ショーの現場の都合でニンジャジャンの衣装と仮面、一式を持って帰ることになった。
部屋に転がしときゃいいんだが、ちょっとしたいたずらを思いついた。
リビングにいるのはルークだけ。
それを部屋の外から確認して自室で衣装に着替える。
ニンジャジャンのマスクを被り、静かにリビングの前まで移動した。ドアを少しだけ開け、手だけ差し入れスイッチを切り替え、リビングの明かりを消す。
中で「停電?」と慌てて立ち上がった気配がする。テレビはついたままだけど。
「光あるところに闇あり、栄華の影には忍びあり」
演技がかった声を張る。
「っっ、まさか、ニンジャジャン?!」
再度スイッチを切り替え明かりを付けるとルークのいるソファーとテレビの間に位置取り、決めポーズ。
「そう。我こそは、ニンジャジャン!」
噛まずに言えた。
「……っ、わ、ニンジャジャンだあ!」
キラッキラした目でかけよってきたルーク。
「モ…、ニンジャジャン、今日はどうして?」
「頑張る青年にエールを送りに来たんだ。」
「え、嬉しいです!」
右手を差し出すとさっと手が重ねられる。握手をして、軽く頭を撫でれば頬を赤くして。
「これからも頑張ってくれ」
「はい! 頑張ります」
「では、さらばだ。」
部屋を駆け抜けて立ち去る。背中にまで熱い視線がまっすぐ刺さっているのが分かった。
それから着替えてリビングに戻る。
ルークはソファーでタブレットを弄りながら上機嫌にニンジャジャンの鼻歌を歌っていた。
「ただいまー。今日も疲れたよー。」
「あ、モクマさん。おかえりなさい。」
座ったままこっちをみるルークは上機嫌だ。
「今日の捜査はどうだった?」
『なるほど、先程の件は触れちゃいけないんですね。心得ました。』
チェズレイじゃないがそんなルークの心の声が聞こえるような得意げな笑みを浮かべて、今日の情報について話してくれた。
「そっか、がんばったね」
なんとなく頭を撫でてみると笑みを深めて。
座っているのにわざわざ立ち上がれなんて言う気はないし、喜んでくれてるのに。
なんとなぁく、モヤモヤするのは何故だろうな。
…………明日、とっとと衣装返してこよう。