さよなら東京タワー 365日の月日は想像していたよりも短かった。
暦としてはもう残暑の挨拶を述べる頃だ。だけど僕は生まれてこの方、八月の終わりに残暑を感じたことはない。現に、八月も下旬に差し掛かった今日の気温も三十度を超えて、アブラゼミの声は鳴き止むことを知らなかった。
肌を焼く日差しの下で、僕は手を合わせた。『伊月家』と彫られたまだ新しい墓石。この下には、父さんと母さん、それから一年前の今日に亡くなった麻里の三人が静かに眠っている。
二十歳を超えてから、一年経つのが年々早くなっていくように思う。あの日麻里を見送ったのも、未だに昨日のことのようだった。僕に生きてと託した麻里の声を思い出す。
大丈夫だよ麻里。俺は今、ここに生きている。だから父さんも母さんも心配しないで。
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