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    雨クリワンドロ8/28お題:夕涼み
    なんか生活感…みたいな雨クリのふわっとしたらくがき。当然のように同棲してる。

    #雨クリ
    raincoatClipper

    「雨彦、風邪をひいてしまいますよ」
     穏やかな声にそう呼びかけられて、雨彦はゆっくりと目を開いた。
     目の前には雨彦の様子をじっと覗き込む恋人の顔。雨彦と目が合うと、口元に柔らかい笑みが浮かぶ。
    「こいつは良い目覚めだな」
    「おはようございます。起こすかどうか迷ったのですが、エアコンが当たっていたので……」
    「ああ、眠っちまったみたいだな。起こしてくれて助かったよ」
     今日はそれぞれ別の仕事が入っていて、クリスとは朝に顔を合わせたきりだった。
     八月ももう終わりだというのに、まだまだ蒸し暑い日が続いている。昼過ぎに仕事を終えた雨彦は、すっかり外の暑さにバテて、早々に家に帰ってきたのだ。そうしてリビングのソファに倒れ込み、そのまま眠ってしまったらしい。
    「お前さんもおかえり。今帰ってきたのかい?」
    「はい、つい先程。外は大分涼しくなりましたよ」
     クリスはそう言いながら窓辺へと向かい、バルコニーへと続く窓を開ける。リビングにふわりと風が流れ込んでくるのが心地良い。
     バルコニーへと出たクリスの後を追うと、外は日中よりも随分と暑さが和らいだようだった。
    「一日中この気温ならいいんだかな」
    「そうですね。ですが、もう少しの辛抱ですよ」
     雨彦の言葉に小さく笑うクリスの隣に並び、雨彦は目の前の景色に目を向ける。
     眼下に広がるのは海ではなく、都会的な街並みだ。
     二人で暮らすことを決めて、部屋を選び始めた当初は、クリスであれば海に近い場所を選ぶのだろうと思っていた。けれどクリスが提示したのは、交通の便に優れた、駅の近くのマンションだった。
     アイドルという仕事柄、時間も移動も不規則になりやすい。できるだけ苦労をすることがないように、と考えた末の結論だったらしい。本人曰く、目の前になくたって海には行くことができるから、とのことだ。
     ロケーションよりも二人で過ごす空間を、と熱心に家具や家電を調べるクリスの様子に、柄にもなく少々舞い上がってしまったのを覚えている。
     それでも雨彦は密かに、いつかはクリスが望む海の側に、と思っていた。いつなのかも、実現するのかもわからないその未来の話を、クリスに伝えたことはまだないのだが。
     夕日に色づく空は、少しずつ夜を迎えようとしているところだ。街も明かりが灯り始めて、日中とは異なる顔を見せる。
     すっかり見慣れてしまった、ありふれたこの景色のことを、雨彦は嫌いではない。
    「せっかくだ、酒でも持って来るかい?」
    「たまには外で一杯、というのもいいですね」
    「よし、ちょいと待ってな」
     クリスを残してリビングに戻った雨彦は、その足でキッチンへと向かう。冷蔵庫から冷えた缶ビールを二本手に取って、それからまたバルコニーへ。
     雨彦を待つ一人クリスは、外の景色を静かに眺めている。時折風が吹くと、さらりと長い髪が揺れて。
    「雨彦、ありがとうございます」
     雨彦に気づいたクリスは、そう言いながら振り返り微笑む。夕暮れに佇むその姿に、思わず目を奪われる。このクリスは、今は雨彦だけのものだ。
    「雨彦?」
    「……いや、もう少し涼んだら、お前さんに触れたいと思ってね」
     雨彦の言葉に、クリスは少し驚いたような顔をして、それからほんのりと頬を染めて頷く。
     お互いに少し照れを隠すように、手元のビールに口をつけると、ひやりとした感覚が身体に染み込んでいった。
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    MEMOノイくんにマウント取る大人気ない暁さんの話。
    暁理のつもりで書いたのだけれど暁さんも理人さんも殆ど出てこない上にそもそもコレは暁理なのか自信がなくなりました。
    「あーーーー終わんない!!」
     時空警察庁にある一室、特殊部隊に割り振られている事務室で真白ノイは大声をあげた。目の前にある端末には書きかけの報告書が表示されている。出動1回につき1通の報告書を提出する決まりになっているが、出動が続き未提出の報告書が溜まってしまっていた。今表示されているものが5つ目で、まだ残り6件分の報告書がある。
     ノイが報告書に追われているということは、バディである理人もまた同量の報告書に追われているということでもあった。大声をあげたことで理人に叱られるかと思ったが、声すらかけられないのでノイは拍子抜けする。
    「気が済んだなら報告書の作成に戻れ」
     ノイの視線に気付いたらしい理人はそこでやっと声をかけて来た。既に既定の勤務時間は過ぎてしまっているのだから理人の言うようにすぐ報告書の作成に戻るべきなのだが、ノイの気は重いままだし集中力も切れてしまっている。これらの報告書の提出期限は今日の2359までだが、まだ2000を少し過ぎたところなので余裕はあった。
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