ぬいぬい2「ぬいぬい」
「そうなんだね」
「ぬぬい!」
「やってる、やってる」
昼下がりのアジトに、暁人と暁ぬいが楽しそうに談笑している。「ぬい」意外の言葉を発することの出来ない式神と会話が成り立っているのは、適合者だからだろう。畳の上に胡坐をかいた暁人が暁ぬいの話を興味津々に反応している。その様子をムスッとした顔で凝視している者たちがいる。KKとおじぬいだ。
「……」
「……」
椅子に座ったまま、暁人たちへと体が向け、テーブルを指で叩いているKKと、短い腕を組んでテーブルの上に立っているおじぬいはずっと沈黙している。穴が空くのではないだろうかと思うほど、凝視しているが、視線の先の一人と一体は全く気にしていない。
「…はぁ、そんなに暇なら、この資料の調査してきて」
作業が一段落した凛子がKKへと書類を手渡してきた。沈黙したまま、書類を受け取るとおじぬいを肩に乗せ、立ち上がる。大事な恋人が相手をしてくれないのだから、別の事で気を紛らわせる事にしたのだ。
「じゃあ、行ってくる」
「ぬい」
リビングを出ていこうとドアノブに手を回した。
「僕も行くよ!」
「ぬい!」
畳の上で談笑していたはずの暁人たちがKKたちの背後にいる。KKと同じようにぬいを肩に乗せ、置いてあったボディバッグを身についていた。
「あ”?」
「調査行くんでしょ?僕「駄目だ、これはマレビトの報告が上がってるから、ついてくるな」
「ぬ”い!」
険しい顔で振り返り、暁人の言葉を遮る。肩に乗るおじぬいも真剣な表情だ。
「KK!」
「駄目だ」
KKはきつく言い放つ。あの夜に二人、一心同体で駆け抜けたというのに、未だに過保護で、暁人が戦うことに悲観的だ。子供ではないのだからと、同行する度に進言するが、聞き耳を持ってくれない。
「お前は大学のレポートでもやってろ」
「それは終わってる!お願い!KK!後ろにいるから、前に出たりしないよ、ね、それなら良いでしょ?」
「ぬい!」
いつもなら、ここで引く暁人だが、今日は何故だかしつこい。
「ね、KKお願い…」
「ぬぃ…」
肩をすくめ、首を少し傾げる。垂れた眉毛に昔はやったチワワのCMが横切り、言葉に詰まる。
「……」
「けーけー」
甘ったる声で呼ばれてしまえば、没落するのは早かった。
「ーーーーっ‼くそっ、絶対前には出るな!」
「ぬ”いーーー‼」
歯を食いしばり、恋人の愛らしさに耐え、KKは暁人に背を向け、早歩きで玄関まで行ってしまった。
「…ちょろ」
「…ぬい」
KKの背中を見つめながら、ぬいと一緒なら簡単にお願いできるなと、口角を上げ、ニヤリとほくそ笑んだのであった。
「暁人、いくぞ!」
「はーーーーい♡」