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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    仕事でミスをした狡噛さんと怒る宜野座さんのお話。
    800文字チャレンジ98日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ミステイク(ヒューマンエラー) ギノの機嫌が悪いのは、俺が仕事でミスをしたからだ。それもどうとでもなる、小学生でも見つけられるミスをしたからだ。彼は仕事には厳しい男で、そういうのを嫌う人間だったから、俺は絶賛無視をされている。どちらが子供っぽいかは分からないが、彼の腹の虫が治まるまでは、俺は一言も口をきけないだろう。けれど波は俺になびいてきている。花城はさっきからいらいらしているし(仕事中に喧嘩をするなと言いたいんだろう)、須郷も気遣わしげだ(彼は誰かが喧嘩をしていると収めようとするところがあった)。だからここでギノが俺を許してくれれば全ては丸く収まるのだが、まだそれはうまく行きそうになかった。それくらい、彼は強情だったのだ。笑ってしまうくらいに。
    「ねぇ、宜野座。もうそろそろ許してあげてもいいんじゃない。ヒューマンエラーはどこの職場でもあるわよ。あなただってする可能性があるんだから。だからね?」
     花城が助けに入る。俺はそれに感謝する。彼女はきつい女だが、情の深い女でもあった。何かが部下に起これば真っ先に助けに入ろうとするところのある女だ。
    「ヒューマンエラー以下だよ、課長。それをこいつは謝りもしないで……」
     そう言えば俺はまだ謝っていないのだった。すっかり忘れていた。花城が呆れた顔で俺を見る。あなた、謝ってないなんて嘘よね? そんな顔だ。でも忘れていたんだからしょうがないだろう。それに謝るほどのミスでもないと思って次に行ったんだ。ミスはちゃんと修正したのだし。
    「ギノ……」
    「今更謝られてもな。……朝食のパン一ヶ月分で手を打つ」
    「あなたたち喧嘩してるの? のろけてるの? 割って入った私が馬鹿みたい」
     花城が頭を抱えてコーヒーをすする。俺は彼が好きなパン屋のために早く起きる労力と彼の機嫌を天秤にかけたが、やっぱり彼が普段と同じようにしている方が俺にとってはマシだった。こんなんだからギノは好き勝手怒るんだろう。でも、俺はそれくらいにやられてしまっていて、そして俺はそれを気に入っているのだった。彼に振り回されることに、彼の好きなようにされていることに。なぁ、ギノ。お前はそれに気づいている?
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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