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    hanten102

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    hanten102

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    黒バス腐(赤黄)彩る世界*「彩りのない世界」という話の番外編。高校一年のウィンターカップから付き合い出した赤黄が、互いの立場を慮って別れを選ぶ話。切な目になってると思います。「彩りのない世界」を読まないと判らない不親切な作りです、スミマセン。モブが出張ります。赤司君の婚約者が出てきます。

    #黒バス腐(赤黄)

    彩る世界(赤黄)君が居たから色めく世界。


    「あーいたいた赤司っち!!みんなで花火するんスから!!一人だけ帰らないで欲しいっス」
    帰ろうとしていたのがバレて、黄瀬に腕を引かれて歩き出す。
    中学二年の夏、お祭りに行った時の話。レギュラーの皆と桃井が居て。変な事件にも巻き込まれたが、結局最後手持ち花火をして遊ぶ事になったらしい。
    浴衣姿の黄瀬は、軽やかな足取りで自分を連れて行く。
    ふとその足が止まった。にこやかに屋台の店員に声をかける。
    「はいっ・・・赤司っちにも」
    「・・・なんだこれは?」
    「かき氷っスよ・・・食べた事ないんスか?」
    「祭りに来たのは初めてでね」
    シャリシャリとした氷の感触がしてすぐに溶けて行く。イチゴ味らしいそれは、いつも赤司家の食卓で食べている物と比べたら劣る物だと思っていたが・・・。
    「ううう頭キーンとして来たっス」
    「そうなのか?面白いね」
    「交換してみるっスか?」
    「・・・いいのか?」
    黄瀬が頭を抱えながら自分の食べていたレモン味のかき氷を渡す。食べるのに一瞬躊躇した。人の食べ残しを食べるなど・・・と、父には叱られるだろうか?だが、少し反抗してみたい気分だった。それに、なんだか心地よかった。黄瀬と共に夏祭りを楽しんでいる自分がくすぐったかった。
    「赤司っち・・・すっごい色の舌してるっスよ?!!」
    「・・・?!!嵌めたね?」
    手鏡で見せられた自分の舌は赤と黄色が混ざった色になっていた。黄瀬が満面の笑みを浮かべるので、赤司は膨れた顔からすぐに一緒になって噴き出して笑ってしまった。
    ひとしきり笑った後、花火をしに行った。みんな自分達を待ってる筈だから。


    高校2年の夏休み。ジャバウォックとの激戦の後、みんなで花火大会に行った。
    「おいテツ・・・赤司と黄瀬がいねーんだけど?」
    「・・・はぐれちゃったみたいですが、大丈夫です。僕の知ってる所で待ち合わせしてますから」
    後で合流しましょう、と言った時に真っ暗な空に火の華が咲いた。
    誰も来ない場所で、二人っきりでそれを見上げながら、赤司と黄瀬は自然と口づけを交わしていた。花火が終わるまでの時間、二人だけの空間。空に咲く眩しい光の流星を浴びて、何度も口づけを交わしてクスっと笑った。
    花火が終わって、帰り道、黒子たちとの合流地点に行くまでの間。はぐれないようにと赤司の服の裾に掴まっていた。
    そこに、声がかかる。
    「おーい・・・黄瀬!!お前も来てたのかぁ?!!」
    「あっ・・・」
    パッと手を離した。名残惜しい気持ちがないわけじゃなかったが、それ所じゃなかった。
    「そっちこそ・・何してるんスか?」
    「言うね~・・・あれ?赤司じゃん?何?二人で来たの?」
    「キセキのみんなと・・・・」
    黄瀬とその相手が会話するのを聞きながら、赤司は青ざめて行く自分の心を平穏に保とうと表情に出さないように必死だった。
    帝光時代のただの元クラスメイト・・・それは判っている。嫉妬、しないわけでもない。でも違う。それとは違う。
    (見られてはいけない)
    (知られてはいけない)
    警告のように鳴り響く。黄瀬はモデルをやってた程の有名人で、彼の負担になり得る自分という存在を。自分の事はどうでもいい。どうにでもなる、と思っていたがー。
    「ね?赤司っち?」
    そう言って笑って自分にも話を振って来る恋人に、赤司はただ「ああ」とだけ返した。気のない返事に黄瀬が軽く首を傾げた。元クラスメイトの少年は「二人してモテるくせに女っ気ねえの~」とだけ漏らして去って行った。その言葉にまたツキリと胸が軋んだ。


    ティーカップを下ろした仕草は可憐の一言で。仕草一つとっても洗練されている事が判る。清楚なワンピースの似合う、長い髪の少女。自分の真向いに座ってる彼女を見ながら、赤司は息を一つ吐いた。
    「征十郎さんから誘って頂けるなんていつぶりでしょうか・・・」
    「そうかな?社交界での付き合いではいつも一緒だったけど」
    父に出るように言われるパーティではいつも彼女が赤司に連れそうのが通常だった。
    行く行くは彼女と結婚するのだと、彼女自身も赤司家に嫁ぐためにこれまでの一生を捧げて来た。勉学や習い事などを詰め込まれ休む間もなかっただろう。多分自分と同じように育って来た、彼女を憂えないわけでもない。
    「征十郎さんは・・・最近変わりました」
    「俺が?」
    「・・・とても、温かくなりました」
    「・・・仲間たちのお陰だろうね」
    「そうです私、バスケの試合を観に行きました。征十郎さんの試合を」
    他愛の無い会話をする。心は此処にはないのだとは告げれないまま。
    どうしてだろう?彼女を愛せれば一番良かったのに。
    最初から、彼女だけが色をくれていれば良かったのに。
    黒い色になってしまった。心をゆっくりと沈めていく。胸の内にある底に。
    「・・・そういえば、どうして今日はこちらでお茶をすることに?赤司のおうちではいけなかったのでしょうか?」
    「思い入れがある場所だから・・・」
    「はい?」
    「よく、友達と待ち合わせした場所なんです」
    「まあ!それでは、また来ましょうね。私も紹介して欲しいです」
    「・・・もう、二度と来ない事にしてるので」
    残念がる彼女には言えないし、言わない。
    サヨナラを言う時期が来たのだと思った。外ではセミが鳴いている音がする。7日しか生きれないと言うのと、7日も生きれると言うのとでは意味が異なる。
    自分は多分後者だったのだ。幸せだったのだ。


    「なあテツ・・・なんで黄瀬と赤司は飲み会にも来なくなったわけ」
    「・・・青峰君はたまに鋭いですよね」
    「二人共忙しいからでしょ~」
    「黄瀬は今は飛ぶ鳥を落とす勢いで芸能界を駆け上がっているし、赤司は父親の跡を継ぐために今政財界で戦っているのだよ」
    「・・・判ってるけど、ちょっと・・・寂しいね・・・」
    桃井が呟いた言葉に、みんな顔を突き合わせて溜息を洩らした。
    花火でもしようか?なんて誘ったら、来てくれるだろうか?
    昔のように。
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