1/1玄関を開けると、キンと冷えきった今年初めての外の空気が頬を掠めていった。
やっぱり、出たくないな。
コートを羽織ってマフラーで口元を隠して、手袋もして、イヤーマフもつけたのに一歩を踏み出せずにいると、先に出ていた黒崎が朝の光の中、振り向いた。
「ほら、石田。早く行こうぜ」
新年の、朝だ。
初詣に行こうと言ったのは黒崎だった。
黒崎と会ってからはなんだかんだとお正月は初詣に行っている。いつもの友人たちと一緒のこともあったし、黒崎の家族と一緒のこともあった。ふたりで暮らしはじめて住む場所も環境も変わったとはいえ、身に付いた習慣はそうそう変わらないものだ。
今年もきっと行くのだろう、と予定を入れていなかった僕は当たり前に頷いた。
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