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    しゅー太

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    しゅー太

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    #七五
    seventy-five

    結婚した七五と伊と家の話五条悟が左手薬指に指輪をするようになった。と、これだけの事実で、呪術界は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。五条の影響力を考えれば致し方ない話ではあるが。
    相手は誰か。あの五条悟のお眼鏡にかなう相手がいるのか。あの五条悟が結婚したがるのか。もしや弱みでも握られたのか。いやいやあれはただの虫除けじゃないか。とにかく推測憶測妄想が噂されるばかりで、誰も真実に辿り着けていなかった。そもそも、当の五条本人以外に、真実を知る者なぞいるのだろうか。
    賑やかに騒ぎ続ける呪術界の片隅で、同じ時期から似たデザインの指輪をするようになった術師がいた。何せ前者のビッグネームが過ぎたので、こちらの術師については、本人と親しくない限り記憶に残ってもいないようだった。その術師の名前を、七海建人という。
    チカチカと瞬く銀色は、よくよく見比べてみれば全く同じデザインをしている。そうして本人たちしか知らないが、内側にはそれぞれ緑と青の小さな宝石が埋め込まれている。もちろん、そのデザインも何もかも、二人で頭を悩ませて決めたものだ。
    そういう何もかもを、呪術界の大半は知らないし、彼らと親しい人たちは余すことなく知っている。知っていて、口を噤んでいた。
    彼らと親しい人たちは、彼らの幸せを心から願っているので。

    ◆ ◆ ◆

    伊地知は七海と五条の結婚を心から祝福している。
    七海と一緒にいる時間が長いほど、五条が上機嫌になるから、とか。五条と会えた翌日の七海は、心做しかいつもより雰囲気が柔らかいから、とか。理不尽な飛び火が少なくなるというのも一因ではあるが、それだけではない。
    常日頃から命を懸けて呪霊と戦う彼らが、少しでも平穏なひと時を過ごせればと、伊地知はただ願っている。
    だから賑わう同僚たちに何を尋ねられても、伊地知はちょっと困った笑顔を浮かべて、
    「さあ、どうでしょうねぇ」
    と煙に巻くのだ。

    ◆ ◆ ◆

    家入は七海と五条の結婚を一応は祝福している。
    とはいえ、それは書類を伴った法的なものではないので、あくまで二人の意識の話だ。
    二人が結婚したところで、五条からの、愚痴という名目のノロケはなくならない。酔った七海による、「五条のココが可愛いプレゼン」という何の為にもならない長話もなくならない。けれども、そうやってお互いの話をしている二人は間の抜けたデレデレとした表情を晒していて、それを肴にするのも悪くない。
    なので家入は、医務室を訪れた誰かに探りを入れられても、
    「さぁね」
    とはぐらかすのだ。
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