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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    鍾魈短文「まだ眠りたい」
    現パロ。同棲している二人のなんでもない朝の日。

    #鍾魈
    Zhongxiao

    まだ眠りたい 鍾離は月に一度くらい、朝全く起きてこないことがある。
     平日は魈が起きて来た時には既に朝食の用意が終わっている。それくらいには朝早く起きているというのに、今日はもうすぐ昼になろうとしていたが、リビングに鍾離は来なかった。
     元々朝食は食べなくても平気なので、鍾離に見つからないことをいいことに抜いた。代わりにホットミルクを飲みながら課題に手をつけていたのだが、昼飯はどうしようかとそろそろ考える時間になってしまった。
     そもそも、今日は朝から買い物に行こうと鍾離は言っていたはずだ。ここで空や甘雨が相手なら分単位で寝坊した時間を伝えるのだが、鍾離の前となると話は別だ。鍾離も疲れて眠りこけることもあるだろう。そう思っていたが、万が一鍾離が体調不良ということもある。今日の予定をどうするのか確認すると共に、鍾離の様子を伺おうと立ち上がった。
     鍾離の部屋のドアをノックしてみる。しかし何も応答はない。この部屋はいつでも入って良いと言われているのでそっとドアノブに手を掛け、ゆっくりとドアを開ける。そっと室内の様子を伺ってみたが、未だにカーテンも開けられておらず部屋の中は暗い。まだ眠っているようだ。
    「鍾離様。もうお昼ですが……今日の予定はどうしますか?」
     一歩だけ部屋の中へ入り顔を覗かせ、そっと声を掛けた。
    「……うん……」
     返事はあった。何が『うん』なのかはよくわからないが、体調が悪いということではなさそうだ。もう一歩足を進め、鍾離へと近づいた。
    「もう少し眠るのであれば……買い物は一人で行ってきます」
    「いや……だめだ……俺も行く」
    「……なら、起きてください」
    「……カーテンを」
     カーテンを開けてくれ。ということなのだろう。昨日は日付が変わる前には各々部屋に戻ったはずである。未だに何故そんなに眠そうなのか理解できなかったが、ベッドの脇に詰まれた分厚い本が答えなのだろう。
     シャッと素早くカーテンを開けた。だいぶ日も昇った太陽の光が、部屋の中を瞬時に明るくする。先程洗濯を干していた時にも感じていた清々しく良い天気だというのに、布団の中の鍾離はまるでドラキュラのようなうめき声をあげていた。
    「鍾離様……起きるつもりはあるのですか……?」
    「お前から口付けしてくれれば……起きる」
    「はぁ……言っててください。熱がないならさっさと買い物に行ってお昼を食べましょう」
    「魈……布団の中へ来てくれないか」
    「嫌です。我は眠くありませんので」
     布団の中へ入ろうものなら、ここから三時間くらい二度寝をされることは過去に何度かあったのでいい加減学んだ。
    「買うものはなんだ……? ネットで頼めば良いではないか」
    「我は何でも良いですが……トイレットペーパーをネットで以前買った時には、手触りや質感に文句を言って実際に見て買わねば気が済まない。と言ってたのは鍾離様ではありませんか」
    「そうだったな……今何時だ……?」
    「十二時を回ったところです。何時に寝たのですか?」
    「何時だろうな。覚えていない。古文書を読み解くのが楽しくてつい夢中になってしまった」
    「さようですか。では好きに寝ていてください。我は行きます」
    「うぅ……魈……」
     同じ家に住んでいるので約束事などいつでも変更は出来るものだが、ただの買い物といえど休みの日に折角一緒に出掛けられる所を蔑ろにされている感じがして、少し胸がモヤっとした。
    「車を出す……ちょっと待っていてくれ」
    「ちょっととはどれくらいですか?」
     つい尋問するような言い方になってしまったが、鍾離のちょっとは当てにならない。これもちょっとくらいなら待ってみようとしたら、何故か五時間ほど待たされたことがあるのだ。
    「今日の魈は一段とトゲを感じるな……怒っているのか……?」
    「自分の胸に聞いてみたらどうでしょうか」
     怒っている? どちらかと言えば呆れているような気もする。いつもは付け入る隙など微塵もないようなどこから見ても完璧な鍾離が、今はただの布団の塊である。
    「魈……俺のことが嫌いになったか……?」
    「そんなことは言ってないです。ほら、起きてください」
     こんな女々しい鍾離は他の人には見せられない。見ていいのは、魈だけだ。迷惑を掛けてもいいのも自分だけだ。と内心ほくそ笑んでいるが、機嫌を損ねているのは確かなので、鍾離には言ってやらない。
     未だ鍾離の目はほとんど開いておらず動く気配がないので、布団をひっぺがして床へ投げつけた。それからベッドへ乗り上がり、鍾離の上にのしかかって目の前の唇に自分のそれを押し付ける。鍾離は自分が言った癖に、目をパチパチと瞬かせ驚いているようだった。いい目覚ましになったということだろうか。
    「……はい。言われた通りにしてあげたんですから、さっさと起きてくださいね」
    「魈……」
    「天気がいいので布団を干してきます」
     床へ投げつけた布団を拾い、鍾離の部屋を出る。あと一時間待って出掛ける様子がなければ本当に一人で買い物に行こう。
     そう思いながら、早くも傾きかけた太陽を見つめ、布団を干した。
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