所では無くなってしまった。それは、江澄に江家を破門される前から頭では理解していたことだったが、こうして訪れてみると改めて実感する。
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    chunyang_3

    MEMO景儀と思追の出会いの妄想です。思追が温寧と温家の弔いを済ませ雲深不知処に戻った頃に、魏無羨も雲深不知処に留まる様になったという時間軸の設定です。うさぎと一緒に人参を食べていた頃の思追くんと景儀の出会いの話を書いてみたくなって書きました。
    君と兎と しんと静まり返った蘭室を前にして、藍景儀は柄にもなくとても緊張していた。今日は景儀にとって初めての座学だ。随分前に蘭室には遊びで入って良い場所ではないと叱られてからは一度も近寄っていないので、この建物に来ること自体、ちょっと尻込みしてしまう。
     同じ年頃の藍家の子弟が中に入って行くのに続けて景儀もその静かな空間に足を踏み入れた。周囲を見回してみると、どうやら空いている席に座って良さそうだ。
     こっそり息を吐いて、周囲を見回す。近くに誰か景儀が知っている友達がいると安心できるのだけれど来ているだろうか。そう思って既に座っていた隣の席の少年へと視線を向けた景儀は、視界に入ってきた横顔に思わず息を呑んだ。まるでお手本のように姿勢良く座っていた景儀と同じ白い藍氏の校服を身に纏った少年も、隣に誰かが座ったことに気付いたらしい。軽く横へ顔を向けたことで、景儀と顔を互いに合わせることになった。その顔を見て、景儀は思わず叫ばずにはいられなかった。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライアンコール開催分。2周目に見る1話の魏無羨が過ごす夜の話です。2周目ということにすれば、これまでのことを思い出しているんだろうなぁということがネタバレ有りで書けるのでは!?と思い立って書いた話です。草笛で奏でる旋律は全てを失った魏無羨に残された魂に刻まれたものなのだろうなと思えてとても好きです。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
    残されたもの 魏無羨はこれでも一応途方に暮れていた。
     今の状況で途方に暮れない人はほとんどいないだろう。一度死ぬ前の魏無羨なら、もう少しは不遜な態度でもしてみせたかもしれない。とはいえ、一度魏無羨はこの世から消え、死んでいる間に十六年も時が経っていたらしい。そんな事態なのだから、魏無羨だって多少は途方に暮れても許されるのではないだろうか。
     せめて魏無羨をこの世に蘇らせた莫玄羽が詳細を書き残してくれていれば良かったのだが、どうやらそこまでは考えなしだったのか、それとも詳細を書くことを躊躇っていたのか。
     魏無羨の魂を呼び寄せ、己の魂魄を犠牲にした莫玄羽は魏無羨に負けず劣らず周囲に敵しかいない状況ということは否応なく理解した。一体何をして金家から追い出されたのか詳しくは分からないが、金家にも莫家にも居場所がなかったことだけは確かだ。そんな莫玄羽と一度話をしてみたかったなと思う。もし話が聞けたなら、怨んでいる相手くらい分かるようにしておいてくれとか、陣の描き方のちょっとした間違いなんかを説教してしまうかもしれないけれど。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ5回目(41〜50話)。50話の思追と温寧です。番外編も含めて叔父さんって呼んでるの良いなぁと思っています。思い出さない方が良いと思っていた温寧が、二人で一緒に走って追いかけるんだなぁというところが改めて嬉しいなと思いました。
    焔つなぐ 少し前からもしかしたらと思うことは幾度もあった。己が一体どこの家に生まれ、父母亡き後に一体誰と一緒にいたのか。
     思追は幼き日のことを覚えていなかった。けれどそれは忘れていただけだったのだ。もう会うことは叶わないはずだった人に出会ってから、忘れ去られていた記憶は少しずつ断片的に焔が灯るように蘇っていた。真っ暗な夜空に散らばっていた小さな灯りは、輝く星が互いに繋がり星座を描くように、段々とその全容を理解することができるようになっていた。
     観音廟の外に出ると、思追は駆けつけた他の子弟達に囲まれ、無事を喜ばれながらも観音廟での事の顛末を聞かせてくれとせがまれた。温寧を追いかけて辿り着いてからのことだけでも、思追が説明することは難しい。ましてや金光瑶がどのような人物であったのかを語ることもできそうにない。十六年前に起きたことについても同様だ。それでも、この目で見たことや感じたことはしっかりと覚えておきたいと思った。だからこそ、今はまず不確かな己の過去と向き合いたかった。
    1910

    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ4回目(31〜40話)。39話の刀霊に対面する藍曦臣はどんな気持ちだったのだろうかというのが気になって書いた話です。原作読んでから見るとあの再会シーンだよなぁとも思うところ。この時になって初めて兄上は金光瑶に対する疑念の欠片を抱くのかなと思いはするんですけど、水面が初めて揺らいだ時だったのかもなぁと感じます。
    揺らぐ心 藍曦臣が弟からの知らせを受けて宿に辿り着いた時、藍忘機と莫玄羽はまだ宿に着いていなかった。今ここにいるのは知らせにあった義城で遭遇したという各家の子弟達だろう。若者達は徐々に宿の門の前に集合しつつあった。
    「沢蕪君!」
     藍曦臣に気付いた藍氏の子弟達が近付いてくる。揃って礼をした彼らを見回して、皆無事そうなことに胸を撫で下ろした。
    「忘機はどこに?」
     藍曦臣が問うと、手前に居た藍思追と藍景儀がそれぞれに口を開く。
    「含光君と莫先輩は街を見てくると言っていました」
    「集合の時間を過ぎたのに、まだ戻ってないんですよ」
     景儀が少々不満そうなので、どうやら二人は随分とゆっくり街を見ているらしい。仲良くしているのなら良いことだ。弟がそんなに仲良く連れ立って歩きたいと思う相手などいるのか……と、そこまで考えて頭を振る。これはあくまで仮定の話でしかないし、確証はない。
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    chunyang_3

    MEMOCQL話数ワンドロワンライ3回目(21~30話)。28話の夷陵で再会した忘羨と阿苑の話です。剣と刀で2本買ってもらったんだなぁなんてことを思いながら書きました。
    ※画像で上げたものと基本的に同じですが、表現を手直ししています
    夷陵での再会 子どもがずっと乱葬崗にいるのは良くないかもしれないし、阿苑なら温氏だと誰かに気付かれることもないだろうと、魏無羨は街の様子を見せるためにも阿苑を夷陵の街に連れてきていた。目を離したほんの一瞬でいなくなった阿苑に肝が冷えたのは一瞬で、阿苑はなんとあの雨の中で別れたきりの藍忘機の足元でわんわんと声を上げて泣いていた。
     久しぶりに遭遇した見知った顔が、阿苑を泣かせているなんて思いもしなかった。あんな別れ方をしたのに、再会がこんな笑える場面だなんてことも思いもしなかったけれど。お陰で声を掛けることに悩まずに済んだし、冗談を言って揶揄って、まるで何もなかったかのように話をすることができた。
     屋台の玩具屋の前で足を止め、阿苑に玩具を見せてひやかした。乱葬崗には玩具などないし見せてやるくらいしてもいいだろう。しかし、阿苑に玩具を見せて喜ぶ姿を見た藍忘機は、なぜ買ってやらないと不満気に疑問をぶつけてくる。そりゃあ、お金があったらいくらでも買ってやりたいが、今の魏無羨にはなかなかそうもいかない。
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    chunyang_3

    TRAINING射日の戦いの英雄魏無羨ってつまるところ羿(げい、中国神話の英雄、弓の名手、太陽を落とす)だよなと思ってたんですけど、CQL1話で藍湛がいきなり月見上げてるし、二人の出会いも月見上げてたので、藍忘機って月に逃げなかった嫦娥(じょうが、羿の妻、羿を裏切って不老不死の薬を手に月に逃げる)じゃん!?となった感想のような忘羨知己です。THIS IS 知己(たぶん)
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    月に昇らじ 夜の風が竹林を通り抜ける囁くような音が聞こえてくる。風の音に藍忘機が琴を弾く手を止め、開け放たれた外へと視線を向けると、魏無羨は軒先から見上げた月の明かりに目を細めながら天子笑を呷っていた。
     静室の奥に座る藍忘機がじっと魏無羨の顔を見つめていると、魏無羨が振り向いた。藍忘機の琴の音が止まったことが気になったらしい。
    「藍湛、どうかしたのか?」
     月明かりに照らされた魏無羨の陰影の濃い輪郭に見惚れながらも、藍忘機は前々から気になっていた疑問を口にした。
    「好きなのか?」
    「ん? 俺が酒を好きなのは見てれば分かるだろ? 酒ならいくらでも飲めるなぁ」
     魏無羨の答えを聞かずとも、彼が酒を愛していていくらでも飲めることは良く知っている。
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