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    pk_3630

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    pk_3630

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    昨夜の癖友のお話(半額シール貼られたうずらの卵)からお借りした現代AU曦澄
    注意 江澄が卵産んで生計立ててる(成人向け描写はないです)
    曦がその卵買ってるし食べてる
    途中ちょっと江澄が可哀想かも
    細かいことは気にしない方向け

    卵産む江澄と買いに来る曦臣「また売れてない…」
    江澄はうずらの卵ほどの小さな卵が入ったプラスチックのパック容器にシールを重ねて張った。
    『半額』
    黄色と赤の目立つシールを張るこの瞬間は、どうしようもなく惨めで恥ずかしい。悔しくて悔しくて、唇をきゅっとと結んだ。

    江澄は卵を産み出せる人種だった。江澄が産む卵は小さいけれど味も栄養価も抜群の卵であり、雲夢卵という名でブランド化されていた。
    養育され、ただ卵を生み出している生活に始めは不満や不安はなかった。だが、食べるものや行動にいちいち制限を付けられる窮屈な生活は次第に江澄を追い詰めていった。その厳しさが江澄のためだったなら、多少辛くても耐えられたのだろう。しかし、産み出す卵の価値を上げるための厳しさだと、いつの頃からか気づいてしまった。産み出す卵の質や量が少しでも落ちれば、容赦なく叱責を受ける日々。卵にしか目を向けられず、江澄自身のことを誰も見てくれない環境。江澄はいつしか、ストレスで卵を産みづらくなってしまった。

    「迷惑をかけるから、ここを出ていきます」

    そう言ってもケアを受けることも、引き留められることもなかった。
    それが自分の価値なのだと、江澄は俯きながら出ていき、縁もゆかりもない土地に移り住むことになった。

    もらった退職金でしばらくは生きていけるだろうが、やはり働かなくてはどうにもならないと江澄は自分を奮い立たせた。
    結果的に、環境がガラリと変わり、一人でゆっくり過ごせる時間が増えたのが良かったのだろう。毎日卵を産み出せるようになるのに、そう時間はかからなかった。

    江澄は早速近くのスーパーやデパートに売り込みにいった。
    「雲夢卵を産み出せるの?」
    「はい」
    「いいよ。じゃあ、明日から納品してもらえる?」
    「いいんですか!?」
    「こっちではまだ珍しからね」
    幸運なことに、緊張しながら出向いた先では、とんとん拍子に話が進んだ。
    産み出した卵の売り上げで、その日その日に報酬を貰い生計をたてた。卵が現金に変わる度に、己の価値を肯定される幸福感に浸り、初めて得た自由な日々を謳歌していた。が、それもそう長くは続かなかった。
    不況の煽りを受け、納品していた店が近所のスーパー1件を除き、次々に閉店してしまったのだ。
    産み出した卵は全てスーパーに売りに言ったが、他の大きくて安価な卵の方が圧倒的に需要があった。江澄の卵は売り場の端に配置されるようになり、今や閉店近くなって半額のシールを張らなければ、売り切ることが出来なくなってしまった。

    「はい。今日もお疲れ様」
    渡された封筒の薄さに江澄の顔が暗くなった。
    この土地に来た当初に比べ、報酬はずっと少なくなってしまった。カツカツの生活に、不安とストレスが襲い掛かり、ここ数日は卵を産み出すのも時間がかかり、辛くなってきた。
    「また、明日持ってきます」
    「そう?まあ、頑張ってね」
    スーパーの社員は売上表を見ながらシステムに数字を打ち込むのに夢中で、江澄には目もくれなかった。
    寒空の下、一人アパートに戻る道すがら、キラキラと輝く街の灯と明るい人の声がどうしようもなく江澄を辛い気持ちにさせた。


    「こんなに売れ残ってるのか」
    いつも通り日が落ちてから重い足取りで店に向かうと、納品した卵の半数が棚に陳列されたままだった。周囲の卵は順調に売れていたり、まだ日持ちするものが大半だった。半額シールが貼られるのは、また自分の卵だけだ。
    (もう今月は大分生活が厳しいのに…どうすれば)
    見えない将来に、明日も売れ残るだろう現実に、江澄の胸は押し潰されんばかりだった。
    小さく震える手でシールを貼ろうとした、その時……

    「あった!ようやく見つけた」

    江澄の横からすっと手が伸び、卵のパックを掴んだ。
    「へ?」
    1パックだけがと思いきや、あっという間に次も次もとパックを手に取り、籠に入れていくではないか。
    「おい」
    「はい?」
    「今、シール貼るところだったんだ。ほら、籠の中の卵も貼ってやるから寄こせ」
    「えっ!?そんな、とんでもない!せっかく探し求めていた卵が手に入ったのですから、定価の金額をお支払いさせていただきます」
    変わった人だと思ったが、それ以上にこの場にそぐわない見た目と恰好に度肝を抜かれた。オーダーメイドだろうかと思う程シルエットが美しく上質なスーツを纏ったその人は、映画や雑誌から飛び出てきたのだろうかという程に顔立ちもスタイルもずば抜けていた。
    「ずっと探していたんです」
    「は?」
    「この雲夢卵、前はデパートで売っていたので見つけ次第買っていたんですが。閉店後はどこに行っても、見つけられなくっしまって…。部下から偶然、このスーパーで売っていると聞いて、慌てて来たんです」
    「そ、そうなのか?」
    「本当に売っていたので安心しました。明日以降も売っていますよね?」
    「あ、ああ。そうだな」
    「よかった」
    ふわりと花が綻ぶように笑うその人は、とても柔らかな優しい雰囲気を纏っていた。あまりに綺麗な顔で微笑みかけられたので、つい江澄も小さく笑い返してしまった。
    結局、売れ残っていた卵はその人が全て籠に入れていった。おかげで、久しぶりに俯かずに帰り道を歩くことが出来た。
    「明日も買ってくれるのか…」

    それからというもの、その男は連日夜になると売れ残った卵を買いに来た。もう今夜はこないだろうと、シールを貼ろうとした時に駆け込んで来て、「待って!」と腕を掴まれた時は、驚きと僅かな嬉しさで胸がどきどきした。
    もうそろそろシールを貼るか、もう少し待つか。シールを手に売り場をウロウロしていると、自動扉が開き、冷気と共に小走りで男が入って来た。
    「ああ、良かった。今日もまだ有った」
    「俺の卵なんてほとんど売れないんだから、そんなに走って来なくても大丈夫だ」
    「そんなことないですよ。この卵を食べて以来、私は他の卵が味気なくて食べられなくなってしまった程なんです。それくらい味が全く違いますよ」
    「そ、そんなことはないだろ」
    「いいえ。本当に美味しいんです。幸せの味がします」
    江澄は頬が緩みそうになるのを必死に堪えた。誰かにそんなふうに褒めてもらえるなんて、初めてのことだったからだ。卵を評価されただけだと分かっていても、どうしようもない程に嬉しさが込み上げた。
    「それに、毎日あなたに会えるのも幸せですしね。江澄」
    夢心地に浸っていたところに、突然名前を呼ばれ、冷水が背中をつたったようにビクッと身体を震わせた。
    「何で俺の名前を知っている!?」
    「パックに誰が産んだのか名前が書いてあります。あなたは先程、『俺の卵』と言いましたから」
    しまったと思った。この男のおかげでようやく生活が安定してきたところだったのに、こんな男が産んでいたと分かれば、気持ち悪がってもう買ってくれなくなってしまう。江澄は、明日からまた半額のシールを貼る生活に逆戻りすることを想像し、寒気が走った。
    「江さん?大丈夫ですか?具合が悪いのですか?」
    「いや……何でもない」
    「あの、江さんがよろしければなんですが……」
    「どうした?」
    「江さんの卵、直接私に売ってもらえないでしょうか?この店での金額の3倍、いえ江さんが提示された金額をお支払いします」
    「は?そんな…あなたにとって何の利益にもならないだろうが!?」
    「いいえ。私は毎日、江さんの卵が売り切れてしまわないかと不安なんです。少なくとも、その不安から解消されます」
    (この人の頭はどうなっているんだ!?まさか自分の卵はそうまで美味しいのだろうか。いやそんなはずはない、そんなに美味しければもっと売れていておかしくない)
    突然の申し出に江澄は混乱した。中々提案を受け入れることが出来ずにいたが、目の前の男は頑として譲らなかった。「江さんに『はい』と言ってもらえるまで、安心して眠れません」とまで言われ、見た目に反した子供っぽさについつい笑ってしまった。
    「江さん、どうか『はい』と言ってください」
    「仕方ないな。途中でやっぱり止めたと放り出さないなら、しばらくはあなたにも売ろう」
    「本当に!?ああ、良かった。では、明日から私の家にも納品をお願いします」
    「江澄でいいぞ。江さん呼びは慣れてないんでな」
    「ありがとうございます。そうだ、私の名前を言っていませんでしたね。私は藍曦臣と申します。良かったら受け取ってください」
    差し出された名刺は、江澄でも知っている大手企業の名が記載されていた。しかも名前を見れば、彼はおそらく創業者一族の者だと察することができた。
    (俺とは天と地ほどに差がある人だったんだな)
    上質なスーツに洗練された所作の曦臣、一方毛玉だらけのジャージを着て半額シールを持った江澄。
    先程までの温かな思いが、急に凍てつくように冷えたのを感じた。
    「なんで…」
    「はい?」
    「なんで、あんたみたいな上等な人間がこんな庶民スーパーに来るんだ。なんで俺の卵なんて買うんだ。他にいくらでも高級なものを買えるだろうが」
    「そんなことはないですよ。私はこの美味しい卵がいいんです。他の卵では駄目なんです」
    「嘘吐くな!誰からも見向きもされなくて、半額にしてやっと売れるかどうかの卵なんて、美味しいわけない!毎日売れ残ってて可哀想だから、俺へのお情けで買ってただけだろうが!」
    「江澄!?何を言っているのです。私は嘘はつきません!」
    「もう二度と買いにくるな。さっきの話も無しだ!あんたに食べてほしくない」
    江澄は半額シールの束を地面に叩きつけ、振り返らずに自動扉に向かって走った。その日の報酬を受け取ることも忘れ、ボロアパートに逃げるようにして帰った。寒い部屋で布団に包まり、名を知ったばかりの曦臣の優しい顔を頭から消し去るように目を強く瞑った。

    翌日も江澄は卵を納品した。そして夜になり店の棚を覗くと、いつも通り売れ残っていた。いつの間にか隣には江澄の卵より安価な雲夢卵が配置されており、そちらは完売しているようだった。
    (そろそろ曦臣が来る時間だ)
    僅かでもそう期待した自分を恥じた。昨夜自分が曦臣に何を言ったか、もう忘れたのかと心の中で叱責し、惨めな思いで半額シールを貼った。
    閉店まで店で待機し、時折売り場を覗いたが、この日は結局卵は完売しなかった。
    江澄は自分の卵を自分で食べることはしない。だから、売れ残った卵は自ら破棄しなければならない。
    頑張って産み出した卵、曦臣が「幸せの味がする」と微笑んでくれた卵をゴミ箱に捨てなければならないのだ。

    グチャッ…

    青いゴミ箱に他の残飯達と一緒に廃棄され、割れてしまった卵。
    江澄は今までで一番暗い顔をした。


    次の日、江澄は苦しみながら卵を産み、下腹部を擦りながら店へ納品した。また夜に来た時、どれ程売れ残っているだろうかと考えれば、胃がせり上がるような気持ち悪さに眩暈がした。社員の善意で仮眠室を使わせてもらい、そこでしばらく横になった。

    「ああ、良かった。今日もまだ有った」
    曦臣が小走りで駆け寄って来て、微笑みながら卵のパックを手にしている。その光景に良かったとほっと息を吐く。
    「曦臣、買いに来てくれたのか」
    「もちろん。江澄の卵、とても美味しいですから」
    「その…曦臣。この間は悪かった。あんなこと言って」
    曦臣は相変わらず笑っている。しかし、何か言っているのに急に聞こえなくなった。それどころか、だんだん曦臣が遠ざかっていく。
    「曦臣?曦臣!?」
    魘された自分の声で目が覚めた。

    寝汗で冷えた身体を震わせ、売り場に行くと卵は全く売れていなかった。それにも関わらず、時計の針はもう閉店間際の時間を指している。
    もう今更半額のシールを貼っても間に合わない。
    江澄は、閉店の音楽を聴きながら自動扉をぼうっと眺めていた。


    次の日も、そして次の日も似たような売れ行き。そして相変わらず曦臣は来なかった。
    江澄は半額シールが貼られた卵を持って、ゴミ捨て場に向かった。歩きながら、これからの事を鈍った頭で考えていた。
    もう一度、養育されていた場所へ戻るのか。それとも、新しい土地に行くのか。どちらにせよ、もうこの場所に留まるのはやめようと思った。曦臣が「幸せの味」と笑ってくれた顔を思い出しながら、誰かに必要とされた幸福を味わった場所で生活するのはあまりにも苦しかったのだ。

    グチャッ……

    卵をゴミ箱に落とした。一つ割れる度に、江澄の心もひび割れ壊れていく気がした。
    (これが全部割れたら、俺は死んでしまうかもしれない……その方が楽かもしれないな)
    江澄はいっそ一思いに、全て同時に割ってしまおうと思い立ち、パックを一つ一つ開けていった。

    「江澄!」

    突然、耳を貫いた声に身体がビクッと震えた。が、振り返ることは出来なかった。また自分の都合の良い幻聴かもしれないと思えば、曦臣がいない現実を直視するのが怖かったのだ。
    パックを持つ手が震えた。

    「江澄!!待って、割っては駄目!」
    綺麗な白い手が、江澄の冷たく乾いた手を握った。驚く程に熱い体温、そして熱い息が首筋にかかる。
    「曦…臣?」
    「ごめんなさい、江澄!急な出張で来られなくて。卵は家の者に全て買っておくように言っていたのですが、間違えて別の卵を買っていたようで………いえ、こんな言い訳をするべきではありませんね」
    曦臣は江澄の身体に体温を分け与えるように、ぎゅぅっと抱きしめた。全てが突然過ぎて江澄は混乱し、されるがままになった。
    反応がないことに焦ったのか、江澄の首筋に顔を埋めていた曦臣が顔を上げた。
    深い琥珀色の目に真っ直ぐに見つめられ、そこに移る呆然とした自分の顔を見てやっと江澄は正気になった。
    「……曦臣、怒ってないのか?」
    「怒る?何故です」
    「俺が酷いこと言って怒鳴ったりしたから」
    「気にしていたのですか?でしたら、私は江澄のことを怒ったりしていませんよ。むしろ、私が浮ついた発言をしたから不審に思われたと反省していたんです」
    「浮ついた?」
    「あなたに毎日会えて幸せだと言いました」
    「ああ、言っていたな」
    「あんな場ではなく、ちゃんと告白するべきでした。私は江澄に惚れていると。だから毎日会いたくて仕方なくて、誰にもあなたの卵を食べて欲しくないと思っていたと」
    「は…?……え?」
    「あのスーパーであなたを見かけた時から、気になって気になって仕方なかった。けれど、いきなり告白したら江澄に拒否されてしまうかもしれない。販売者と購入者として距離を縮めてから、好意を伝えようと思っていたんです。そんな自分中心で遠回りなことをしたが故に、江澄を傷つけてしまった」
    曦臣は江澄の手をとり、片膝をついて跪いた。
    「江澄、本当にごめんなさい。どうか私を許してほしい」
    「や、やめろ!スーツが汚れるだろ!」
    「江澄、どうか返事をして。許すでも許さないでも、あなたの気持ちを知りたい」
    「許すも何もない。俺は、曦臣を怒ってなんかいない。ただ、悲しかっただけだ。あなたが美味しいと言ってくれた卵を割るのが……」
    江澄の目が潤み、一筋涙が零れる。
    「曦臣だけが言ってくれたから……『幸せの味がする』って。俺でも人を幸せにできるのかって……だから」
    もう片方の目からも涙が零れそうになった瞬間、曦臣がそっと涙を舐めとった。そして、少しも離れていたくないとばかりに抱き締めた。
    「どうか、私に江澄を幸せにさせて。私とお付き合いを、……私と一緒に暮らしてほしいんです」
    「そんなにしなくても、卵なら毎日曦臣の家まで届けてやる」
    「卵の話ではなくて、江澄が必要なんです」
    「どういう意味だ、それ……」
    「江澄と一緒にいることが私の幸せという意味です。例え卵がなくたって、江澄がいてくれればそれだけでいいんです」
    これ以上泣いた顔を見られたくなくて肩口に顔を埋めている江澄の耳に、温かな吐息がかかる。そして「江澄は?どうしたら幸せになれるでしょうか?」と囁きが響いた。
    江澄が顔を上げ、そっと曦臣の背中に腕をまわすと、どちらともなく口づけを交わした。


    あれから、江澄は曦臣の家で暮らすようになった。
    江澄は不安が解消され、毎日曦臣からの愛情を受け取っている影響なのか、以前より少し大きくなった卵を産み出せるようになった。曦臣が言うには、味も以前より濃厚で美味しくなったらしい。
    曦臣が「私以外の者に食べさせないで」と強請ったため、スーパーにも他の店にも納品しなくなった。

    「阿澄」
    「またか。たまには自分で剥いたらどうだ」
    「阿澄にやってもらいたいんです」
    「仕方ない奴だな」
    江澄は茹で卵の殻を器用に剥き、口元へ運ぶ。曦臣は、指先までぱくりと口に含めて卵を味わい、幸せそうに笑った。
    「ふふっ、美味しい。幸せの味がします」
    「あなたは毎日それだな」
    「本当のことですから。私は阿澄といられて幸せです」
    「まあ、いいが。時間は大丈夫なのか。また車を待たせることになるぞ」
    「そうですね、そろそろ仕度をしようかな」

    朝食を食べ終わり、出かける曦臣を見送ると、江澄はある部屋へと向かった。
    曦臣が江澄のために用意してくれた、卵を産むための部屋。江澄が快適に過ごせるように配慮してくれた部屋だ。江澄はその部屋に、こっそりと曦臣の脱いだ服を持ち込んだ。ふかふかの寝具に横たわり、曦臣の香りに満たされながら下腹部を撫でる。
    「曦臣、俺も幸せだ」
    江澄は抱きしめた曦臣の服に顔を埋め、満ち足りた微笑みを浮かべた。
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    recommended works

    sgm

    DONEジェイド・ダイナスティの冒頭の御剣の術を見てたら、あれ、割と剣の上でいろいろできるでは?てなりました。
    夜空でかち合う曦澄。
     思い立ってしまってから行動に移すのは自分でも驚くほどに早かった。それほどまでに切羽詰まっていたということか、と三毒の先を姑蘇の方面へと向け、空高く飛びながら江澄は自嘲した。
     ここのところ忙しくて、三か月ほど藍曦臣に会えていない。仕事でも私事でも。文は交わしているし、三か月会えないことなど珍しくもない。そもそも金丹の力によって加齢は一般の人間よりも緩やかなのだから高々三か月会えない程度大したことではない。けれど、色々と重なった結果、江澄は疲れてしまった。
     金凌が蓮花塢に訪れていないため、手軽な癒しである仙子も吸えない。かといって仙子で癒しを取りたいから蓮花塢まで来い、などと金凌を呼び出すわけにもいかない。
     ならばせめて、顔見知りの商家で飼っている犬で癒しを得ようと視察ついでによれば、ちょうど今発情期で誰彼構わず足にしがみついて腰を振るので、頼むからそっとしてやってくれ。宗主の足に自分の犬がしがみついているのなど申し訳なくて見ていられない、と泣きつかれてしまっては無理に近づいて撫で繰り回すわけにはいかない。
     手頃な癒しを取り上げられ、仕事は山済みで、ついでに今日の夕餉で愛用の茶杯 3687

    takami180

    PROGRESSたぶん長編になる曦澄その4
    兄上、川に浸けられる
     蓮花塢の夏は暑い。
     じりじりと照りつける日の下を馬で行きながら、藍曦臣は額に浮かんだ汗を拭った。抹額がしっとりと湿っている。
     前を行く江澄はしっかりと背筋を伸ばし、こちらを振り返る顔に暑さの影はない。
    「大丈夫か、藍曦臣」
    「ええ、大丈夫です」
    「こまめに水を飲めよ」
    「はい」
     一行は太陽がまだ西の空にあるうちに件の町に到着した。まずは江家の宿へと入る。
     江澄が師弟たちを労っている間、藍曦臣は冷茶で涼んだ。
     さすが江家の師弟は暑さに慣れており、誰一人として藍曦臣のようにぐったりとしている者はいない。
     その後、師弟を五人供にして、徒歩で川へと向かう。
     藍曦臣は古琴を背負って歩く。
     また、暑い。
     町を外れて西に少し行ったあたりで一行は足を止めた。
    「この辺りだ」
     藍曦臣は川を見た。たしかに川面を覆うように邪祟の気配が残る。しかし、流れは穏やかで異変は見られない。
    「藍宗主、頼みます」
    「分かりました」
     藍曦臣は川縁に座り、古琴を膝の上に置く。
     川に沿って、風が吹き抜けていく。
     一艘目の船頭は陳雨滴と言った。これは呼びかけても反応がなかった。二艘目の船頭も返答はな 2784