夏冷えとその温もりに「あぁもうっ、ちょっと待って!KK早く!!」
「わかってるよ!暁人、もう少し引きつけろ!」
「出来るならとっくにやってるよー!!!」
深夜、もう太陽の名残も跡形もない夜。じわじわと蒸すような熱帯夜が約束されたはずのこの場所はひんやりとした空気に覆われていた。
『きゃははは、きゃはは!』
『こっちこっち!』
「あぁ〜くそっ!ちょこまかと!!」
解体途中の廃ビルの中で暁人とKKはある存在をただひたすらに追いかけていた。
──その正体は、雪わらし。雪ん子ともいう子供の妖怪で普段ならこんな渋谷の街に現れるような妖怪ではない。それが数人もこんなビルの中でたむろして工事の邪魔をしているのだ。
夏場だというのに作業員の足元が凍りつく、霜で重機が動かない。そんなこんなで作業も中断してしまい依頼がこちらへと舞い込んできたというわけだ。
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