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    10章でシャムスくんの生い立ちがはっきりしたために立ち消えになった話
    ジャックのロボットしぐさを書くのがたのしかった

    #シャムウィル
    siamWill

    無題HELIOSタワーで監視下におかれていたシャムスがいなくなったことに、最初に気がついたのはジャックだった。
    朝の洗濯物回収のためシャムスが起居する部屋に入ったジャックが、ベッドメイクされた状態のまま使用された形跡のないベッドに違和感を感知し、部屋の中をサーチしてみたところ、人体の反応がどこにもなかったのである。

    ジャックはすぐさまノヴァに報告し、タワーの監視カメラ映像を確認した。
    カメラは、消灯時間を過ぎた後にスタッフ用エントランスをでていくシャムスの姿を捉えていた。

    「どうしましょう。付与されていたサブスタンス能力を取り除いたとはいえ、彼にはまだ経過観察が必要と考えますが。ノヴァ、彼にはかつて私の監視に利用していたストーカーカメラは、つけていなかったのですか」
    「あ、ははは。あのときはごめんね、ヴィク。位置情報の信号をだすブレスレットはつけてたんだけどね。簡単に外されちゃったんだよねぇ」
    ノヴァは接合部からきれいに分解されてしまったブレスレットの残骸を手に、苦笑していた。
    「やれやれ、彼の知能が高い、というのは先日のテストで明らかになってはいましたが」
    「計算するときの集中力もすごいんだよ。本人はゲームの延長のつもりで解いてたけど。もし彼に帰る場所がないのなら、研究所で育ててみたかったんだけど。三食おやつつきで、俺の助手にならない?って今日あたりに打診するつもりだったんだ……あれ、ウィルくん」

    ラボの入口で、13期ヒーローのウィル・スプラウトが立ちつくしていた。
    「いまの話、きいてた?」
    ウィルは何かを考えこんでいるようで、ノヴァの言葉にも反応しない。
    明らかに、様子がおかしかった。
    ヴィクターと顔を見合わせたノヴァは、ウィルのほうへ一歩、足を踏み出す。
    すると、弾かれたように、ウィルが動き出した。


    「俺、探してきます」
    「ええ?」
    素早く踵を返したウィルが、速足で去っていった。

    「ウィルには、心当たりがあるのでしょうか」
    ヴィクターに話しかけられたジャックは、「ドウデショウ」と返事をして『困惑」の目を映し出す。



    イクリプスという組織がなくなり、彼らが拠点をおいていた地下都市『ロストガーデン』は封鎖された。
    イクリプスの一員だったシャムスは最後の戦闘で深い傷を負い、タワーに運びこまれた。
    体内組織に浸透していたサブスタンスの効果で、常人とは桁違いのスピードで傷を完治させた。

    だが、ヒーロー以外の人間を攻撃したことがないとはいえ、街の破壊行為は自らの意志で行っていた。
    彼の存在を公にして司法に委ねるか、それともHELIOS内で処遇を決めるか。
    上層部でその議論が重ねられていたところに割ってはいったのがノヴァだった。
    サブスタンスとヒーローの存在に生活を奪われたシャムスの行き場がほかになかったことを主張し、彼を保護することができなかった現在の社会福祉の問題点を挙げつづけた結果、司法組織への身柄引き渡しは無くなった。
    ただし、シャムスの能力を完全に取り除くことは決定事項だった。
    これにはノヴァも異を唱えるとこはなかった。

    「君の能力はサブスタンスをかなり強引に付着させることで発動させていたんだ。身体への負担は、ヒーローたちよりかなり大きいものになっている。だから俺たちは、君のこれからの生活のためにも、君の身体にあるサブスタンスを全て取り除きたい」
    ノヴァの申し出にシャムスはあっさりと承諾した。
    イクリプスという組織がなくなった今、力に固執する理由を無くしたのだろう。
    シャムスは抵抗することなく手術を終えて、与えられた個室からほとんど出ることなく静かにしていた。
    だから、油断した。
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    かわな

    DONEシャムウィル。10章あと
    夢の種は芽吹かないこぢんまりしてるけど、信じられないぐらいきれいで、あったかい家に住んでいる。ドアは温かみのある木でできていて、玄関にはガーベラって花がでっけえ植木鉢に植えられて飾られている。どういった経緯かは分かんねーけど、教えてもらったんだと思う。知りたいなんて思わねーし、調べようなんて絶対に考えないから、たぶんそう。そして、そういうことを平気でするのはオレの中には一人しかいないから困る。それを嫌だと思わないことも。
    「おかえり。手、洗ったか?」
    「まだ。洗面台に行くのめんどうだからそこ使わせろ」
    「えー。またか? 仕方ないなぁ。今日だけだぞ」
    玄関からまっすぐに歩けばリビングがある。広くはないから、ドアを開けばキッチンもみえる。そこには黄色っぽい電気がくっついていて、部屋をまるで作り物みたいに温かくみせる。そして、いつも同じヤツが立っている。幼いころの記憶にある顔つきよりも、すこし精悍さがあるかもしれない。振り返ったソイツは、今日だけだぞって言いはするけど、怒っているわけじゃねえから明日同じことを言ったとしてもたぶん同じような表情で「仕方ないなぁ」って言うんだと思う。
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