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    azusa_n

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    azusa_n

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    モクルクとニンジャジャンの話。そろそろ『未満』取っていいのか微妙なライン。
    今日のメニューは練りきり。
    マイカ直前くらいなのでモクマさんテンションダウン中。エドルク親子概念捏造とかモクマ過去捏造とか含む。

    #モクルク

    手の中のタブレットの明かりが消えた。
    考え事をしていてライトが切れたのは何回目だったか、思い出せる気もしない。
    ……もうすぐマイカへ行く日になる。

    「あ、モクマさん。ただいま戻りました。」
    「ルーク、おっかえりー」

    笑顔を作ってひらりと手を振って挨拶を済ませて、すぐ視線を手の中に戻した。

    キッチンへ移動したルークの方から生活音が聞こえる。
    手にした袋の中身を冷蔵庫に移した音に、食器棚を弄る音。

    「モクマさん、お茶飲みますか?」
    「ん? 何飲むの?」
    「緑茶です」
    「お、渋いとこつくねぇ。せっかくだし呼ばれよっかな」
    「はい! 用意しますね」

    暫くなにやら作業をしていたルークが色々乗った盆を持ってきた。視線がこちらに向く。

    こちらの視線が手元に落ちたままだからだろうか。声はかけられないまま足音をひそめたルークがはす向かいの席に座った。

    しばらく動かないと思ったら、タブレットからタイマーの音がすると2つの湯飲みに急須でお茶を注いで、片方を俺の方に置き、何かもう一つ小さな皿を置いた。
    「モクマさん、どうぞ。」
    「ありがと、ルーク。 …これは?」

    声をかけられてようやく顔を上げると湯気を立てる湯飲みの他に、丸っこい青い鳥を模した練りきりがひとつ。ルークの前の皿には茶色い鳥の練りきりが鎮座している。
    タブレットは適当に放り出しておいた。

    「これ、可愛くないですか? 今日初めて見つけたお菓子屋さんで売ってて。ピーチクとパーチクに似てて、つい買っちゃいました。」
    今日初めて、と言うことはまんじゅう本舗の品ではないらしい。なら素直に頂こうか。
    「たしかにそっくりだ。俺にくれるの?」
    「はい! あ、これだけしかないので二人には秘密ですよ。」
    人差し指を口の前で構えて笑う。
    秘密の共有とは魅力的なお誘いだ。

    「俺だけ、特別?」
    「そうですよ。 ピーチクとパーチクですからね!」
    なるほど、ニンジャジャン相手だからお供をお土産にしてくれたってことか。
    「いやぁ、気を使わせて悪いねぇ。」

    二人でいただきます、と手を合わせた。

    レシピ通りに淹れただろうお茶は優しい味がする。
    「ああ、うまいな。ルークの優しさが沁みるねぇ。」
    「緑茶はこっちに来るまであまり縁がなかったので、美味しく淹れられてたら嬉しいです。」
    そう言いつつ本人が飲んだ後は少しばかり苦味に眉をひそめていたが。

    お茶をすする隣では黒文字菓子用フォークを色んな角度で構えながら菓子を眺めて、手を出さないでいるルークが目に入る。
    「………買ってきた僕が言うのもどうかと思うんですが、こういうお菓子ってどこから食べるべきなんでしょう。」
    「そうだねぇ。頭から行くのも顔だけ残すのも、どっちにしろ微妙な気がするね」
    「すごく目が合うんですよ。可愛くて困るなぁ。どうしよう…」
    何事にも真剣なのは良いところだとは思うが、その問題には買う前に気付くべきだったんじゃなかろうか。
    「いっそ一口でいっちゃえば?」
    「それはもったいない気がします」
    「はは、たしかに。迷いどころだねぇ。」
    真剣すぎてこっちまで食べにくいんだが。

    「…それじゃ、ピーチクとパーチクの遺影でも作っとくかい?」
    「遺影って……。いや間違ってませんが。でも、写真はいいですね。」

    二羽を並べてタブレットに残すと満足したのか、意を決して黒文字で鳥の首をすぱっと落とした。一度決めると思い切りがいい。
    悲鳴のアテレコをしようかと頭をよぎったがやめておいた。

    目を瞑って鳥の顔部分を味わっている。
    「滑らかで舌をさらさらと流れて、餡の甘さがすっきりしてて。………おいしい…。」
    暫くして目を開けたものの、とろんとした瞳はふわふわ夢心地と言った感じだ。

    ルークが吹っ切れたならこちらも特に躊躇うことなく切れる。
    雀の顔を口に入れると、上品な甘さで、……とても懐かしい味がした。
    「うん。おいしいよ、とっても。」
    大昔の記憶では、藤の花があしらわれていたものを半分に千切って渡されたものだったか。
    『懐かしい』と口から出そうで、お茶へと手を伸ばす。

    ルークもお茶を一口飲んで、少し首を傾げたと思ったらもう一口の菓子に手を出して、暫くして頷いた。
    「このお茶、合わせるならこれがオススメだって教えてもらったんです。…お茶だけだとかなり苦いですけど、お茶もお菓子もそれぞれ個別に食べるよりずっとおいしい気がしますね。」
    「さらに今日はルークの笑顔と食レポもセットだ。そりゃ美味くて当然だ。」

    きっと、最近落ち込んでいる俺を元気づけようとしてくれているのだろう。ルークはどこまでもまっすぐで、眩し過ぎる。

    「甘いものって、気持ちがほどける感じ、しませんか」
    「うん、なんとなくわかるよ。」
    「ついでに口も軽くなったりとかしません?」
    冗談を言うようにしているが、少し心配そうな目の揺らぎは隠せていない。
    だが、残念ながら昔話も、つまらない心持ちの話も、目の前の相手にこそ隠し通したいことだ。言うつもりはないので、曖昧な微笑みを返す。
    「んー、そういうのはお酒ちゃんの役目じゃない?」
    「たしかに。僕には結構こっちも効くんですけどね。」
    「そっか、覚えとこ。ルークの弱み握りたい時にはもってこいだ」
    「あ、簡単に言い負かされる未来しか見えない…」
    遠い目してる。もう既に話題が変わってることに気付くのはいつになるのか。
    「ふうむ、いっそ2つ合わせて、甘いお酒なら完璧かな。
     ……そういやルーク、甘いの大好きなのに酒のむときはビールとかハイボールとかだよね。」
    「あー…、昔、甘いお酒は飲むなって言われたんですよ。だから飲まないようにしていて」
    「そうなんだ。なんで?」
    「お前はきっと飲み過ぎるから危ないって。」
    「その言い方は親父さんかな。」
    「はい。そのうち飲み方教えてやるからそれまでは…って言ってたんですけど。」
    ルークが未成年の内に亡くなっちまったと。
    小さな約束をずっと守っているんだから、偉大な人だったんだろう。
    「ミカグラの酒も結構甘いと思うけど、平気?この前ちょっと飲ませちったけど。」
    米で出来た酒は蒸留酒なんかと比べれば随分甘い。
    「ミカグラの酒は砂糖が入ってないので大丈夫……ってことにしてます。」
    「果実酒は山ほど砂糖入れてつくるらしいからね。たしかにそれに比べたら全然だけど。」
    「そうなんです。そういうお酒、すっごーく興味はあるんですが。」

    何も悪いことをしていないのに故人に囚われるのを憐れんだのか、死して随分経つのに小さな約束を守らせるその男に嫉妬したのかは定かじゃないが、気付いたら口を開いていた。
    「代わりに俺が教えてあげよっか。お酒の飲み方」
    なんて、年中酒に飲まれてる俺に教わることなんかないよね、と。すぐに続けようとした。けど口を開く前に返事は返ってきてしまった。
    「ぜひお願いします!」
    「え、親父さんとの約束なんでしょ、いいの?」
    「約束を破ったのは父ですから。」
    「違いない。それじゃ、初心者のルークが翌朝起きられなくても良い日に、だな。……ちゅうと、全部解決してからかねぇ。」
    「そうなりますね。頑張る理由が増えました。……約束ですよ、モクマさん。」
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    azusa_n

    CAN’T MAKE足ツボマッサージするだけの健全なモクルク…と言い張りたかったけど下ネタな話。この話の範囲は全年齢だよ。足しか触ってないよ。
    喋らないけど濃い目のモブいるので注意。

    surfaceのヌイテル?をイメソンに。もうちょい曲にある要素足したいのに思いつかないので投げちゃいました。思いついたら加筆してpixivにも持って行くかなぁ…。
    「もー、ルークったら、昨日もここで寝てたでしょ」
    ダイニングの机に突っ伏して寝ているルークを見つけた。もう深夜と言って差し支えのない時間だ。

    開かれたまま置かれた業務報告書には八割方埋まっている。今日の調査内容がびっしりと。空振りであった旨を伝える文字がしょんぼりしているようだ。
    蓋の上にフォークを置いたまま冷めたカップめんとが見える。完成を待つ間に寝落ちしたのか、完成に気付かず作業していたのか。

    時折聞こえる寝言から見るとあまり良い夢は見てないようだ。悪夢から起きて食べるのが伸びて冷たいカップめんじゃ忍びない。せめて温かいものを食わしてやりたいもんだ。

    テイクアウトの焼き鳥をレンジにつっこむ。
    冷蔵庫に残ってた冷や飯と卵、カップめんを深めのフライパンにぶち込んで、ヘラで麺を切りつつ炒めて塩胡椒を投入。
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