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    アカリ

    @VwX6yzNx3JMWcLN

    K暁の話その他小話とか絵置き場。

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    アカリ

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    素敵お題「初デート」書かせていただきました!付き合って間もない二人設定です。二人で名所デートしてほしい…
    #毎月25日はK暁デー

    #K暁

    それは青い春にも似て「………変じゃねえよな」

    日曜日の昼間、人通りがピークに達している渋谷駅前。待ち合わせのメッカにもなっているガチ公前にKKは所在なさげに突っ立っていた。
    行き交う人々を眺めつつ、彼等と見比べるように自分の着ている服を何回も確かめたりして我ながらとても落ち着かない。私服で誰かと何処かへ出掛けるといった事が久しく無く果たしてこの服装が最適解なのかもわからずさっさと答え合わせをしたくて堪らなくなっている。
    らしくない、と自分で自分に呆れてしまうが仕方がない。暁人が「もし良かったら今度の日曜にKKと出掛けたい」とそれはそれは遠慮がちに言ってくるものだからKKは二つ返事で了承してしまったのだ。
    一応自分と暁人は交際しているはずなのにデートらしきものをした事が未だになく──それに関してはKKは申し訳なさすら感じている。仕事が忙しい、なんて常套句どころか二人揃って忙しい日々だ。マレビト達は休みなんかくれやしない。
    そこに降って沸いた今日の休みである。「二人ともゆっくり休んで!」と絵梨佳が胸を張っていたのは今思い出しても口元が少し綻んでしまう(ほんの少し心配なのは秘密だ)
    そんな仲間の気遣いに暁人は便乗していいものかと考えあぐねていたのだろうが、コレに関しては自分から言ってやるべきだったなとKKは反省した。それ故に今日の初デート。暁人を心ゆくまで甘やかしてやろうと思っているのだが…。

    「──KK?」

    ぽん、と肩を叩かれてKKは振り返る。そこには少しだけ息を上がらせて「お待たせ」と笑う暁人が居た。

    「全然待ってねえよ」
    「そう…?なら良かった」

    暁人はKKが見たことのないジャケットにシャツ、パンツに身を包んでいて思わずそこに目をやってしまう。暁人も同じことを思っているのかKKの全身をじっと見回してから、互いに顔を見合わせてくすくすと笑って。

    「……なんか変な感じだね」
    「そうだな…昼間に私服で会うのもまだ無かったしな」

    付き合ってまだ日の浅い二人、こうして新しい一面に意識がいってしまうのが嬉しいやら恥ずかしいやら。思春期のガキか…とKKは内心呆れさえ感じてしまうけれど今はそれすらもまんざらでなく思えてしまう。
    …意外とこんな自分でも暁人との初デートに浮かれてしまっているようだ。

    「さて、どうする?今日はお前の行きたい所もしたい事も全部付き合うぜ」
    「えっ良いの!?」

    KKの言葉に暁人はぱぁっと表情を輝かせた。その笑顔の可愛さにKKはニヤつきそうになるのを必死に堪える。
    幸いにも時間はたっぷりある、ショッピングでも映画でもカフェでもゲーセンでもカラオケでもなんでも来い。初めてのデートは世代関係なく大概テッパンであると絵梨佳との会話で確信を得ているのだ。
    そんなことを考えながら、ん〜〜と頭を悩ませている暁人をしばらく見守っていると。

    「あのね、僕前から行きたかったとこあるんだけど…」



    * * *


    ありがとうございましたぁ、と威勢の良い声を背後にKKと暁人は店を出る。

    「あ〜美味しかったぁ!!KKのオススメなだけあるね、全部のメニュー食べたくなっちゃったよ」
    「そりゃ良かったな…」

    チラリとKKは店を振り返る。そこはKKが以前から通っていた中華料理店で、あろうことか暁人が行きたいと言ったのがこの店なのである。
    確かに時間は昼時だし暁人の腹の虫もタイミング良く鳴り出したのでじゃあ行くかと来たものの──はたしてこれで良かったものか、と少しだけ自問自答してしまうが。ラーメンセットに中華飯、五目焼きそばを頼んで美味しそうに箸を進める暁人を見ているとまぁいいかと思い直すことにした。

    「なんでここに来たかったんだよ、いつでも来れるだろ?」
    「だって夜遅くなると閉まってて行けなかったし…いつか絶対KKと来たいなって思ってたんだよ」

    ダメだった?などと無自覚の上目遣いで言われたらもう何も言えるはずもない。照れ隠しにくしゃくしゃと暁人の頭を撫で回すとわぁ、と声を上げて抵抗されてしまった。

    「ふー……さて。次はどうする?」

    まさかタピオカ飲みたいとか言わねえだろうなぁと少しだけ心配するものの、暁人は今度こそ決めあぐねるかのように腕を組んでうんうんと唸っている。

    「どうしようKK」
    「決まんねえか」
    「行きたい所ありすぎるんだよね」
    「…………そりゃあまた…」

    驚いた、暁人がそんなにアクティブ思考だとは。若いとやはり行動力も違うもんだなぁ…なんて思っていると暁人は指折りしながら行きたい所を声に出して上げていく。

    「えーと、まずカゲリエの展望台から風景眺めたいでしょ。それから河童ヶ池の遊歩道で散歩したいし歌川商店街で食べ歩きもしてみたいし…あと、夜になったら前にKKと話してたのんだくれ通りも行ってみたいかなぁ」

    空中庭園は流石にハードル高いよね、と暁人は屈託なく笑うが。

    「おい、それって…」

    もしかしなくてもそれは全部。

    「──そう。僕らがあの夜に行ったことある場所」

    KKの思いを見透かすようにニコッと笑って暁人は言う。そして少し眉を下げてKKに目線を合わせた。

    「実はずーっと思ってたんだ、またKKと来たいなって。でもあの時は非常時だったし…KKも幽霊だったしね?」
    「そりゃ、まぁそうだけどよ…お前はそれで良いのかよ」

    折角のデートであの日をなぞるようなことを、とKKは言葉を濁したけれど。

    「良いんだよ。だって僕の行きたい所は〈KKと二人で行きたい所〉なんだから。本当は昨日もずっと悩んでて、でも一つや二つに決められなくってさ……もしKKさえ嫌じゃなかったらなんだけど、…一緒に歩いてくれる?」

    そう言って暁人はまた遠慮を覗かせた目でKKを見た。
    ────そんなの、ノーと言える訳も言うつもりもなく。デートという概念を少し履き違えてたな、とKKは心の中で苦い顔をした。
    暁人を甘やかすのではなく二人で過ごすのが目的なのだ。デートというものは。

    「あたりまえだろ、何言ってんだ」
    「わ、いたっ」

    ぴしっと軽く暁人にデコピンしてKKは笑う。暁人のこの遠慮しがちな性格もいつかなんとかなれば良いがまたそれも愛しくて…惚れた弱みもなんとやらだ。

    「時間の許す限り行ける所全部行こうぜ……俺はお前が楽しければそれで充分なんだからよ」

    暁人は驚いたように少し瞬きをしてから、それはそれは嬉しそうに微笑んで「うん!」と元気よく頷いた。陽の下で見る暁人の笑顔はいつになく綺麗に見えてKKは思わず見惚れてしまって。
    ──…参ったな。
    俺ももう立派な大人であると自負しているものの、年甲斐もなくときめいてしまったこの感情に関しては言い訳のしようがない。それだけ自分が目の前の男、伊月暁人に惚れ込んでしまっているということだ。
    少し前までの自分なら想像もしなかっただろうに。

    「ほら、時間もったいないから行くぞ」
    「へ、あっ!?」

    ギュッと暁人の手を握る。今まで何度となく手を握ったことがあるというのに暁人はまるで初めてかのように顔や耳まで真っ赤にして狼狽えている。

    「何だ…どうした」
    「いや、その…まわりに人居るしそれに昼間だし…」
    「こんなに人の多い渋谷だぞ。いちいち誰も気にしてねえよ」
    「そ…そうなんだろうけどさぁ」

    まさかこんなウブみたいな事を言うとは思いもよらなかった。とっくにキスまで済ませといて今更何を言うのかとも思ったが。きゅっと暁人はKKの手を少し強く握り、困ったように笑う。

    「すっごくデートって感じがして、その…嬉しさと恥ずかしさでどうにかなっちゃいそう…」

    ゴメンいまの忘れて、なんて即座に暁人は慌てて誤魔化そうとするけれど。

    「暁人」
    「なに?」
    「……今日の最終目的地は俺の家でどうだ」

    悪戯っぽく笑ってそう言うと、ただでさえ赤い顔の暁人はさらに顔を赤くして「KK!」と咎めるような語気で俺の名前を呼んだ。…そのくせ握っている手は解こうともしないのでKKが指を絡めて繋ぎ直すとさらに慌て出す。
    ホント可愛くてたまんねぇな、俺の相棒兼恋人はよ。

    今日の渋谷がいつもより鮮やかに見えるのはきっと気のせいじゃない。こんな晴れやかな気持ちでこの街を歩くのは初めてかもしれないな。

    少なくとも今日という日を一生忘れることは無いだろう──とKKはそんな確信を胸に抱きながら、傍にある愛しさを引き寄せるようにぐっと手を引いて肩を寄せたのだった。


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