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    pie_no_m

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    pie_no_m

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    エレメントから好きですが初めて書きました。
    不自然な点がありましたら申し訳ございません。
    Romancing Cruise、なにごと……?

    #つむ夏
    tsumunatsu

    熱の余剰 微かな揺れと波の音に、ふと目を覚ます。
     目蓋を開いてすぐ目に入ったのは、ぼんやりした常夜灯だけが灯る照明器具だった。首を回しても見渡し切れない広すぎる部屋を眺め、一瞬の混乱ののちに記憶が蘇り、夏目はひとり納得するように再び目を閉じた。
     遭難、宗にいさん、豪華客船。
     南の島の慣れない暑さに、不覚にも体調を崩してしまったこと、客船に同乗させてもらい、水分を補給しつつの転寝をしていたことまでは思い出せる。いつの間にか本格的に眠り込んでしまっていたのか。現在の時刻が知りたいと、夏目はサイドテーブルに置いたはずの携帯端末を手を伸ばして探った。が、見つからない。ミネラルウォーターのボトルを掻き分けても同じことだった。どうせあの、余計なことばかりするお節介で暑苦しい眼鏡の仕業だろう。仕事の連絡がひっきりなしに入っては夏目の睡眠の妨げになるので遠ざけたとか、バッテリーの残量を気にして電源に繋いであるとか、つむぎの思考と行動に大方の予想を付けつつ、夏目はまだ重い身体を起こした。こめかみに走る鈍痛は、深く眠ったぶん昼間よりも酷くなっている気さえする。身体の火照りも落ち着いたようには思えない。夏目はほとんど無意識に自らの頬に触れた。
    『ちょっとすみません』
     左頬の熱が、記憶とともにぶり返す。
    「あのモジャ眼鏡……」
     夕暮れまでは宙と共に打ち合わせの報告に来たり、夏目の身の周りの世話を焼いたりと忙しなく動いていた気配があったが、今はどこにいるのだろう。冷房によってややひんやりした大きな手は、すこしだけ夏目の体温を奪っていった。そのことばかりを思い出すのが癪で、夏目はとりあえず部屋の明かりを点けようと、今度はベッド下のスリッパを探すためにシーツから這い出した。と同時に軽いノック音が聞こえ、薄暗い部屋に筋状の光が差し込み広がった。
    「夏目くん、具合はどうですか?」
    「噂をすれバ……ソラは一緒じゃないノ?」
    「宗くんの部屋にお呼ばれして、そのまま寝ちゃったんですよ。起こすのも可哀想なので、一旦俺だけ帰ってきちゃいました」
    「あっそウ」
     厳密には「噂」はしていないのだが。つむぎが首を傾げながら部屋に入って扉を閉めると、室内の光は再び常夜灯と窓からの月明かりのみになった。それを解決するために身体を起こしたのだと、夏目は下を向く。
    「駄目ですよ、ちゃんと寝てないと」
    「わかってるヨ、でも部屋が暗いか、ラ……ッ」
    「夏目くん!」
     視界がぐらりと回る。万全ではない寝起きの身体、揺れる部屋。当然の帰結だと愚かな自分を恥じた夏目が咄嗟にしがみ付いたのはつむぎの腕だった。床に倒れ込む前に、ぎりぎりでずり落ちるような形で受け止められている。
    「ああもう、びっくりしましたよ……ほら、大人しくしていましょうね、欲しいものなら俺が――」
    「ねえセンパイ。……返しテ」
     つむぎの腕からシャツの胸元へ。空調の効いた室内で、背中や血管の集中した箇所にじんわり汗が滲むのを感じる。
    「返して? ああ、夏目くんのスマホならソファの脇、に……」
    「違うヨ」
     こういうときに、彼の眼鏡は邪魔者でしかない。フレームに手をかける。
    「……眼鏡、借りてましたっけ……?」
     現れた素顔に対して、それも違う、とは教えてやらない。というより、夏目は質問に答える前に唇をつむぎのそれと重ねていた。自ら縋るような体勢に若干苛立ちながらも、口付けは止められない――と、思っていたのだが。
    「なつ……夏目くん、こら、だめです」
    「…………ハ?」
     船の上、月明かりの下。ムードだけなら完璧だったはずだ。眼鏡まで外させておいて、ただのモジャモジャと化した男から、触れ合いをお預けされることなどあっていいわけがない。このまま腹に一発、と指先に力を込めようとして、そして力は入らなかった。
    「よいしょ」
    「エ……?」
     存外軽い動作で、つむぎは夏目の身体をベッドの上の定位置に戻してしまった。言いたいことは山ほどあったし、出したい手も死ぬほどあったけれど、盛り上がりかけた気分に水を差されたせいかそんな気力も失われていた。代わりにはっきりとした溜息を漏らすと、つむぎは困ったように眉を下げた。
    「俺はもう少ししたら宙くんを迎えに行きますから、今はこれで我慢してくださいね」
     夏目の横たわるベッドが軋み、背中から腹に手を回された。つむぎに後ろから抱きかかえられる格好になる。
    「子供扱イ……」
    「いいえ、言ったでしょう、病人扱いだって」
     つむぎはそう言ったけれど、暑くないですかという問いかけは柔らかく、幼子に語りかけるようなトーンだった。優しく規則正しく腹部を叩く仕草も含め、夏目の神経を逆撫でするばかりで――やはり、良いことなどはひとつもない。身体は自由にならず、心は揺さぶられるだけ。
     静かな海に包み込まれたまま、夏目は段々と下りてくる目蓋への抵抗をやめ、寄せる波のように覆い被さる眠気にその身を委ねた。
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    pie_no_m

    DONEフェイスのバースデーのお話
    ※エリチャン・コメントバレを含みます。
    たとえば明日のホットショコラが、未来永劫の愛になるように「あー、だから、もう好きにしろって」
     頭痛が治まらないというような、何とも嫌そうな顔で、キースは投げやりな台詞を吐いた。ディノはそんな同僚に憤慨して、必要事項を入力中であったオンラインショップの受付画面から目を離す。
    「そんな適当なこと言うなよ、フェイスの誕生日なんだぞ」
    「それを考えた上での、オレたちの金色はねえわって意見に耳を貸さなかったのはお前だろ」
     キースの指摘に、ソファの後ろ、カウンター側に背を向けて丸椅子に座っているジュニアが「そうだ、そうだ」と加勢してきた。
     ウエストセクター研修チームの午後のミーティングは、ルーキーを一人欠いた状態で開かれている。議題はフェイスの誕生日について。サプライズの企画に、対象者を参加させるわけにはいかない。密会とも言えるそれはフェイスの留守を狙ってのことなので、三人の時間はそう長く取れない。迅速かつ円滑に進めたいところではあるが、構図は一対一対一になりつつあった。金箔でコーティングされたフェイスの等身大チョコレートに賛成派のディノ、もう好きにしろ派のキース、いやなんで金色にする必要があるんだよ派のジュニアだ。
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