Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    pk_3630

    @pk_3630

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 41

    pk_3630

    ☆quiet follow

    拗れ練習用に書いた現代AU 曦澄 第11話

    澄が曦に別れを告げられてから三年後のお話
    想・喪・葬・相シリーズの後編導入です
    メンタルどん底状態の二人なんでちょっと暗いです
    見合い相手泣かせる曦…

    想・喪・葬・相 11曦臣と別れて三年が経った。

    この三年、自分は何も変わっていなかった。
    任される仕事が増え、やり遂げる度に評価が上がって、昇進もした。その後しばらくして転勤があって、住まいが変わった。縁もゆかりもない土地だったから関わる人間も三年前とは皆違う。
    表面上は変わったことがたくさんあったように思うが、それらを遠くの景色でも眺めるかのような毎日だった。

    (どうでもいい)

    何に対しても興味も気力も湧かなかった。
    仕事が上手くいこうが、上司に嫌われ地方に飛ばされようが、出世コースを外れた俺を同僚達がどんな目で見ていようが、心がひくりとも動いたことはなかった。
    時間の流れに身を任せ、その日その日に与えられた物事をやり過ごす。
    ただ、それだけ。
    特段死ぬ理由もないから、今日も生活している。
    電池切れを待つ機械、それが今の自分だった。

    『ごめんね、阿澄』

    あの言葉は何よりの罰だった。
    罵倒され、軽蔑され、「もう顔も見たくない」と拒絶される。
    それが一番重い罰だと信じ込んでいたから、まさかその上があるとは思わなかった。
    自分の告白により、曦臣は彼自身を責めてしまった。紡ぎ出される言葉の数々に悲鳴をあげそうになった。

    「やめてくれ、悪いのは俺なんだ。曦臣は俺を罰する立場なんだ」

    そう言い縋ってしまいたかった。
    裁かれるべき者に謝罪し、「最低だね、私は」と暗い表情で目を伏せてしまった彼に、どんな言葉をかければ心を軽くしてやれただろうか。
    そのことを考えない日はなかった。

    「曦臣、今どうしているんだ」

    もう傷は癒えただろうか。あの数か月の歪んだ関係はもう過去のことだと切り離せただろうか。
    「最低だ」なんて曦臣に似合うはずがない卑下から解放され、以前と変わらない穏やかな笑みを浮かべられるようになっただろうか。

    曦臣が幸せでいること。

    最早それしか願うことはない。だが、その願いが叶ったかどうかを知ることは出来ない。

    (叶わない願いを抱え続けることが俺の人生だった。なんてくだらない人生だったのだろう)

    「曦臣」

    もう一度呟き目を閉じて、この日も終わりを迎えた。




    「曦臣、いい加減にしないか!」

    叔父の怒号が部屋に響きわたり、隣にいる弟が気まずそうに叔父を制止しようと手を宙に彷徨わせた。

    「相手の女性が泣いていたと苦情が入ったぞ!何を言ったんだ、お前は!」
    「何も。話すことがないので何も話さなかったまでです」
    「あの女性は昔からの取引先の娘だと言ったではないか!」
    「ですから先方の希望通り、仕方なく見合いをしました。そこでどう振舞うか、それは私の自由です」

    無表情のまま悪びれもしない曦臣に対し、藍啓仁はますます顔を赤らめ憤怒した。
    このまま役職を解かれるかもしれないとも思ったが、それならそれでいい。弟がきちんと跡を継いでくれるので、自分がいなくても何も困らない。

    変わりがきく部品。それが今の自分なのだ。

    叔父が何か言い放ち大きな音を立て出ていった。弟が歩み寄り、心配そうに話しかけてくる。

    「叔父上も暫く休養させたいと思ってああ言ったのでしょう。ここ数年兄上は働き過ぎでした。叔父上もそのことをひどく心配していたので」
    きちんと聞いていなかったが、どうやら私は休職扱いになるようだ。
    「すまないね、忘機」
    「いえ」
    「業務上困ったことがあればいつでも連絡しなさい」
    「…はい」

    身内の二人が心配してくれているとわかっているのに、それでも申し訳ないという気持ちは少しも湧いてこなかった。

    (しかし、仕事を取り上げられるのは困るな)

    何もすることがないとどうしても江澄のことしか考えられなくなる。
    どれだけ想っていても、もう関わってはならない。それが自分への罰であり、傲慢で勝手な自分から江澄を守る術だった。
    あの数か月、江澄を独占し束縛することに自分は仄暗い幸せを感じていた。羞恥に染まった顔を見る度、涙まじりの声で名を呼んでくれる度、充足感を得ていたのは紛れもない事実だ。

    (私は何て浅ましい人間なのだろう)

    江澄の一途な想いを受け取り恋仲になれば、間違いなく自分はまた支配しようとする。そして江澄は傷つけられても、側にいようとしてしまう。

    (こんな私を十数年も純粋に思い続けてくれた阿澄。大事な大事な幼馴染で、そして今や生涯唯一の人。彼にはどうしても幸せになってほしい。温かく優しい人からの愛情に包まれ笑っていてほしい)

    そのためには、自分のような化物は、彼自身にも彼の人生にも触れてはならない。

    「阿澄」

    彼は今どうしているのだろう。
    彼は不器用ではあるが情に厚い人だ。今頃、その魅力に気づいた誰かが側にいるのではないだろうか。

    (きっとそうだ。阿澄はその人の横で今度こそ幸せになっている)

    かつて自分に向けてくれた笑顔を思い出しながら、深いため息を吐いた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭🙏😭😭🙏💙💜🙏😭😭😭😭😭😭😭😭💙💜🐍🇪🅰®🇪©®🌱😿😭😭😭😭😭😭😭🙏🙏🙏🙏👏😭😭😭😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    sgm

    DONE曦澄ワンドロお題「失敗」
    Twitterにあげていたものを微修正版。
    内容は変わりません。
    「なぁ江澄。お前たまに失敗してるよな」
     軽く塩を振って炒った豆を口に放り込みながら向かいに座る魏無羨の言葉に、江澄は片眉を小さく跳ね上げさせた。
    「なんの話だ」
     江澄は山のように積まれた枇杷に手を伸ばした。艶やかな枇杷の尻から皮をむいてかぶりつく。ジワリと口の中に甘味が広がる。
    「いや、澤蕪君の抹額結ぶの」
     話題にしていたからか、ちょうど窓から見える渡り廊下のその先に藍曦臣と藍忘機の姿が見えた。彼らが歩くたびに、長さのある抹額は風に揺れて、ふわりひらりと端を泳がせている。示し合わせたわけでは無いが、魏無羨は藍忘機を。そして江澄は藍曦臣の姿をぼんやりと見つめた。
     江澄が雲夢に帰るのは明日なのをいいことに、朝方まで人の身体を散々弄んでいた男は、背筋を伸ばし、前を向いて穏やかな笑みを湛えて颯爽と歩いている。情欲など知りません、と言ったような聖人面だった。まったくもって腹立たしい。口の中に含んだ枇杷の種をもごもごと存分に咀嚼した後、視線は窓の外に向けたまま懐紙に吐き出す。
     丸い窓枠から二人の姿が見えなくなるまで見送って、江澄は出そうになる欠伸をかみ殺した。ふと魏無羨を見ると、魏無羨も 2744

    takami180

    PROGRESS長編曦澄13
    兄上、自覚に至る(捏造妖怪を含みます)
     姑蘇の秋は深まるのが早い。
     清談会から半月も経てば、もう色づいた葉が地面に積もる。
     藍曦臣は寒室から灰色の空を見上げた。
     彼の弟が言っていた通り、今年は寒くなるのが早かった。今にも雪が降りだしそうな空模様である。
     藍曦臣の手には文があった。十日も前に送られてきた江澄からの文である。
     まだ、返事を書けていない。
     以前は書きたいことがいくらでもあった。毎日、友に伝えたくなる発見があった。
     それが今や、書きたいことといえばひとつしかない。
     ――会いたい。
     顔が見たい。声が聞きたい。朔月に飛び乗ってしまいたくなる衝動が襲う。
     もしこの欲求をかなえたら、自分は次に何を願うだろう。
     彼が寒室に泊ったときを思い出す。あの朝、たしかに髪に触れたいと思った。そうして前髪に触れたのだ。
     許されるならば、額にも、まぶたにも、頬にも触れてみたい。
     もはや認めざるを得ないところまで来ていた。
     断じて、彼が言っていたような義弟の代わりではない。だが、友でもない。あり得ない。
     ため息が落ちる。
     何故、という疑念が渦を巻く。己の感情さえままならない未熟を、どのようにして他人に押し付け 1845

    mahoy_asa

    PROGRESS16年かけてくっつく曦澄。
    アニメベースで江澄が金丹を取り戻した後、傷が癒えるまで曦臣に匿われていた設定です。

    ここまでだと幸せじゃないので、16年後も書いて支部に載せたい。
    曦澄① 雲夢江氏が温氏に襲われて、町中に江晩吟の手配書が配られていた時、手負の江晩吟を匿ってくれたのは藍曦臣だった。温氏討伐を願う手負いの者たちを集め、山奥の隠れ家に匿う彼もまた雲深不知処を襲撃されたときに負った傷を癒している最中だった。

     江晩吟は金丹を取り戻した直後で、温氏を全て滅ぼすことに心血を注いでいた。どう復讐をすればよいか、そのために自分がすべきことを考えて、鍛錬をしながら過ごす。復讐という目標が江晩吟の生きる意味となっていた。
     それでいて夜になると、全てを失ったあの晩が夢になって蘇り、眠れなくなった。母や父の遺体が無碍に扱われる所を見ながら、何もできなかった。師弟たちが家畜以下の扱いを受け、山のように積み重ねられていた。助けることも、弔うこともできず、金丹を奪われて腑抜けになった。自分の無力さを知り、誰かのせいにしなければ立っていられなかった。同じように苦しんでいるはずの魏無羨に怒りを向け、心のない言葉で責め立てた。魏無羨が言い返してこないことに余計腹が立って、言うつもりのなかったことまで上げ連ね、その結果彼もいなくなった。
    6551

    不知火 螢。

    DONE以前、魔道祖師オンライン交流会5の展示作品の続きが一つ完成しました。
    謎時空の現パロで、藍曦臣がパティシエ、江澄が社畜してます。
    これから曦澄になる予定です。
    彼らがくっつくまでを書いていければと思っています。
    たくさん書けたらまとめてpixivでまとめます。
    作者がゼリーが好きなので、なんだか時間がかかってしまいましたが、楽しんでいただければ嬉しいです。
    めぐる綺羅箱*ゼリーの煌き
    忙しかった仕事も繁忙期が終わったことで落ち着いてきた。
    家に帰って冷蔵庫を開けたら、水と10秒チャージ系のゼリーしか入っていないことに気がつき、食べるものを調達しなければ何もできないことに気がついた。
    家の近くのスーパーに久しぶりに入った。
    なんとも言えないスーパーの寒さと、数の少なくなった野菜たち。
    ちらほらといる独り身であろう人。
    すぐに食べれるものをさがして惣菜コーナーに向かう。

    「あーーー。なんか肉。あと、酒買って行くか」
    ふらふらと歩いていたら、見覚えのある姿が見えた気がした。
    夜遅くだし、あの人ではないだろう。
    そう思って、酒を買いに行く。
    ジャックダニエルを手に取りつまみを探しに行く。
    途中、ゼリーが売っている場所を通った。
    4171

    refrain0411

    DONE魏無羨が居なくなって1年後くらい(藍忘機は面壁中。)
    曦臣→江澄の状態

    初参加です。1時間でまとめるのって難しいですね…
    何度も書きながら混乱して、お題に沿っているのかも怪しい気もする…💦
    1時間で描いたり書いたりされる皆さんを今まで以上に尊敬しました。

    誤字脱字もあるかと思いますが、とりあえずはこれが私の1時間の実力だと言うことで💦
    失せ物江澄は夜狩に来ていた。今回は雲夢と姑蘇の丁度中間地点で邪祟が現れたため両家に夜狩の要請があった。
    問題なく、夜狩は終わった。時々、鬼道を使う者と遭遇し奪舎されていないか紫電で確認するが、魏無羨の手がかりもなければ、奪舎されていた者もいなかった。
    今回の夜狩ではそんな鬼道の使い手すら見つからなかった。
    江澄と藍曦臣は宗主同士であり、夜狩の後に2人で話をしていた。
    地元の住民が助かりましたと、仙師に贈り物をすることはよくあることだ。
    今回はその贈り物が一風変わったものであった。

    「仙師様は、おみくじというものを知っておるかい?」
    「おみくじですか?」

    藍曦臣がお婆さんに話しかけられている。

    「占いみたいなものさ。これ、よく当たるんだよ。普段なら金を取っているんだが、仙師様達には助けられたからね、一つずつ持っていってくれ。私ゃ、他に食べ物や差し出す物が無いんで、貰ってくれるとこちらも嬉しいのさ。」
    1944