Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    TokageIppai

    @TokageIppai

    怪文書置き場です

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    TokageIppai

    ☆quiet follow

    #アミュエス
    ams
    #セブスト
    sebst.
    ##花の咲くころ、あなたと

    「私」と双剣双剣が宙を舞う。
    音もなく着地した小さな影が森の中を駆け抜け、魔物の群れに飛び込む。
    青白い光が一筋閃いた、
    と思った次の瞬間、魔物たちは両断されていた。
    それは、剣技というより剣舞と呼ぶにふさわしい、軽やかな動きだったけれど、
    手にした双剣以外には、何もかも───自分の感情さえ、捨ててしまっているように見えて。
    だから、気づいてしまった。
    ああ、この子はきっと、ずっと一人で戦ってきたんだろう、と。

           ***

     拠点へ帰り、寝床に入ったあとも、その少女のことが頭から離れず、なかなか寝付けなかった。彼女の戦い方は、明らかに常人のそれではない。熟練の冒険者でも、あれほど双剣を扱える人はわずかだろう。けれどもそれは、一人で戦うことを前提としているもののように見えた。協調性がないというわけでもなさそうだったが、仲間の動きを確認するよりも先に、敵の方へと体が動いている、といった風であった。そういう戦い方には、何よりも自分自身の過去に覚えがあった。
      (魔族へ復讐することだけを考えて、荒んでいた頃の自分と重ねるなんて、おこがましいかもしれない。でも、もしもあの時感じたことが真実なのだとしたら…)
    とにかく、朝がきたら彼女に会って、話をしてみよう。そんなことを考えていると、ようやく眠気がさしてきた。

     次の日。
     朝食を済ませ、拠点の周辺を探してみると、昨日の少女───エステアは、案外すんなり見つかった。
    「こんにちは」
     草むらに座り、ぼんやりと空を見上げていた少女は、そう声をかけられると少し驚いたように振り向いた。
    「あ…こんにちは。アミュレットさん、ですよね」
    「名前、もう憶えてくれたんだ。ありがとう。…隣、いいかな?」
     彼女は不思議そうな顔をしながらも頷いてくれた。早速自分も腰を下ろす。
     改めて観察してみると、思っていたよりもずっと幼く見える。自分と十歳は離れているだろうか。丁寧でこそあるものの、しゃべり方もそれ相応にあどけない。昨夜、両手に剣を持って魔物を次々と倒していった少女と、本当に同一人物なのかと疑いたくなってしまうほど、印象が違っていた。
    「昨日の戦闘、凄かったわ。強いのね」
    「いえ、そんな…ことは」
     言葉に詰まって、戸惑ったように俯向く。褒められることに慣れていないのかもしれない。
    「謙遜しなくていいのよ、本当のことなんだから。それにしてもあんな剣術、どこで身につけたの?」
    「えっと…ごめんなさい、分からないんです」
    「…どういうこと?」
    「わたし、三年前までの記憶がなくて…なぜ戦い方を知っているのか、自分でもわからないんです」
    「…!」
    「でも、アルフさんやリネットさんたちが一緒に調べてくれて、そのおかげで分かってきたこともあるんです。わたしの剣は多分、帝国で作られたものだから、わたしも元々は帝国にいたんじゃないか、って…」
    「そう…なら、私と同じだね。私も、帝国の出身だから…」
     ――そうか。捨てたんじゃない、 最初から持っていなかったんだ。
     思い起こすと、彼女の戦い方は熟達したものだったけれど、確かにどこか無機質なところがあった。敵への憎しみのような感情は一切見せず、ただ淡々と、まるでそれが自分に課せられた義務であり役割なのだと言うような…。
     急に、目の前の少女に対して、どんな言葉をかけたらいいのか、分からなくなってしまった。結局彼女は、自分が思っていたような――つまり、過去の自分と似たような境遇にはいなかった。どんな励ましも嘘くさくなるだけだし、安易に共感したところで、何の慰めにもならないのは目に見えている。
     けれども、なぜかその場から立ち去る気にはなれなかった。
    (私は…故郷を失った日、もう誰にもあんな思いはさせないと誓った。それが道しるべになったからこそ、どんなに辛くても戦ってこれた。でもこの子は、理由も分からないまま、一人で戦い続けてきたというの?)
    「ねえ…少し、近くを散歩していかない?」
     どうしたらいいかは分からない。ただ、この少女の隣にいることから逃げたくない、と思った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    TokageIppai

    DONE完成に何ヶ月かけてんのって感じですが前書いたお酒ネタを最後まで書いたやつです 推敲は未来の私がやるでしょう(なのでそのうちしれっと本文とかタイトルとか変えるかも)
    見ように寄っては際どいかもしれない
    おさけはおとなになってから それはいつもと変わらない夜、のはずだった。

    「ふぅ、面白かった……まさか連続パンの実消失事件の犯人が教頭先生で、禁忌の魔法を使って学園を丸ごとパンプディングの森に変えちゃう計画だったなんて」
     両手に持った本から顔を上げ、周りに誰もいないのをいいことに、エステアはひとりごちた。
     彼女が読んでいたのは、王都の子どもたちを中心に大流行している学園小説だった。魔力は低いが天才的な頭脳を持つ主人公が魔法学校に入学し、学園内で起こる難事件を次々に解決していくシリーズで、新刊が出る度に売り切れと重版を繰り返している。
     その人気ぶりは彼女の仲間たちの間でも例外ではなかった。もっとも旅の身では嵩張る本をそう多くは持てないから、新刊が出版されると何人かで共同してお金を出し合い、誰か一人が代表して買ってきて、それを皆で回し読むようにしている。今読んでいる第六巻は数週間前の発売日にイータが張り切って買ってきたもので、やっとエステアの順番が回ってきたのだ。物語自体に惹き込まれるのはもちろんだが、もう読んだ仲間と感想を話し合ったり、あるいはこれから読む誰かの反応を見守ったりするのが楽しみだった。
    9117

    TokageIppai

    MAIKINGアルコールが入って珍しくへにょへにょになったアミュレットとエステアちゃんの話。キリのいいとこまでかけたのでためしに進捗をあげてみます。
    色々ゆるふわ。ちょっときわどいかもしれない。
    アミュエスのゆるい話(書きかけ) それはいつもと変わらない夜、のはずだった。

    「ふぅ、面白かった……まさか連続パンの実消失事件の犯人が教頭先生で、禁忌の魔法を使って学園を丸ごとパンプディングの森に変えちゃう計画だったなんて」
     両手に持った本から顔を上げ、周りに誰もいないのをいいことに、エステアはひとりごちた。
     彼女が読んでいたのは、王都の子どもたちを中心に大流行している学園小説だった。魔力は低いが天才的な頭脳を持つ主人公が魔法学校に入学し、学園内で起こる難事件を次々に解決していくシリーズで、新刊が出る度に売り切れと重版を繰り返している。
     その人気ぶりは彼女の仲間たちの間でも例外ではなかった。もっとも旅の身では嵩張る本をそう多くは持てないから、新刊が出版されると何人かで共同してお金を出し合い、誰か一人が代表して買ってきて、それを皆で回し読むようにしている。今読んでいる第六巻は数週間前の発売日にイータが張り切って買ってきたもので、やっとエステアの順番が回ってきたのだ。物語自体に惹き込まれるのはもちろんだが、もう読んだ仲間と感想を話し合ったり、あるいはこれから読む誰かの反応を見守ったりするのが楽しみだった。
    2943

    related works

    recommended works