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    雨クリワンドロ4/2お題:お花見
    多分付き合ってる雨クリ

    #雨クリ
    raincoatClipper

     ユニットでの仕事の帰り道。最寄りの駅へと向かう道すがら、見事な桜並木を見つけた三人は、思わず足を止めた。
    「へえ、行きは気づかなかったけど、綺麗だねー」
    「ちょうど見頃ってところだな」
     この後は予定している仕事もない。寄り道するのもいいだろうと、三人の足は吸い寄せられるように並木道へと向かった。両脇に植えられた桜は満開を迎え、時折はらりと花びらを落としている。
    「桜といえば、やはりサクラダイの話は欠かせません!実は漢字の桜鯛と片仮名のサクラダイは別種の魚でして……」
    「桜を前にしても、クリスさんは相変わらずだねー」
     桜もそこそこに、いつものように話し始めたクリスに、隣の想楽が苦笑した。
     桜に囲まれるクリスは、本人の持つ華やかな容姿も相まって大層絵になっている。一方で当の本人の意識は桜ではなく海へと向いてしまっているのがちぐはぐで、どこか面白い。
     もちろん、それがクリスの魅力だとも言えるのだが。
    「古論は花より魚だな」
    「雨彦さんも人のこと言えないよねー」
     雨彦の言葉に、想楽がすかさずそう返してくる。にやりと笑いながら見上げてくる想楽に、雨彦は思わず肩を竦めた。雨彦がクリスばかりを目で追っているのは、目敏い最年少にはお見通しだったようだ。
     桜に魚に夢中のクリスを見守っているのも悪くはない。だがそれと同時に、そろそろその意識をこちらに向けてほしいとも思ってしまう。
    「ほら古論、花びらがついてるぜ?」
    「おや、ありがとうございます、雨彦」
     ならばとクリスに近づいて、まずは髪についた花びらをとってやった。距離が縮まったのをいいことに、クリスの耳元に少し顔を寄せて、想楽には聞こえない声量で囁きかける。
    「どれ、桜やら海やらに攫われる前に、俺がお前さんを攫っちまうとするか」
     冗談めかしたような口調でそう言えば、クリスはぶわりと顔を赤くした。
    「あ、雨彦!」
     その目がしっかりと雨彦を見上げたのを見て、雨彦は満足したようにクリスから離れる。顔を赤らめたまますっかり黙り込んでしまったクリスは、駅へ向かうべく再び歩き出した。
    「サクラダイはもういいのかい?」
    「……それどころではなくなってしまいました」
     クリスは少し拗ねたような口調でそう返してくる。雨彦の企みは、十分すぎるほどの効果があったようだ。
    「二人とも、ほどほどにしてよねー」
     二人のやりとりにすっかり慣れてしまった想楽ののんびりとした声だけが、後ろから届いてきた。

     駅に着くと、想楽は雨彦とクリスに別れを告げて、早々に帰路についた。
     現場へ直行した関係で雨彦もクリスも今日は電車だ。二人も路線が異なるので、ここで別れることになるのだが、クリスは一向に動き出す様子がない。
    「古論?」
    「……雨彦は、私を攫ってくれるのですよね」
     少しの間の後、恥ずかしそうに告げられた言葉に雨彦の心臓が跳ねる。たどたどしい誘い文句に、思わず口元が緩みそうになってしまった。
    「攫われてくれるのかい?」
     そう尋ねれば、クリスはこくりと頷く。
    「なら、このまま帰すわけにはいかないな」
     今すぐにでもクリスを腕の中に閉じ込めてしまいたいが、人目のある駅のど真ん中だ。ぐっと衝動を堪えて、雨彦はこの後のプランに思考を巡らせた。
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