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    azusa_n

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    モクルク。お題メーカーのやつ。「離してあげられなくてごめんね」

    モの自覚がどえらい早かったパターンとして。

    #モクルク

    ルークは眩しい光のようだ。
    そう、まるで晴天。晴れの空の光。
    誰をも等しく明るく照らして、誰からだって愛される。
    その上、誰にも触れられない。
    例え空を飛ぶ鳥だって捕まえられない、澄んだ青。

    ましてやこんな汚れた俺では。

    ……いや、あるいはこんな俺でも。
    真っ黒な夜空なら、触れられるだろうか、なんて。

    ■■■


    「なんとか……、間違えずに、最後まで連続で通せました……。」
    「うん。よく頑張ったね、ルーク。ここまで出来れば本番も大丈夫だ」
    「モクマさんが付き合ってくれたおかげですよ。本っ当に感謝してます」

    正確に言うなら、一番効いたのはチェズレイのアドバイスが良かったんだろう。これまで教えた期間の進歩より、一昨日から今日になるまでの方が格段に上達している。

    タオルで汗を拭って、ふと時計を見ればもう日付が変わっている。
    「…あちゃ、もうこんな時間か。 ……でも腹減ったよね。」
    「そうですね、もうペコペコです。」
    「2人でイケナイコト、しちゃう?」
    「イケナイコト……ですか?」

    リビングへと移動し、冷蔵庫を開ける。
    一枚だけ残っていたチルドのプレーンピザ生地と開けたばかりのシュレッドチーズを取り出した。
    「うん。このチーズをさ。乗せられるだけ乗せたらすごそうじゃない?」
    「……寝る前にそれは、たしかにものすごくイケナイコト、ですね」
    「そんでもって、たしか秘蔵のサラミがこの冷凍庫の奥に…。…あったあった。」
    ナデシコから横流しされた贈答品のサラミ。
    アーロンに粗方食べ尽くされたが、冷凍庫の奥までは覗かれなかったらしい。この間ルークも喜んでいた品だ。
    「そんな、極悪すぎる組み合わせじゃないですか。こんな時間にそんなもの食べたら大変ですよ」
    止めるような口振りだが、口角が思いっきり上がっている。嘘の付けない奴だ。
    「こっちは素直みたいだけど?」
    さっきからぐうぐう虫が鳴いてる腹に軽く手を触れて。
    「……うう、結構恥ずかしいのでそこは指摘しないでください。」

    「じゃ、こっちに聞こうか」
    ルークの肩に手を置いて、耳元で囁く。
    「オマワリサン、俺と共犯になってくれる?」
    「今の僕は警察とは関係ない、ただのヒーロー志願者ですので。是非お供させてください!」

    オーブンの余熱を開始し、天板に生地を乗せる。

    「にしても、チーズたっぷりのピザ…。それなら、もしかして、これも有りなのでは?」
    調味料の棚から蜂蜜のボトルと黒胡椒を取り出すルーク。クワトロフォルマッジとまでは行かないが、つまみ用の別種のチーズも多少あったような気がする。
    「サラミのピザは半分にして、もう半分はハチミツかけてっちゅうこと? ルークもなかなかイケナイ子だね。…もちろんオッケーだよ」

    ピザソースを手前半分に塗り、シュレッドチーズを盛れるだけ盛る。別種のチーズを奥半分に千切って散らし、手前にサラミを並べる。
    赤と黄色でとても華やかな色の小さな山を余熱済みのオーブンへ。

    二人でオーブンの中を覗いて待つこと暫し、電子音と共にオーブンを開くと熱々のピザの良い香りが広がる。チーズがとろけて天板の上の一部にはチーズせんべいまでできている。
    8等分に切り分けた後、チーズのみの半分に蜂蜜をたっぷりかけ、黒胡椒を全体にミルで挽く。
    いただきます、と手を合わせた。

    コークハイボールで口を湿らせ、まずはピザソースとサラミの乗った方へと手を伸ばす。

    「んん、うまい!あまりにもうまーい!
     運動後の空腹に焼きたてのピザ。チーズがどこまでも伸びて、多めに乗ったサラミの濃い味に渡り合う強さは深夜というスパイスも相まって格別ですね。」
    伸びたチーズがどこまでも切れる気配がない。
    正直食べにくいが、うまいものはうまい。背徳感は格別のスパイスだ。

    「こっちもチーズにハチミツなんて、もう最っ高の組み合わせですから。甘さだけじゃない、チーズの塩気が相まって無限に食べられます。少しずつ味が違うチーズだからぜんぜん飽きないで……、…あ。」
    元々そう大きくもないピザだ。
    右半分ルークの分が空になった皿を見つめる視線があまりに悲しそうで、サラミとハチミツ、一切れずつ残っていた皿をルークの方に寄せる。
    「ルーク、これも食べる?」
    「っ! いいんですか?」
    「おじさんこれ以上食べると胃もたれしそうでさ。冷めない内に食べなきゃうまくないし」
    「ありがとうございます。 いただきます!」
    幸せそうに食べるルークを見るだけで胸がいっぱいだ。

    食後、チーズで汚れた手と口をウェットティッシュで拭って、片付けを済まして証拠隠滅完了と言う体裁を整えソファーで小休止。

    「ルーク、またイケナイコト付き合ってよ。」
    「はい、モクマさん。僕で良ければ、いつでも。」
    疑うことを知らない笑顔ですぐに答えてくれる。

    清らかな彼をイケナイコトに誘う。
    言霊なんて本気で信じてる訳でもないのに、少しずつ宵闇に染める手段のひとつになるなら、と。

    「じゃあおやすみ、ルーク」
    ルークが立ち上がる前に額にキスをする。当然のことと受け入れられるように、平然と。
    ルークは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔に戻る。毎夜額にキスをされるような時期があったのだろう。
    「おやすみなさい、モクマさん」




    それから、機会を作ってはルークと秘密をつくる。
    夕食用の唐揚げをつまみ食い。
    調査のついでに肉まんを買い食い。
    深夜にインスタントラーメンを共に。
    どれもこれも些細なこと。

    ただそれは、光がひときわ眩しい日に。
    調査の合間にゲームセンターで赤いトゲトゲのぬいぐるみを取ってきた日。
    部屋から別の男が出てきた翌日。
    歌姫とバックダンサーの合同練習の日。

    『イケナイコト』を共にしてその光を少しだけ曇らせるように。

    それから寝る前に額にキスを。
    昼間の空がほんの少しずつ、青から橙に日が落ちて、宵闇に変わるみたいに。少しずつ、触れるのを当たり前に変えていく。

    二人で夜食を食べるのが当たり前になって、その分夕飯と朝飯の量は少し減った。


    「…なあ、ルーク。……今日もイケナイコト、する?」
    「はい、ご一緒させてください。 …って、あれ、上着まで着込んで、今から外行くんですか?」
    「うん、夜だけやってるラーメン屋がうまいらしいんだ。」
    「急いで支度してきます。」
    もはや何をするかなんて聞かなくても同意してくれる。随分慣れてくれたものだと思う。

    ルークが着替えをして戻って、15分ほどの距離の屋台に大興奮だった。
    どの具を食べてもうまいうまいと言うものだから、いい気分の店主にサービスで味玉を付けてもらって更に饒舌になる。
    闇夜だろうが、ボロボロの屋台だろうがルークはやはり眩しい。


    その帰り、ルークの部屋の前。
    「おやすみなさい」
    「ルーク」

    ドアに手をかけたままこっちを向いたルークにそのまま近づいて、無防備な首へキスをした。立っているルークの額には届かないのだからと心の中で言い訳をして。
    「…じゃあ、おやすみ。」
    「……お、おやすみなさい」



    翌日、丸一日タイミングが合わなかったルークと夜顔を合わせた時、丁度欠伸をしていた。
    最近夜連れ出してばかりで寝不足にさせているかもしれない。

    「モクマさん、僕とイケナイコトしませんか。」
    「ルークからお誘いなんて珍しいじゃない。」
    「このチョコ、ミルクで溶かして飲むやつなんです。それで、これを一緒に。」
    小さな酒瓶を渡された。
    「……ラム酒、か。ルークも随分慣れてきたね」
    「こういうのは共犯者がいないと、ですよね。」
    「違いない」

    鍋でミルクとチョコレートを温める間の話題は無難に今日の出来事。
    「今日は何してたんだっけ。」
    「昼頃に次のショーの打ち合わせだって、スイさんのところにナデシコさんと一緒に。」
    「両手に花じゃない。いいなぁ、羨ましい」
    「……仕事の話ですからね。……仕事の。」
    「なんでそこ強調するのさ。怪しいなぁ」
    「多少雑談ははさみましたけど、ほんとただの世間話ですよ。」
    どこか照れくさそうなのは、やはりルークの本命は歌姫だと言うことだろうか。

    「それから打ち合わせが終わってからは、アーロンと調査と買い出しに。」

    出てくる名前一つ一つに苛立つ自分にはとっくの昔に気付いていた。

    出来上がったホットチョコレートは少し酒精が強くて、甘さと熱が喉の奥にいつまでも残った。

    「おやすみなさい、モクマさん」
    ルークから、額にキス。誘った側がするのはいつの間にやらルールになっていたようで。
    「おやすみ、ルーク。」
    お返しのキスは唇の端、頬に向けたと言い訳が出来るギリギリの位置へ。
    流石に拒まれるかと思ったが、拒否も、咎められることもなかった。


    ホットミルクに酒。おやすみのキス。
    全ては睡眠を助ける行為のはずなのに、部屋に戻っても眠れそうにない。
    話に聞くだけでこんなにも苛立つのに、もし彼が別の人の手を取れば、なんて考えたせいで。

    あの光に見合う相手は他にいくらでもいるのに、どうにも認められなくて。

    深い溜め息を落としてベッドから降りてタブレットのロックを解除した。



    翌日。

    「今日は特別イケナイコト、しちゃおっか」
    「はい! お供させてください。」
    もはや何をと言わず一緒に出掛けてくれるようになったルークを連れて来たのはとある南国リゾート風ホテルの一室で。

    「……ここって…。」
    「うん、でっかいトーストがおいしいんだってさ。ハチミツと、アイスと……なんか色々乗ってるやつ。ルークが好きそうだなってずっと思ってて」
    「ああ…、そういう……?」
    食パン一斤丸ごと使ったいかにも甘そうなトーストが並ぶ大判メニューを手渡す。

    座る場所を見繕うのに辺りを見渡すルークを後目にダブルベッドに腰掛けた。
    所在なさげにしていたルークは、ひとまず俺の前に立つことにしたらしい。
    「しかもここならベッドで酒飲みながら食えちゃう」
    「それはたしかにとってもイケナイコト、ですね」
    「今なら湯船で飲むお酒やアイスもつけちゃう」
    「特別魅力的……ではありますが」

    誰も来ない密室だと言うのに、まだ視線をあちこちに動かしつつそわそわしている。
    それまでの茶化すような言葉を止めて、諭すような静かな声に変える。
    「……なぁ、ルーク。いつもみたいに、このまま流されてくれない?」
    「モクマさん…」
    「本来なら、今なら逃がしてあげるっちゅうところなんだろうけどさ。」

    ルークの手を引いてベッドに押し倒した。
    「ごめんね。離してあげられそうにないんだ」


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