花の香りが近づいてくると思っていたら、顔に降り注いでいた太陽の光が遮られる。
うとうととした微睡みが途切れ、サンズが顔を上げたそこには、白い百合の大きな花束を抱えたトリエルが驚いた顔でこちらを見下ろしていた。
黒いフォーマルなワンピース姿で、帽子についた黒いベールが木漏れ日を受けている。
「サンズィ!来ていたのね」
「…あぁ、トリィ。元気?」
「まあ、あなた、いくら今日が暖かいからってこんなところでお昼寝をしていたら風邪をひくわ」
「そうかな。ところでいま何時?」
「もう、おひるね」
一瞬の沈黙の後、顔を見合わせてニヤリと笑い合う。久しぶりに見たトリエルは、以前のどこか張りつめたものが解け、穏やかに見えた。
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