ringed「七海どこにいんの」
ヒュっと息を飲んだ伊地知の反応は、理解するには充分だった。
窮屈な箱から出たら人類はもういませんでした、なんて事が過らなかったわけじゃない。それに比べたらマシな方だろう。……人類にとっては。
「死んだの」
言い淀む伊地知がyesかnoで答えられる質問にする。
その声が我ながら明日の天気を聞くかのように、飲み会の出欠を聞くくらいの軽さで。
ごくごくありふれた会話のようなトーンは伊地知の心臓を殴ったらしい。
「五条さん!!」
伊地知がこんなにも声を荒げ、非難の目を向けた事はなかった。
僕の態度が気に入らないのは分かるけど、伊地知を気にしてる余裕はない。
「鍵」
「え、」
目の前に手を突き出してやれば怒っていたのも忘れたのか狼狽えて僕の手と顔を交互に見てくる。
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