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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    palco_WT

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    神田×弓場
    https://twitter.com/tsunapal/status/1482615240986886145 のやつ~
    気が向いたら続きを書く~

    #かんゆば
    driedBeancurd
    #弓場拓磨
    takumaBowaba
    #神田忠臣
    tadanoriKanda

    殆んど奇蹟の如き 僥倖、と言ってしまっていいのだろうか。

    「……どうした、神田。上の空じゃねェーか」
     神田の唇のはざまから、ぬるりとふたりの唾液で濡れそぼった舌を引き出しながら、弓場が熱をこもらせた声で囁く。
    「弓場さんの舌が気持ち良過ぎて、ぼんやりしちゃってるだけですよ」
     トリオン体の時とは異なり、下がって乱れた前髪の向こうの夜色の瞳が神田を映す。そこある己の間の抜けた姿に、神田は苦笑しそうになる。
     ことこの期に及んで未だ、この状況を現実として受容しきれていない己に。
    (俺って意外に器が小さかったんだな)
    「初めてってェーわけでもねェのに、可愛げのあることを言いやがるな」
     くくくと喉を震わせ、弓場は「だったらもう一度だ」と親指を神田の下唇にあてがって、軽く開かせるとぬめる舌を内奥へと忍び入れさせた。
     亡父の設計事務所の残務整理を終えた、共同経営者でもあったインテリアプランナーの母が隣県の知人の事務所で働くことになったことをきっかけに始めた一人暮らしももう馴れたアパートで、弓場と三回目になる接吻を交わしながら、神田はくすぐるように髪をまさぐる彼の指にときおりぞくりと体の奥に潜んでいるものを呼び起こされそうになっていた。
     ありていに言ってしまえば、キスの先にあるものに繋がる、官能と期待だった。
     重なり、離れ、再び求めあい、浸食する。
     口腔だけではなく、もっと深い部分までつながりたい。そのいろを味わいたい。
     この人がどんな顔で俺を受け入れてくれるのか、知りたい。
     俺が三門ここから離れる前に。
    「どうする、神田。……そろそろ、に進むか?」
     まるで、そんな神田の腹の底を読んだかのように、隊長でもあり先輩でもある男は尋ねる。
     口に出して聴くのも野暮な話だがな、と僅かばかりの苦笑を繋げて。
    「弓場さんがいいなら」
    「……もうちっと図々しくなっても構わねェんだぞ、神田」
    「そんなの無理ですよ。あんたとこうしてられるのが望外のコトなんですから」
    「可愛いこと言うんじゃねェよ、ったく」
     弓場は換装体では決して見せないほのかな微笑みを浮かべると、神田の頬を両手で手挟むと顔を傾けてより深いキスを奪いに来た。

     きっかけなんて今にして思えばたいしたことはなくて、それだってひとつ掛け違えばまったく別の結果になっていただろう。

     おめェーは好きな奴はいるのか。
     そう聞かれたのがもう一月ばかり前のことだった。
     シーズン終わりに王子たちの独立を控え、学業と任務とで多忙な中、時間を見つけ入隊時や訓練のログに目を通し、
    ランク戦の現場に足を運び、新生弓場隊に招くべき新たな隊員を見定めていた、そんな時期のことだった。
    「……なんですか、唐突に」
     神田はとうに弓場への恋心は自覚していて、だからこそ、残酷な質問だな、と思った。いや、残酷と言ってしまうのは誹謗だろうともすぐに翻した。
     何しろ神田はおのれのよこしまな情など、決して弓場に悟られないように尽くしてきたのだから。
     ここを去るその瞬間まで、彼にとって一番の部下であろう。それでいいじゃないかと、ずっと自らを諭すように言って聞かせてきた。
     そんな中での弓場からの問いだった。
    「中央オペレーターに、菅井ってェのがいるだろ」
    「ええ、最初はもう解散した井上隊で銃手やってた」
     二十歳前にしては珍しくトリオンの急激な減衰が生じ、前線で務めるには難ありと判定はされたものの、それでもボーダー隊員として戦うことを諦められず、入隊時に適性ありとされていたオペレーターに転属したはずだった。
     ポジションが同じで、中学までは六頴館ということもあって弓場とは今でも交流があることも知っている。
    「あいつがな、おめェーに付き合ってる相手はいるかって聞いてきてな」
    「へ」
    「休講で空きコマができちまって、ちょいと興味があった講義にもぐりこんだら菅井がいたんだ。で、まあ、どうせだからって昼飯を一緒に食うことになって、そしたらそんな話になった。で、どうなんだ? もし、あいつがおまえに交際のひとつも申し込んできたら」
     そんな話になった、と言われても。
     他人から好意を寄せられることは正直なくもなかったし、よほどたちが悪いものではない限り悪い気はしなかった。
     だが、それをよりによって、思い人から聞かされてしまっては、高校生にしては人格ひとが出来ていると言われている神田といえどもいい気分ではなかった。
    「……弓場さん、頼まれたんですか。……その、俺との仲介を」
    「されてねェよ。ただのお節介だ」
     視線をタブレットに落としたまま、弓場はそう告げる。
    「なんで」
    「こんだけいい男に、多少の人生の花があったって悪かねェーだろうと思っただけのことさ。ま、おめェーにちゃんと意中の相手ハナがあんならこの話は忘れろ。……ああ、この中学生の攻撃手はなかなかいいものを持ってるな、見てみろ、神田」
     タブレットの画面を操作しながら、顔を上げた弓場は、ようやくじっと自分を見据えるようにしていた神田に気づいたようだった。
    「……忘れませんよ」
    「ん?」
     だったら、と言いかけた弓場の言葉の先を封じるように神田は言葉を継いだ。
    「でも好きな人はいます。俺が好きなのは、弓場さんですから。よりによってあんたからそんなこと言われたこと、忘れられるわけないじゃないですか」
     突然の神田からのカミングアウトに、即断即決を常とする弓場とてとっさに返す言葉もなく、星のない夜空を封じたような瞳をかすかに見開いた。
     動揺していたのは神田もだった。まさか、こんな形で吐露してしまったことに。
    (……俺もまだガキってこと、か)
     九州まで持っていくつもりだった気持は、あっさりと暴露され、地に落ちた。
    「……そうなのか」
     秒針が一周するほどの間の後、ため息のように弓場の声がこぼれた。
    「そうですよ」
    「そうか」
     一見強面の弓場だが、人の好意を無碍にするような情に欠けた人ではないことは分かっていた。とはいえ、その短い一言だけでも神田は安堵した。報われることはなくても、否定されることはない、と。
     とはいえ、一抹の寂しさがないと言えば嘘ではあったが。だから。
    「だったら付き合うか?」
     そんな言葉が弓場から返ってくるなど、少しも期待――いや予想していなかった。
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