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    chisaorito

    @chisaorito ヴェランをかきます💛💙

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    chisaorito

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    予約特典のヴェランちゃんが結婚してましたけどー⁉️記念です。

    2023/8/24 up

    #ヴェラン
    veranda

    てぶくろ越しの熱 乾杯をした後、グラスを手にしたランスロットとヴェインは、白竜騎士団を代表して来賓のテーブルをまわっていた。
     交流のある騎士団を招いての合同演習と会議が開催され、最終日の今夜は開催地であるフェードラッヘ国王主催のパーティーだった。
     顔馴染みのメンバーばかりが集まり、ランスロットはリラックスした気分でスパークリングワインを少量口に含む。すると、隣に立っていたヴェインが「ランちゃん、こっちな」と殆ど空になったグラスを手渡してきて、代わりにランスロットのグラスを奪った。
    「……むう……」
     ひと口、ふた口で酔ったりしないと抗議したかったが、自身の酒の弱さを自覚しているので、口を閉ざすしかない。言葉を飲み込んだ代わりに出たのは、少し子供っぽい唸り声だった。
     いけない。もしかして今のひと口でアルコールが回ってしまったか。
    (そこまで弱くないぞ)
     ヴェインはそんなランスロットの様子を見て、宥めるような笑顔を浮かべている。
     ランスロットとは違い、スパークリングワイン程度で酔ったりしないヴェインは、持ち前の人懐っこさで来賓と言葉を交わしていた。
     以前とは違い、成長し、堂々とした立ち居振る舞いをするようになったヴェインを頼もしく思う。
     少し前の彼なら、パーティーとなれば「肉!」と騒いでいたのに。
    (白い礼装も似合ってるもんな!)
     こちらも以前は「着られている」感満載だったが、今は鍛えられた肉体を引き立て、すっかり似合うようになっている。隣に並んでいると、ヴェインの方が団長に見えるのではないか。
    (だが、本当に似合ってる)
     城の大ホールには大勢の人がいるけれど、まるでヴェインが主役のように感じていた。
     ランスロットは気付かれないよう横目でその姿を何度も盗み見てしまった。
     真っ直ぐで純真な心の持ち主であるヴェインに白はよく映える。オレンジ色の蝶ネクタイも太陽のように明るいヴェインに似合っているし、ランスロットのものとは違う肩章は、副団長としての威厳が表れているようで貫禄が出ている。
     白い手袋に隠された手のひらは、その貫禄に相応しい鍛練の証しが見て取れるのだ。
    (ヴェインの手のひらがマメだらけで、皮も厚くなってるなんて、このホール内では俺しか知らないか)
     フワフワとヴェインを褒めちぎりたい気持ちが溢れてくる。頭を撫でてしまいたい。
    (いや、ダメだぞ。おもてなしをする立場で自国の副団長を褒めちぎるなんて!)
     しかし、どうだろう。立派な体格に眩しい笑顔。グラスの空きそうな来賓に気付くと、ソムリエに目くばせを送る細かな心遣い。自分には持ちえないものをヴェインは持っている。――ランスロットなど、先程からヴェインばかりに気を取られているのに。
     ヴェインは、ランスロットの自慢だ。子供の頃から、ずっと。
    (後でパーシヴァル相手なら、自慢してもいいか)
     視界の端に師匠と友人が映り、良い考えが閃いてしまった。そうしよう。きっと友人は眉間に皺を寄せるだろうけれど。恩師であるジークフリートは、微笑みながら自慢話を聞いてくれるだろう。
     ランスロットが機嫌よくヴェインを眺めていると、視線に気付いた当人がやって来て、さり気なく腰に腕を回し、エスコートされた。どうやら隣国ダルモアの騎士団長ガウェインの元へ向かっている。
     ヴェインはランスロットを支えて歩きながら、小さな声で「ランちゃん、ホントお酒弱いよな~……」と言った。
    「そんなことないぞ!」
     ヴェインを眺めていたら、フワフワした幸せな気持ちが溢れて、雲の上を歩いているみたいに感じてはいるが、騎士団長としての振る舞いに支障は無いはずだ。
     証拠に今もしっかりガウェインへ挨拶が出来ただろう。
    「流石、ランちゃん! 挨拶は立派に出来てる!」
     では何が駄目だというのか。
    「酒が弱い」と言った口調には、多少の困惑が滲んでいた。
    (何かヴェインを困らせたか?)
     考えていると、腰へ回された腕に力が加わる。誘導されるまま歩くと、ソファーに腰掛けた見慣れた後ろ姿へ声を掛けた。
    「グラン! 今日は来てくれてありがとな!」
     ヴェインの明るい声に振り返ったのは、何度も祖国を救う手助けをしてくれた騎空団の若き団長のグランだ。隣に座っていたリュミエール聖騎士団団長のシャルロッテも長い髪を揺らしながら振り返った。
     笑顔を浮かべてくれたふたりは、スパークリングワインではなく、オレンジジュースを飲んでいた。
     ヴェインが「ランちゃんにも後でオレンジジュースを持って来てやろう」と考えたのが手に取るように分かる。
    「ヴェインにランスロット! 今日はお招きありがとう!」
     まだ少年のグランは、この場の空気に少し緊張していたのだろう。ヴェインの笑顔を見ると安堵の表情を浮かべた。
    「シャルロッテ団長殿も改めて。お越しいただきありがとうございます。いつぞやの合同演習に続いて、今回の演習も有意義だったな!」
    「ランスロット団長殿! 前回以上に有意義で、我がリュミエール聖騎士団も大変刺激を受けたであります!」
     いつもとは違うシックで大人っぽいドレスのシャルロッテは、ふたりを見ると「おふたりとも、王子様のようでありますね!」と言う。
     ヴェインは慌てて白い手袋に覆われた右手を振った。
    「いや~! 王子様はランちゃんだけだろー」「ふふっ、シャルロッテ殿も今日は素敵な貴婦人ですね。後で一緒に踊っていただけますか?」
     食事会の後はダンスパーティーもあると聞いているので誘ってみると、腰に回された手に力が入った。
     ヴェインにまた駄目出しをされたようだ。
     たったひと口で酔うはずもないけれど、酔っ払いは黙っていろと言うのだろうか。
    「シャルロッテ団長殿! 不肖ヴェインともぜひ踊って下さい!」
     ランスロットには大人しくするように言いながら、倣って胸に手をあて、恭しく頭を下げているヴェインだ。
    (おお! カッコいいぞ、ヴェイン!)
     洗練された動きに、いつそのような所作を身に着けたのかと思いながら、間近に立つ男を見つめてしまった。
    (王子様はヴェインの方だろう!)
     見つめるというより、見惚れてしまう。
    「ありがたいお誘いでありますが、自分はグラン殿と踊る約束になっているのであります!」
    「おわー! 振られた!」
    「早い者勝ちだよ~」
     すっかりリラックスした様子のグランは、ヴェインを揶揄っている。
     普段ならグランの傍にいるルリアは、テーブル上の豪華な料理に夢中で、ビィと一緒に楽しんでいた。グランが他の女性と踊ったと知ったら、可愛いヤキモチを焼きそうだ。グランのことだから、後でルリアとも踊るのだろうが。
    「名の知れた騎士団の方たちが沢山来てるね」 ホールを見回し、グランが言った。
     同じ空域の名だたる騎士団の主要メンバーが集まっているのだが、交流を持つ切っ掛けはグランの騎空団だ。この年若い少年が人と人を巡り合わせ、縁をつなぎながら旅をしている。
     彼がもたらした縁に救われた人も多いはずだ。
    「皆、艇にいる時とは違う正装だから、少し緊張したけど、ヴェインの笑顔でリラックス出来た~」
     この少年が全空を救ったなんて思えない年相応で可愛らしい言葉を口にするので、ランスロットは破顔した。
    「だろ? ヴェインはいつもどんな時も変わらない笑顔でいてくれるからな! 眩しい笑顔に俺の心も毎日癒やされているんだが、グランも……」
    「ランちゃん、ストップ! ストップ!」
     慌てた様子のヴェインが口を塞いでくる。
     口を覆ったのは、白い手袋だ。
     布の下にある手のひらが好きなのに、残念に思った。
    「あはは、ふたり共ごめんなー。ランちゃん、酔っぱらっちまって……」
    「酔ってないって」
    「ぼくも酔ってないと思うなー。ランスロットはいつもこうじゃない?」
    「そうなのでありますか?」
    「うんうん、ほら、ランちゃん! あっちに美味しそうなフルーツがあるぞ~」
     グイグイ押されて、グランたちから離される。
     折角、ヴェイン自慢が出来ると思ったのだが。
     ヴェインを自慢したくて堪らない気持ちを抑えられないから、もしかしたら、本当に酔っているのだろうかと思い始めたランスロットだ。
     ――いや、でも普段通りだろう。
    「ランスロット、結んでるリボンが可愛いね」
    「珍しいでありますね」
     背後からふたりの会話が聞こえてきた。
     癖のある髪を、今夜は後ろで結んでいる。
     普段と違う髪型に整え、リボンを結んでくれたのは、ヴェインだ。
     手袋をつける前の手のひらで髪を梳き、纏めて器用にリボンを結ぶ手は、いつもランスロットに触れる時にはとても優しい。
    (こんなことも出来るヴェインは凄いだろ?)
     声に出して自慢したかったけれど、出せないままパーティーは終わりを迎える。
     ヴェインは終始ランスロットを支え、エスコートしていた。
     零時の鐘の音が響き、解散となった。


    「ランちゃん、お疲れさまー」
     ランスロットは腰にヴェインの熱を感じたまま、私室へ戻った。大ホールを出た後も、ヴェインはランスロットの腰に腕をまわしたままだった。ひとりで歩けない程酔っていると思っているのだろうか。
     当然のようにヴェインもランスロットの私室へ入り、鍵を掛ける。
     自分の私室へ戻る気はないらしい。
     ランスロットの世話をするつもりなのか――それとも。
     ヴェインが私室に留まってくれたことに安心して、寝室へ向かう。
    「あっ、ランちゃん! 礼服脱がないと皺になるぞ!」
     バスルームへ向かいかけていたヴェインが、慌てて追ってくるのを背中で感じる。
    「シャワーも浴びた方がいいぞ!」
     ヴェインの視線が背中に向けられている。
     少しも逸らしていないだろう。
     腰にはまだヴェインの腕の熱が残っているようで。まわした腕に引き寄せられているような錯覚に陥る。
    (……熱いな)
     ――酔っているというのなら、酔わせたのはヴェインだし、ヴェインの体温だと思う。
     ずっと触れられていて、冷静でいられなかった。
    (手袋越しの熱じゃ、物足りないんだよ)
     しっかり責任を取って、熱を冷ましてもらわなければ――そう考えながら、寝室の扉を開き、ベッドの傍に佇んだ。
     朝、抜け出たままのベッドを見下ろし、待っていると、すぐにヴェインが部屋へ入って来る。
    「ランちゃん」
     声が近づいてきたけれど、触れる前に足が止まった。先程までエスコートし、触れていたくせに、何を遠慮するのかと思う。
     ランスロットは振り返って、ヴェインの若葉色の瞳を捉えた。
    「……お前が脱がせてくれるんだろ?」
    「……えっ? ……いいの」
     動揺した声と歓喜の滲んだ声が、心地よく鼓膜を震わせる。
     愛しい人の声を聞き逃したくなくて、いつだってランスロットの全てはヴェインに向くのだ。
    「お前に責任を取ってもらわないと」
     言いながら、後ろで髪を結んでいるリボンをゆっくり解き、焦らすように床の上へはらりと落とした。
     続けて上着も脱いで床に落とすと、「それはダメっ!」とヴェインが飛んでくる。
    「あははは!」
    「こら~、大事な服だろ~」
     拾い上げた上着と自分の上着を丁寧にハンガーへ掛けると、ヴェインは振り返り、ランスロットの目の前までやって来た。
     少し視線を上げなければ目が合わない距離。
     優しく細められた瞳には、深い愛情が滲んでいる。
    (ヴェイン……)
     もう触れずにはいられなくて、腕を伸ばし、彼の腰へ腕を回すと、ぎゅっと抱きしめて厚い胸に頬を埋めた。
    「……はあ、正装姿のヴェインは、本当にカッコいいな……」
    「まだ酔ってるのか?」
     少し呆れた口調ではあるが、手袋をしたままの手で髪を撫でてくれる。
     結んだ跡が残っているからだろう。何度も優しく手櫛で整えてくれていた。
    「整えても、どうせ乱れるぞ」と囁けば、動揺が肌に伝わってくる。
     視線を上げると、頬を赤く染めたヴェインと目が合った。
     パーティー会場ではランスロットをフォローしながら、騎士団の副団長らしく振る舞っていたのに、ふたりきりになればいつものヴェインだ。
    「ふふっ、お前はカッコいいけど、可愛いな」
    「も~! ランちゃんっ!」
    「早く、素手で触れられたい」
     言葉を放った瞬間、ベッドの上に押し倒されていた。髪を梳いていた手のひらは、ランスロットの頭を押さえつけ、激しいキスをされる。
     勧められるままワインを口にしていたヴェインの口内はアルコールの味だ。
    (……酔いそう)
     普段よりも熱い舌が絡みつき、ランスロットの口内を蹂躙して、熱を高めていく。
     角度を変え、唇を触れ合わせ、舌を舐め合って、唾液を飲み込まされる。
    「ん……、ヴェイン、はやく……」
     乱れた呼吸で口づけの合間に囁いた。何度も繰り返される口づけに焦れて、ヴェインの蝶ネクタイを乱暴に毟り取る。
    「煽るなってえ……」
     漸く唇を離したヴェインは、情欲の滲んだ瞳で見下ろしてきた。ふたりの間を銀糸が伝い落ちていく。
     パーティー中に終始背中を支えてくれていた腕は、手のひらは、白い礼服と手袋に覆われていて、直に体温を感じたいと思ってしまった。
    (パーティー中にそんなことを考えて……俺は……)
     手袋の下に隠された無骨な手のひらで、優しく、激しく触れて欲しかった。
     正装に身を包んだヴェインを前に愛しさが溢れて、抱きしめたくて、抱かれたくて。
    「……ランちゃん、パーティー中、ずっと欲しそうな瞳で俺を見てたもんな? ホント、困った」
     言うと、ヴェインは手袋の先を咥え、ゆっくりと外していく。
     ランスロットを見下ろし、見つめたまま。
     獰猛さをもう隠してはいなかった。
     それでも、彼の手のひらは、優しく触れてくるのだろう。
     白い手袋から手のひらが、指先が現れ、己の肌に触れるのを期待する。
     胸を高鳴らせながら、直接手のひらの熱が伝わるその瞬間を、待った。
     
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    体に力が入らなくて立ってられない
    もう上向いてるのか下向いてるのかどうなってるのかすらわからない
    ごめん、ランちゃん
    俺…もう、ダメかも…
    崩れ落ちる視界の横で黒と青が明滅して消えた



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    親の顔より見た幼馴染の 1325