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    ナンナル

    @nannru122

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    POIPOI 146

    ナンナル

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    前に書いたにょつのやつ、中途半端だったので、キリがいいところまで書いた。
    こんな感じで、☆♀くんにめちゃくちゃアプローチかけまくる🎈くんと、振り回される☆♀くんが見たいな、と。( 'ㅅ')
    キリがいいところまで書きたかっただけなので、この後続きを書いて投げるとかではないです。

    にょつ(司side)

    「婚約は、なかったことにしてください」

    オレの言葉を聞いた父さんが、不思議そうに目を瞬いた。それはそうだ。オレが類と一緒に居たいと言ったのだから。父さんにとっても、類の父さんにとっても、オレのこの想いは願ってもない事だっただろう。類の父さんは、オレの父さんと仲が良い。父さんがとても信頼しているのは知っているし、家族ぐるみで食事をする事だって良くある。オレ達が産まれた時から、いつかそうなれば良いと話していた、なんて言われるほどだ。オレが類を好きになった事を、とても喜んでくれていた。そんな父さんたちの期待を、裏切る事になってしまったが…。

    「この婚約は、司も望んでいたものではなかったか?」
    「………オレは、類の想いを無視してまで、あいつを縛り付けたいわけではないので…」
    「…そうか」

    父さんが、小さく息を吐いた。ガタ、と音がして、足音がゆっくりとこちらに近付いてくる。そっと腕を引かれて、オレは目を丸くさせた。ぎゅ、と抱き締められた事に、一拍遅れて気付く。そんなオレの髪を、父さんが優しく撫でてくれた。

    「もし、司が望むなら、彼にだけ真実を話しても良いんじゃないか?」
    「…………類は、…もう、たった一人を決めたんだ。オレが、今更着飾ったところで、…」
    「……すまんな。司には、辛い思いをさせてばかりで」

    じわぁ、と涙が滲んで、強く父さんにしがみついた。
    オレにとって、この慣わしは産まれた時からのもので、当たり前なことだった。もし、こんな慣わしが無ければ、と、何度か思ったこともある。けれど、それが国のためになるならと、飲み込んできた。いつか、オレの隣に類がいてくれるなら、それだけで良いって。
    そう、思っていたのだがな…。

    「それなら、新しい婚約者を決めねばならんな…」
    「………」
    「…まぁ、大事な事だ。ゆっくり考えよう」
    「…………ん…」

    優しい父さんに甘えて、その時は先延ばしにしてしまった。類に婚約者が出来たら、きっと諦めもつくから。
    オレがこの想いを忘れるまで…。

    その後、父さんから話を聞いた類の父さんにまで謝られてしまった。類が悪いわけではないと話をし、オレと類の婚約はこの日、白紙となった。

    ―――

    (……のだが、…)

    ぼんやりと幼い日の事を思い返しているオレの手が、するりと取られる。ビクッ、と過剰に反応してしまったオレに、類がふわりと笑った。

    「驚かせてしまって、すまないね」
    「…………なに、しているんだ…?」
    「こうでもしないと、天馬くん、逃げ出すでしょ」
    「………………」

    優しい声音に、思わず息を詰める。もう何年もオレの前でこんな顔しなかったくせに。オレが会おうとする度に逃げていたのは、お前じゃないか。
    じと、と睨むように類を見ると、にこりと微笑みで返された。その顔が綺麗で、反射的に目を細めて口を引き結んでしまう。花を持つかのような優しい握り方も、昔と違ってドキドキする。

    「それで、なんで君が男と偽っているのか教えてくれるかい?」
    「…………それは構わんが、ち、かくないか…?」
    「内密な話になるのだろう?近くなければ、周りに聞かれてしまうかもしれないじゃないか」
    「っ、〜〜…、ぉ、お前の部屋にいるのに、誰に聞かれるんだ?! 少し離れろっ…!」

    ドン、と強く類の肩を押すが、あまり効果はなかった。学院の上級生にまで成長すれば、類と体格差が出るのは当たり前だろう。それでも、少し悔しいと思ってしまうのは、類に少しでも意識されたいと思う自分がいるからだ。
    使用人が一人しかいない部屋の大きなソファーに、肩が触れ合うほどくっついて座る類を睨んで、オレは大きめの声でもう一度「離れろ」と伝えた。えー、と残念そうに言いながら少しズレた類に、ほんの少しだけ安堵する。

    (……この態度の変わりようは、腹が立つ…)

    あの日、オレの婚約者を決めるための夜会で、オレは類に女であるとバレてしまった。そもそも、何故あそこで類に会ってしまったのか。今更後悔しても遅い。その時は、類も気が動転していたのか、あっさり部屋を出ていってくれた。だから、ほんの少しだけ寂しかった。女と知られても、オレに振り向いてくれるわけではないのだと知ってしまったから。
    だと言うのに、翌日、学院に行こうとしたオレを類が迎えに来たのだ。

    (全く意味がわからんっ…)

    『一緒に行こう』なんて言われて、動揺もしたし困惑もした。が、ずっと類を想い続けてきたせいで、そんな変化すら喜んでしまう。類から会いに来てくれる事など、あの頃からなくなっていたのだから。
    だが、それだけではなかった。なんと、今日は類が授業に真面目に出ていて、休み時間の度にオレに話しかけてきた。お昼も一緒に食べようと誘われるし、やたらと近くに寄られた。放課後は類の家でゆっくり話そう、と招待まで受けた。
    さすがのオレも、ここまでされれば気付いてしまう。

    (………類は、オレが女だから構ってくるのだろう…)

    『天馬司』だからではなく、『女性』だからこんなにも構ってくるんだ。
    類が女性とよく一緒にいるのを知っている。女誑しと一部に呼ばれているのも知っている。オレも類にそう言ったことがあるしな。学院の授業をサボって女性と話をしてることもある。夜会で女性に囲まれているのも知っているし、色々な女性と二人きりで話しているのだと聞いたこともある。
    類が、女性に甘いのも知っている。

    (…以前、オレの誘いは断っておきながら、他の女性とデートしていた事だってあったというのに)

    あの時だって、悔しくて堪らなかった。
    あの日、類に好きな人が出来たと聞いて喧嘩別れした日から、類とは上手く合わなくなった。まぁ、類の好きな人に嫉妬したオレが悪いのだが…。会えば不機嫌そうな顔をする類に、つい文句が出てしまうんだ。仲直りしようといつも決意して会うのに、上手くいかなくて…。その内、類と会えなくなっていった。食事会も類だけ欠席するし、お茶会も用事があると欠席される。類の家へ行けば、外出していたり体調不良だからと会えずじまい。類の両親がその度に申し訳なさそうにするから、怒るに怒れなかった。
    オレに『会いたくない』のだと、拒絶されていると気付かされた。それ程までに嫌われるようなことを言ってしまった。
    悔しくて、それでも、類に振り向いてほしくて、勉強も稽古も頑張った。剣術の腕には自信があるし、学力は学園でも常に一位と皇太子に相応しい結果を残している。

    (まぁ、オレがいくら頑張った所で、類は自分の結果すら気にしていなかったが…)

    授業態度も悪く、試験の結果も中の下。類の父さんも頭を抱える程だ。次期宰相候補として、周りからは殆ど期待はされていなかった。もしかしたら、類は宰相になるつもりも無ければ、神代家を継ぐつもりもないのではないかと思う程に。それ程、類の学院での態度は酷いものだった。
    それなのに、オレが“女である”と知っただけで、ここまで変わるのか。

    (……オレの今までの頑張りは何だったのだろうか…)

    じとり、と隣に座る類を睨んで、拳を握り込む。
    素行が悪い類の世話係を、オレは自分から買って出た。授業に来ない類を探しに行くのも、テスト勉強をするよう言うことも、女性を誑かす類を見張ることも、全てオレがやりますと言った。次期皇太子として、と言えば、先生もオレに託してくれた。先生に言われたから仕方なく、と、恥ずかしくなって類にはそう言って誤魔化した。本当は、少しでも類と関わる機会がほしかっただけだ。少しでも、類にオレを見てほしかった。
    それなのに、“男の”オレの言葉は聞かないのに、“女の”オレの前では頑張るのだな。

    「天馬くん?」
    「………なんでもない。オレが男だと偽る理由が知りたいんだったな」
    「…うん」
    「この国の王族には慣わしがあるんだ。現国王の実子に男児が産まれるまで、第一子が女児の場合その者は成人する日まで男と偽る、と。それに従っているだけだ」
    「なるほどね」

    心配そうに顔を覗き込む類から視線逸らす。昔から何度も聞いた慣わしを口にすると、類は口元に手を当てて視線を下げた。何か考えているのだろうその横顔をちら、と見る。類の真面目そうな顔は珍しい。そうそう見る機会のない横顔に、つい視線が奪われてしまう。まだ、類が好きなのだと、実感させられるのが悔しい。
    気を引き締めるために、机上のティーカップに手を伸ばして、そっと持ち上げた。

    「実子が女性のみでは、婚姻を通して簡単に実権を握れると考える他国に狙われる可能性があるからね。それに、この国の有力貴族にもそういう考えを持つ者も出てくるかもしれない。内乱なんて事になれば余計国が傾く、というところかな」
    「………そ、そうだが…」
    「それで成人の日まで、ね。成人式までに君が完全な統率力を身につければ、他国に簡単に乗り込まれることもないし、貴族達も手を回す時間がなくなる、と」

    紅茶のカップに口をつけたオレの隣で、類が納得したように頷きながらそう呟いた。それを聞いて、思わず手が止まる。この国でこの慣わしを知る者は限られている。しかも、ここまで詳細に知っている者も少ない。簡単に言い当てられた“慣わしの意味”に、目を丸くさせて類を凝視した。

    「お前、知っていたのか…?」
    「そういう訳では無いけれど、態々性別を偽るとしたら、理由として考えられるのはこのくらいだからね」
    「…………」
    「そういう事なら、僕も協力させてもらうよ」
    「………は…?」

    類がさらりと言った言葉に言葉を飲み込んだ。当たり前のように言うが、その理由に行きつくのは簡単なことなのか? 類の不真面目な態度しか見てこなかったからか、目の前にいるのが別人に見えてしまう。
    唖然とするオレに、類がにこりと笑った。『協力』という言葉に、今度は気の抜けた声がこぼれる。

    「君が成人する日まで、君のサポートをしてあげる」
    「…………………ぇ…」
    「必要なら、女性へのアプローチの仕方も、エスコートの仕方やダンスについてだって、ね」
    「……ぃ、や、…、………は……?」

    す、と手を取られ、類の唇が指先に触れる。
    ふわりと微笑む類に、オレは瞬きすら忘れて魅入ってしまった。夢でも見ているかのような光景。散々避けられ、やっと出来た会話は喧嘩ばかり、嫌われているのだと嫌でも分からされた。それでも、諦めきれずにずっと想い続けてしまった相手が、オレの指先に触れている。きらきらと輝く様な笑みに、胸がきゅぅ、と音を鳴らす。苦しくて、自由な片手で胸元を掴んだ。
    じっとオレを見つめる月色の瞳に、ごくりと喉が鳴る。

    「だから、これから先は僕を隣に置いておくれ」
    「………………っ、…」
    「必ず君の役に立つと約束するよ。君の隣で、君を護ってみせるから」
    「………、……ぉ、…」

    目の前まで近付く綺麗な顔に、くらくらと意識が揺れる。触れられた指先が熱くて堪らない。甘く囁く様な声音が、鼓膜に絡むように染み込んでいく気がして、耳を塞ぎたくなる。だと言うのに、その言葉がオレに向けられているのだというだけで、一言も逃したくないと思ってしまう。どろどろに溶けてしまいそうな程熱くなったオレの頬に、すり、と細い指先が触れた。
    びくっ、と体が過剰に反応して、視線が下がる。走ったわけでもないのに、鼓動が早くなっていく。そんなオレの目の前で、類がくす、と笑った。

    「…ね、“司くん”」

    ゾクゾクゾクッ、と背を何かが駆け上がり、心臓が大きく跳ねた。久しぶりに呼ばれた名前に、ぎゅぅ、と心臓が掴まれたような衝撃が襲う。近付く距離と、唇を掠める吐息に強く目を瞑った。ギ、とソファの軋む音が鈍く響いて、オレは震える口を引き結ぶ。
    体がゆっくりとソファーの背もたれに押し付けられて、震える手でぎゅ、と類の腕を掴んだ。

    「…ぉ、れは……」

    虫の音のような小さな声が零れる。ごくん、と喉を鳴らして、大きく息を吸い込んだ。類の、小さく笑うような声が聞こえた気がする。脳裏に浮かぶ幼い頃の類の姿に、胸の奥がきゅぅ、と音を鳴らす。けれど、その後に浮かんだ最近の類を思い出すと、ぎゅぅ、と胸が苦しくなる。
    苦しくて、チクチクした様な痛みに耐えきれず、手に力を入れた。

    「……っ、…ぉ、オレより劣るやつに護られてたまるかっ、この不良者ぉッ!!」

    オレの人生の中で一番大きな声が出たことだろう。
    掴んだ腕をぐるんと回して、オレは類を勢いで投げ飛ばした。ものすごく大きな音がしたが、構ってなどいられるはずもなく、オレは逃げる様に類の屋敷を飛び出した。
    やってしまった後悔と、長年片想いし続けた類からのあからさまなアプローチに対しての嬉しさや悔しさ、困惑、戸惑い、全てがぐちゃぐちゃに混ざりあって訳が分からず、帰りの馬車の中で百面相する羽目になった。
    帰宅後に家族にとても驚かれたが、それどころでもなく。オレはその日部屋に閉じこもって必死に状況を整理しようと努めた。
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