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    ラーヒュン ワンライ 「鍵」 2023.09.16.

    #ラーヒュン
    rahun

     ラーハルトは人間から受け取った物には決して口を付けない。それはヒュンケルが相手でも同様であった。
     だからヒュンケルは、彼の興味が引ける方法を考えた。
     焚火を囲んで遠くに座る彼へ、腕を伸ばして串を差し出した。
    「これがオレの一番好きな焼き加減なんだ」
    「どれ……」
     ひょいと取り上げられ、彼の歯がそれを囓った。
     カチャリと扉が開いた気がした。


     ラーハルトは他者の手が届く距離に決して身を置かない。ヒュンケルはそこに入りたかった。
     だからヒュンケルは、少しだけ嘘を吐いた。
    「この地名の読み方が分からん」
    「どれ……」
     地図を見せると、彼が隣に立った。
     カチャリ。


     彼の深くに近付いていく。どうやったらもっとラーハルトの心を開けられるだろうか。
     ヒュンケルはその手段を考える事に没頭していった。


     ラーハルトは誰にも体を触らせない。ヒュンケルは彼の温度を知ってみたかった。
     難を払って剣を収めた時、ラーハルトの頬に一滴の返り血を見つけた。
    「ついてるぞ」
    「……!」
     親指で拭ったら、手を強く掴まれた。
     これは失敗だったようだ。
     謝罪しようと口を開いたら、後頭部に手を回されて舌を突っ込まれた。何度も挿してかき回される。
     カチャリ。カチャリ。カチャリ。
     幾つも開かれて、一番奥まで辿り着かれて中身をごっそり奪われた。
    「迂闊だったなヒュンケル。こんなに近寄ったらやられるぞ」
    「……扉はオレの方だったのか」








    2023.09.16. 09:45~10:20  SKR










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