僕のカガリ!!オーブ官邸は慌ただしさに包まれた。代表首長のカガリの執務室の窓辺が開け放たれて、そこに白い機体、フリーダムがいる。
フリーダムを背にしながら、バルコニーでカガリは?マークを浮かべてキラの腕の中に居た。目の前にはアスラン含めオーブ国の重鎮たちと一触即発状態だ。
アスランがゆっくりと口を開く。
「キラ・・・カガリを返してもらおうか?」
キラは自分の髪に顔を埋めて愛しそうにキスを繰り返していたが、顔を上げると「い・や!」と言った。
アスランの目が驚愕に見開かれる。カガリにしても同様だ。キラは抱きしめる力を強める。
「カガリは僕のだよ!!誰にもあげない!!」
「キ・・・キラ・・・嬉しいがそれは・・・」
思わぬキラからの熱烈な独占欲にクラクラしてしまうカガリだが、更に衝撃的な事が起ってパニックに陥る。
キラが突然カガリの耳をハムッと噛んだのだ。ビクリっと跳ね上がってしまう。みんなの目の前で胸まで揉まれて・・・これじゃバレバレじゃないか・・・?
「僕たち付き合ってるんだ。邪魔しないでよ」
「キ・・・ラ・・・」
甘い声が漏れそうになった時、唇を塞がれて頭がチカチカしてしまった。
吐息をこぼすことも許されず呼吸が出来なくて腰が砕けていく、意識が飛んで行く。
最後に見えたのはキラが満足そうにペロリと舌をしまう所だった。
アスランの「キラーーーーーー!!!」という怒りの声も、周囲のどよめきも聞こえた気がする。
(なんだ・・・一体・・・キラが独占欲丸出しで、皆の目の前で私にあんなことするなんて・・・)
(・・・夢だ、きっと夢なんだ。だってキラはいつも私の事優先で、優しくて・・・)
(それに私たちは姉弟だから、関係がバレるようなことする訳がない・・・)
頭の中がどんどんと冷静さを取り戻していく。
そしてすうっと目が覚めた。自分はベッドで眠っていて、やはり夢だったんだと思った。
「な・・なんて夢を見てしまったんだ私は・・・!!!」
望んでいた事なのかと恥ずかしさにポカポカと頭を叩いていると、ガチャっと扉が開いた。顔を覗かせたのはキラで、起きてるのを確認してニッコリと笑う。
いつも通りのキラに、変な夢を見ていた事が恥ずかしくなってカガリの顔が赤く染まる。
「カガリ、熱でもあるの?大丈夫?」
「いや・・・変な夢を見てな・・・」
「・・・そう」
そういえば、と思いいたる。今いるのは見慣れぬ部屋で、窓から見える風景は海辺らしいのが判るが。
「ここは何処だ、キラ?・・・それに、他に誰かいるのか?」
その問いに、キラはカガリのベッドサイドから身を寄せる。ギシっとベッドが鳴った。キラの顔がすぐ間近に迫って、艶然と微笑みを浮かべる。鼓動がドキンと昂った。
「ここには僕たちしかいないよ?場所はーーーー何処だろうね?」
「アスラン殿!!!これは・・・これは一体?!!」
飛び立っていったフリーダム。弟に攫われた代表。大慌てになるオーブの官邸。
アスランは比較的笑顔で全員を振り返った。苦手なんだこういうのは・・と思うが仕方ない。
「大丈夫です!今日はエイプリルフールですから!!!」
その一言に皆が「おおーーーー」っと納得したように安堵の表情を浮かべる。
「そうだと思ってましたとも!!まさかキラ殿が・・・全く驚きましたよ」
「ええ・・・迫真の演技でしたわ」
「はは・・・は・・」
笑ってごまかすしか出来ないアスランであった。
そして側近たちが今日の仕事内容の変更を進める中、そういえばとアスランに問いを投げかけた。
「代表とキラ殿はどちらに行かれたんでしょうな?」
空を見上げると薄い色の青色が見える。アスランはボソリと答えた。
「さあ、何処に行ったんでしょうね?」