酔っ払った浮奇はいつも以上に甘えたで、「ふーふーちゃん」と、俺を呼ぶ声だけで致死量の砂糖が含まれている。メンバーの前だけならまだしも、配信中にその声で呼ばれるとゲームを放り投げて押し倒してしまいたくなるから少しだけやめてほしい。絶対、じゃないのは、酔った浮奇の言葉はいつも隠している本音が出てきていものだと思うから。だってその時に俺を求めるってことは、本心から俺を求めているってことだろう。
「ふーふーちゃん、キスして」
「……浮奇、今何杯目だ?」
「キスして」
「質問に答えられたらな」
「んん〜……。……たぶん、ううんと、……三杯目? でもこれは小さいグラスだから、そんなに酔ってないよ」
「酔ってないヤツの言動じゃない」
「? 酔ってたって酔ってなくたって、俺はいつでもふーふーちゃんにキスしてほしい」
当たり前のように発せられる言葉でどれだけ俺が満たされているか、おまえは知らないのかな。カメラに映らないテーブルの下で爪を握り込んで手のひらに立てた。
今日は配信はしていない。でも直接じゃなくてビデオ通話での飲み会だ。他の予定があったユーゴは残念ながら不参加、アルバーンとサニーはさっき二人でゲームをすると言って抜けたから今は浮奇と二人きりだった。だから、ハメを外したって良いのだろうけれど。
「質問に答えたよ。キスは?」
「……できないだろ」
「できるよ。ん」
「……」
「お願いふーふーちゃん。一回だけ」
「……チュ」
「ふ、ひひ、ありがとう。お返しのキス。んーまっ」
そんなんじゃ満足できないよ、浮奇。画面越しに見つめたって浮奇はとろんとした瞳を細め嬉しそうに笑うだけだ。キスをしたい。抱きしめたいし、抱きしめてほしい。画面の向こうはあまりにも遠すぎる。
「……次のオフコラボの予定を立てよう」
「オフコラボ! イエス! いつでもいいよ、明日だって大丈夫。ふーふーちゃんに会いたい」
「ああ、俺も会いたい」
「えへへ、オフコラボ……。ふーふーちゃん、やりたいゲームは? 二人ならなんだって、……あ、もしかして五人の予定?」
「……いいや、今回は二人で」
「やった」
「そっちで二泊くらいしようかな。良いホテルを取ったら浮奇も遊びに来る?」
「行く。絶対。俺も泊まっていい?」
「もちろん」
「……ドキドキして死にそう」
表情や雰囲気の全部をとろけさせて、浮奇は恍惚と呟いた。それは良かった、俺はいつもおまえのせいで死にそうだよ。絶対におまえに気づかせたりしないけれど。