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    zeppei27

    @zeppei27

    カダツ(@zeppei27)のポイポイ!そのとき好きなものを思うままに書いた小説を載せています。
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    zeppei27

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    いつもの主福の現パロのハロウィン話です。単品でも読めます。本に書下ろしで書いていた現パロ時空ですが、アシスタント×大学教授という前提だけわかっていれば無問題!普段通りの場所の空気が変わるのって、面白いですね。

    #小説
    novel
    #主福
    #隠し刀(男)
    #RONIN

    幸なるかな、愚かな人よ 最初はクリスマスだった。次に母の日が来てバレンタインデーが来て、父の日というなんとも忘れられがちなものを経てハロウィンがやって来た。日本のカレンダーでは直接書かれることはまだまだ少ないものの、じわじわと広まった(あるいはメディアなどの思惑に乗って広められた)習慣は、お花見よろしくお祭り騒ぎをする格好の理由として大流行りを迎えている。街中に出れば、芋栗南瓜くらいしかなかった秋の風景に、仮装衣装が並び、西洋風の怪物や魔女、お化けといった飾り物が目を楽しませてくれる。
     秋と言えば何といっても紅葉で、その静けさと味わい深さを愛していた福沢諭吉にしてみれば、取り立てて魅力的なイベントではない。寧ろ、大学で教鞭を奮う立場にとっては聊か困りものでもあった。校門前には南瓜頭を被った不審者が守衛に呼び止められ、学生証の提示を求められている。ブラスバンド部が骸骨が描かれた全身タイツを着て、ハロウィンにちなんだ映画音楽を演奏し、それに合わせて黒猫の格好をしたチアリーダーがぴょんぴょん跳ねる。ここぞとばかりに菓子を売る生協の職員は魔女で、右を向いても左を向いても仮装をした人間が目立った。まともな格好をしている人間が異界に迷い込んだ心地とはまさにこのような状態を指すだろう。
     もちろん異界は教室にまで及んでいる。教室に入り、教壇に立った諭吉は、ぐるりと生徒たちを見回して例年通りの口上を述べた。
    「後ろの席の人の邪魔になるような衣装は外してください。それと、目立つ格好をした学生から順に当てますから、準備をするように」
    当てられると聞いた途端に慌てだし、生徒たちがばたばたと動き始める。笑いあって菓子の交換をしていた殺人鬼たちもすっかり大人しくなり、ある程度は大人しい、落ち着きを持った空気が舞い戻った。
    「では今日は部分均衡モデルについてから始めます。君たちの今日の行動が、どんな経済効果をもたらすのか、何故起きたのかを分析していきましょう」
    相手が応えてくれるのであれば、こちらも用意はある。わ、と沸いた単純さにふふ、と口元を緩めると、諭吉はホワイトボードに向き合った。




    「なんであなたまで、そんな恰好をしているんですか」
    一連の講義を終え、ようやく自分の巣である研究室に戻った諭吉は、出迎えてくれた人物を見るなり大いに脱力した。ここでならば日常の中で落ち着いて仕事ができると思っていたのに、その安寧の中核である隠し刀(今生では自分のアシスタントを勤めてくれている)はすっかり俗世にまみれていた。
    「事務局にいた頃、この格好をすると学生が言うことを聞いてくれやすかったんだ。今日は午前中、あちらを手伝っていたものだから……すまない。お前が好まないならば着替えてこよう」
    「確かに、学生には受けるでしょうね」
    隠し刀の扮装は狼男であるらしい。元々男性らしいがっちりとした体格をしていることもあり、普段のスーツではなく横縞のTシャツ(流石に裸にはならなかった)は彼の肉体美を余すところなく引き出していた。表情こそ乏しいものの、頭の上に飾った狼の耳を象ったカチューシャは愛らしく、おまけに牙まで装着しているらしい。生真面目さのそこここから茶目っ気を感じ取れる、良い仮装と言えるだろう。学生の何割かは、食べられても良いと思っても不思議ではない。そこまで想像を巡らせると、諭吉は何とも言えぬ気持ちの悪さを覚えて懐を探った。今は無性に煙草を吸いたい気分だった。
    「諭吉、トリックオアトリートだ」
    「え?」
    ぱ、と前に差し出されたのは、チョコレートの丸い包だった。しかも自分が気に入っているコーヒー味で、絶妙なタイミングに諭吉は流されるまま受け取り口に放り込んだ。甘い。生クリームの量が多いためか、なめらかで口の中ですぐに蕩けてゆく。わざわざ学生たちのために準備したのだろうか?仮装に加えて菓子まで準備しているとは、実に行き届いたアシスタントだ。福沢ゼミの学生たちは、さぞかし喜んだに違いない。
    「そのチョコレートは諭吉専用だ。学生には生協にもらったお裾分けを配った」
    「……お気遣いいただき、ありがとうございます」
    気分が悪くなった端から原因が拭われ、雲が取り払われる。これだからこの男は油断がならない。どこまで自分の心を読んでいるのか、知りたいような知りたくないような、チョコレートを口の中で転がしながら諭吉は悩める眉間を指で揉んだ。疲れに甘さがよく染みる。
    「しかし、菓子をもらうのはお門違いではありませんか?僕は悪戯をするつもりでは」
    否、すれば良かったと気づいて諭吉は唇を噛んだ。彼が仮装している時点で、この機に乗じるべきだった!折角の機会を不意にした己が呪わしい。ハナから防衛にかかった隠し刀の方が矢張り一枚上手らしかった。
    「うん。だから先に訊いたんだ。トリックオアトリートだぞ、諭吉」
    「なるほど」
    もちろん諭吉は菓子など持っていない。隠し刀の意図を読み取り、浮き上がる心のままに相手を引き寄せると、諭吉はちゅ、と軽く口づけた。
    「これはお菓子に入りますか?」
    「もう少し確かめないと、味がよくわからないな」
    「良いですよ」
    どうぞ、と言いながら冷静に今日のスケジュールを振り返る。講義やゼミはもうなく、懸念点はゼミ生が突然来る可能性くらいか。否、それも情人は確り追い払ってくれただろう。何しろ今日はお祭りの日、外で騒ぐ方が楽しいに違いない。
     分厚い舌を口中に迎え入れて、諭吉は祭りの波に身を委ねた。

    〆.
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。前作を読んだ方がより楽しめるかもしれません。遅刻しましたが、明けましておめでとう、そして誕生日おめでとう~!会えなくなってしまった隠し刀が、諭吉の誕生日を祝う短いお話です。

    >前作:岐路
    https://poipiku.com/271957/11198248.html

    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ro
    ハレノヒ 正月を迎えた江戸は、今や一面雪景色である。銀白色が陽光を跳ね返して眩しく、子供らが面白がってザクザクと踏み、かつまた往来であることを気にもせず雪合戦に興じるものだからひどく喧しい。しかしそれがどんどんと降り積もる量が多くなってきたとなれば、正月を祝ってばかりもいられない。交通量の多い道道では、つるりと滑れば大事故に繋がる可能性が高い。
     自然、雪国ほどの大袈裟なものではないが、毎朝毎夕に雪かきをしては路肩にどんと積み上げるのが日課に組み込まれるというもので、木村芥舟の家に住み込んでいた福沢諭吉も免れることは不可能だ。寧ろ家中で一番の頼れる若手として期待され、庭に積もった雪をせっせと外に捨てる任務を命じられていた。これも米国に渡るため、芥舟の従者として咸臨丸に乗るためだと思えば安い。実際、快く引き受けた諭吉の態度は好意的に受け止められている。今日はもう雪よ降ってくれるなと願いながら庭の縁側で休んでいると、老女中がそっと茶を差し入れてくれた。
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    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……

    >前作:黄金時間
    https://poipiku.com/271957/11170821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
     諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
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    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。諭吉が隠し刀の爪を切る話。意味があるようでないような、尤もなようで馬鹿馬鹿しいささやかな読み合いです。相手の爪を切る動作って、ちょっと良いですね……

    >前作:黄金時間
    https://poipiku.com/271957/11170821.html
    >まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    鹿爪 冬は、朝だという。かの清少納言の言は、数百年経った今でも尚十分通じる感覚だろう。福沢諭吉は湯屋の二階で窓の隙間から、そっと町が活気付いてゆく様を眺めていた。きりりと引き締まった冷たい空気に起こされ、その清涼さに浸った後、少しでも暖を取ろうとする一連の朝課に趣を感じられる。霜柱は先日踏んだ――情人である隠し刀とぱり、さく、ざく、と子供のように音の違いを楽しんで辺り一面を蹂躙した。雪は恐らく、そう遠くないうちにお目にかかるだろう。
     諭吉にとっての冬の朝の楽しみとは、朝湯に入ることだった。寒さで目覚め、冷えた体をゆるりと温める。朝湯は生まれたてのお湯が瑞々しく、体の隅々まで染み通って活きが良い。一息つくどころか何十年も若返るかのような心地にさせてくれる。特に、隠し刀が常連である湯屋は湯だけでなく様々な心尽くしがあるため、過ごしやすい。例えば今も、半ば専用の部屋のようなものが用意され、隠し刀と諭吉は二人してだらけている。
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